TOUR REPORT

第14回六本木デザイン&アートツアー 五十嵐久枝氏と巡る六本木インテリアショップツアー

第14回六本木デザイン&アートツアー 五十嵐久枝氏と巡る六本木インテリアショップツアー

AXISビルを出ると、六本木の街を散策しながら、次の目的地「飛騨の家具館」へ。途中に見つけたお店にまつわるエピソードを聞きながら、ツアーは続きます。

お店で交流していたかつてのデザイナーと、スマホで仕事する今のデザイナー。

「こちらは、六本木では昔から有名な『ニコラス』というお店。私が以前勤めていたクラマタデザイン事務所も東京ミッドタウンの近くにあり、バブルだった当時は、デザイナーたちが夜な夜な街に繰り出して飲み明かすということもたびたびありました(笑)。イタリアンレストラン『キャンティ』なんかも、デザイナーや文化人のサロンとしても有名。こうしたお店で交流を深めた人たちが組んで何かを企画するということも多かったでしょうね」

「当時と比べると、今はみなさん忙しいと思います。待ち時間にもスマホでメールを確認するような。今、私は武蔵野美術大学でインテリアデザインを教えているのですが、忙しいのは学生も同じようで、インテリアでどんな場所がほしいかと学生にたずねると、『休憩所がほしい』なんて言われてしまって(笑)。満たされているということでもあると思いますが、『ないから生み出す』という発想の以前と今では、デザインの必然性が明らかに違いますね」

優れた木の加工技術を誇る家具メーカー
「飛騨の家具館」

神谷町駅のほど近く、ヒューリック神谷町ビル1Fに入っている「飛騨の家具館 東京」。岐阜県に本社を構える家具メーカー「飛騨産業」が運営するショールームです。

「飛騨産業はまもなく100周年を迎える家具メーカー。とくに、ナラ材を曲げる技術に優れています。日本の木の加工技術は、世界でもトップレベルです。ここ20年でずいぶん減ってしまいましたが、飛騨産業のように加工技術の高いメーカーはまだまだあります。安価な家具も増えている中、丁寧な手仕事でつくられた家具を見ることは、本質をつかむことにもつながるのではないでしょうか」

「こちらは、スギ材を使った家具のシリーズです。『うづくり』という、木の柔らかいところを削って木目を浮かび上がらせる加工がほどこされています。スギは針葉樹で、柔らかく傷がつきやすいのですが、そのぶん軽いのが特徴。持ってみると木の比重が軽いことがわかると思います。デザインは奥山清行さん、ポルシェから椅子までをデザインしている方です」

「こちらは広葉樹のナラ材を使った椅子です。針葉樹と比べて重いのですが、相当シェイプされているので、あまり重さは感じませんね。この椅子がすごいのは、スタッキングできるということ。普通、スタッキングできる椅子はステンレスやアルミなどの金属製が一般的です。デザインを担当した川上元美さんは、日本でトップレベルのデザイナー、これはグッドデザイン賞100選にも入っています」

「最近人気があるウィンザー調のデザイン。平たい板にスポーク(棒)が刺さっているだけという、昔からある構造の椅子です。飛騨産業は大正時代から椅子をつくっていたのですが、そもそも機械がなかったので、それも自分たちでつくっていたそう。もともと、椅子をつくってヨーロッパへ輸出するところからスタートしたので、この椅子は部品を送って現地で組み立てることにも適していたという背景もあるようですね」

「『クレセント』という佐々木敏光さんの作品で、飛騨産業では一番出荷が多い椅子です。背中を支える部分が太くなっていてとても安定感がありますし、お尻の形に合わせてカービングしているので、長く座れるよう工夫されています。ぜひ座ってみてください。今日は座り比べをするにはとてもいいチャンスですよ(笑)」

「ここにあるのは『森のことば』という、飛騨産業を代表するシリーズ。あえて木の節を見せるという、以前の家具では考えられない特徴を持っています。このシリーズの名付け親でもある飛騨産業の岡田社長は、『森は放っておけば育つわけじゃなくて、人間の手で間伐して光を入れないと荒れてしまう。人とともに自然があるべきだ』と言っていました。この家具にはそういった思いも込められています」