TOUR REPORT

第11回 六本木デザイン&アートツアー 永井一史氏による「日本のグラフィックデザイン2014」特別ツアー

第11回 六本木デザイン&アートツアー 永井一史氏による「日本のグラフィックデザイン2014」特別ツアー

「『デザインあ』展、みなさんは観に行きましたか?」など、ツアー参加者に語りかけながら、作品を詳細に解説していく永井さん。真剣かつ楽しそうな様子にひかれ、近くを通る一般のお客さんも立ち止まって耳を傾けていました。

キギのアートディレクターが手がけたツアーグッズ。
植原亮輔「Every Little Thing ON'N'ON」

「これは『ジェネラルグラフィック』というカテゴリー。お皿やグラスなど、グラフィックデザインの表現する領域が紙のメディアを超えて、日用品や生活用品にまで広がっているのが、ここ10年くらいの顕著な傾向なのですが、そうした分野を牽引しているデザイナーのひとりが植原亮輔さんです」

「Every Little Thingの持田香織さんから、『手書きのテイストでやってほしい』という依頼があったそうで、定規や瓶のふたといったアナログな道具でデザインしている。植原さんにとっても挑戦だったようですが、たんに意味を伝えるということを超えたチャーミングさがありますね」

亀倉雄策賞受賞デザイナーの、もうひとつの受賞作。
葛西薫「建築を考える〔特装版〕」

「ブックデザイン」カテゴリーは、亀倉雄策賞にも輝いた葛西薫さんが同時に受賞。これは、スイスの著名な建築家ペーター・ツムトアの文章と作品が収められている本。

「葛西薫さんはポスターもすばらしいんですが、ブックデザインでも、素晴らしい装丁をたくさんつくっています。表紙に貼った布は、テキスタイルデザイナーの須藤玲子さんにわざわざつくってもらったという、こだわりの一品です」

古くて新しい、今求められているデザイン。
石川竜太「越後亀紺屋 藤岡梁工場」

「まいどやのロゴでも紹介した石川さんの、もうひとつの受賞作品で、これは『パッケージ』のカテゴリーです。先ほども日本的なデザインをするとお話ししましたが、これも、もっと年配の人がつくったんじゃないか思ってしまうほど大人っぽい。ご本人は38歳なんですけどね。デザインがたくさん並んだ中で、際立って見える。伝統的でありながら先端の時代感がある表現ではないでしょうか」

デジタルの特性を生かしたインタラクティブ性。
菊地敦己「Creation Is Free. Production Needs Fee.」

「インタラクティブデザイン」で受賞したのは、永井さんが「コンスタントにとてもいい仕事をしているデザイナー」と紹介してくれた、菊地敦己さんによるウェブサイト。

「色を変えても、拡大縮小しても、情報のクオリティがまったく変わらない、デジタルならではの面白さがありますね。モチーフもセンスにあふれていますが、印刷のように固定化されていない、デジタルによるインタラクティブな可能性そのものを表現化したということが、作品の肝になっていると思います」

満場一致で選ばれた、質の高い映像作品。
吉野耕平「ake-vono」

 JAGDA賞、最後の10作品目は「映像」カテゴリー。映像やウェブサイトといった分野の作品をどう扱うかは、これまでJAGDAにとって大きな課題だったそう。

「ここ数年、そうした作品を積極的に評価していこうという流れがあります。こちらは、映像の動きが持つ"滑らかな快感"とポエティックな表現が相まって、この分野でダントツの一番、満票を集めました。すごく質の高い作品なので、ぜひYouTubeで見直してみてください」

かつて永井さんも受賞した、グラフィックデザイナーの登竜門。
「JAGDA新人賞」

 続いて紹介してくれた「JAGDA新人賞」には、毎年3人のクリエイターが選出されています。JAGDAにとっても新しい人材を発掘する重要な賞で、永井さん自身、1999年に受賞しています。

「これは原野賢太郎さんの作品。デジタル処理でインクが垂れているような表現が面白いですね。新人賞は、このポスター1点だけではなく、数点の作品をまとめてトータルで評価するんです」


「左側の作品は、大原大次郎さんによるライブ告知ポスターですね。タイポグラフィの領域を中心にしながら、カメラマンとコラボレーションの展覧会をしたり、映像作品をつくったり、デザインの可能性を拡げる活動をしています。もうひとり、右側の作品は鎌田順也さん。これまでも注目されていた北海道のデザイナーです。この方も地方在住のデザイナーですね。今年晴れて新人賞を取ることができました。新人賞は39歳までが対象なんです」

INTERVIEW