PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#15 「六本木、旅する美術教室」第4回 アーティスト鈴木康広の民藝の見方【前編】

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"目で触る"ことで、作品の個性を味わい尽くす。

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琉球王朝時代・18世紀中葉〜19世紀、壺屋(沖縄)の鉄釉御殿型厨子甕(ジーシガーミ)。

 装飾がついた沖縄の骨壷をまじまじと眺めていた鈴木さん。「触ってみたくなりますね」という声に、頷くお客さんもいました。

鈴木 民藝品って日用品なのに展示されていると触れないじゃないですか。特に、日本民藝館に展示されている民藝品はショーケースに入っているし、触りたくても触れないんですよね。

前村 やはり触りたくなりますよね。逆説的になってしまいますが、触れないことで想像性を育むこともできるかと思います。民藝品は、無名の職人さんがつくる日用品です。それを作品として扱っていること自体に矛盾を孕んではいるのですが、客観的に見ることで作品と自分の距離感を感じることができる。職人さんが手づくりしているので、まったく同じものは存在しません。ひとつひとつが微妙に違っていることで、職人さんの個性という手癖を楽しめるのも、民藝品の良さだと思います。

鈴木 僕は民藝鑑賞をするとき、手で触れることを諦めて、目で作品を触っています。10代・20代の頃は、触れられるものにはとにかく手で触っていましたが、年齢を重ねるうちに、敢えて触らずに離れた場所から"目で触る"ことの奥深さを覚えたんです。

前村 その発想はおもしろいですね。自分で新たな触覚をつくるんですね。

鈴木 "目で触る"ことは視覚を超えて妄想に近いので、自分の気分次第でなんでもできるんですよ。特に民藝は、本当に自由な鑑賞ができますよ。「この壺の中に入ってみたらどんな感じかな?」とか、「口に入れてみたらどうかな?」など、人に言うのも恥ずかしいことをたくさんしています(笑)。

前村 鈴木さんの「目で触る」のように、自分オリジナルの見方を発掘するのも大事ですね。自分なりの「変な見方」を楽しんでみてください。

【民藝の見方#4】
自分だけのオリジナルな見方を発掘する

「初めて見る」想いで見れば、真の姿が見えてくる。

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日本民藝館で描いた鈴木さんのスケッチ。

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18世紀後半にイギリスでつくられたスリップウェア両手付酒杯。

 授業終盤には、自由鑑賞の時間が設けられ、おのおの気になる作品の元へ。参加者の方々からは、「日本民藝館から飛び出した作品が新しい空気を吸ったように見えて、とても瑞々しかった」「コンクリート打ちっ放しの展示室で見る木の艶は圧巻でした」といった声もあがりました。

「気が向くと、展覧会にスケッチブックを持っていく」という鈴木さんは、気になる作品の前で自身のスケッチブックを開き、鉛筆を走らせました。

鈴木 アート作品を鑑賞する時、基本的に写実的なスケッチはしないんです。作品から得たインスピレーションをもとに、思いついたことを描くんですよね。しかし民藝品には、写実したくなる魅力がある。むしろ、造形そのものをなぞってスケッチすることで新たなインスピレーションが湧いてくる気がします。おそらく、民藝の形には人間の五感や思考を超えたものが、高次元に統合されているからだと思います。

 実は、以前鈴木さんが日本民藝館へ足を運んだときにスケッチをしていた酒杯が、今回の民藝展でもセレクトされ、展示されていたのです。鈴木さんは少しびっくりした様子で再会を喜んでいました。

 授業の最後、前村さんからあらためて「民藝の楽しみ方」のアドバイスがありました。

前村 柳宗悦さんの言葉に「今見ヨ、イツ見ルモ」とあります。この言葉には、「いつも見ているものであっても、今初めて見る想いで見るならば、真なるモノの姿を見ることができる」という意味が込められているんです。時代性のあるものにも、いつも「今」というフィルターを通すことで、常に新鮮な視点をもたらすという発見があります。

【美術展の見方#5】
スケッチブックを持っていく

後編はこちら

information
「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」
会期:2018年11月2日(金)~2019年2月24日(日)
開館時間:10:00~19:00(入場は18:30まで)
休館日:火曜日(12月25日は開館)
年末年始(12月26日〜1月3日)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
展覧会サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.2121designsight.jp
観覧料:一般1,100円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料

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