PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07「六本木未来大学」第19回WOW於保浩介さん講義レポート【前編】

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納得のいく仕事をすれば、理不尽な結果も受け入れられる。

次に紹介されたのは、2017年に自動車メーカーの「マツダ」が発表したコンセプトカー「マツダ VISION COUPE」の発表会。コンセプトカーとは、自動車メーカーが自社のブランディングのために制作するもので、基本的に一般発売はされず、モーターショーなどで展示するために使用されます。WOWはマツダから、「モーターショーの数日前に『マツダ VISION COUPE』の発表会を行いたい」と依頼を受けたのだそう。

「マツダからの要望は『モーターショーの前に、限定公開の発表会を行いたい』というものでした。開発に時間もお金もかかるコンセプトカー、その中でもこのクルマは7〜8年に1度程度しかつくれない特別な存在。そのため、『モーターショーのようなオフィシャルな場所で発表する前に、特別な場所で発表したい』とのことだったんです」

「特別な場所」として選ばれたのは、東京国立博物館 法隆寺宝物館。ミュージアム建築の巨匠、谷口吉生氏が設計した緊張感のある空間です。国営の施設特有の技術的な制限が多かったなか、マツダにとって一世一代の発表会を成功に導くために、於保さんはかなり"気合いを入れて"企画を立てました。

「水盤の上に車を置き、LEDを使った派手な映像で演出するという提案をしたのですが、『こういうことじゃない』とダメ出しを食らってしまって......。『もっとシンプルな、研ぎ澄まされた表現がいい』とはっきり言われてしまいました」

そこで於保さんは、会場の環境を活かした、"究極的にシンプルな演出"を考えました。

「発表会の開始が夕方だったので、夜にかけてだんだん暗くなっていく空の色に合わせ、照明も変化していくという、演出に切り替えました。日々の生活のなかで、『時間の移り変わりをゆっくり楽しむ』ことはあまりないですよね。来場されたお客さんに、時間の流れを楽しむという究極の贅沢を味わってもらおうと思ったんです」

「究極の引き算の美」をテーマにした新たなプランには、マツダ側も納得し、無事実施が決まりました。シミュレーションも入念に行い、本番を楽しみにしていたところ、まさかの事態が起こります。季節外れの台風直撃によって発表会が中止になってしまったのです。

「あそこまで大きな発表会が中止になったのは僕の経験では初めてのことでした。企画も難航しましたし、入念に準備していたからこそ、中止を惜しむ声は方々からあがりましたが、誰もネガティブな感情を持っていませんでした。そのときに僕が感じたのは、『リスクをとってでも、納得のいく仕事をする』ことが大事だということ。制約の多い会場を選んだことも、シンプルな演出を行うことも"一か八か"の勝負でした。しかしみんなが『この選択に間違いはない』と信じていた。クライアントもデザイナーも、ひとりひとりが納得のいく仕事をしたと自負していたので、理不尽な結果も受け入れることができたのだと思いますね」

【クリエイティブディレクションのルール#2】
リスクをとってでも、納得のいく仕事をする

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クライアントを"その気"にさせたのなら、最後までやり遂げることが大切。

続いて紹介されたのは、"ロジティクスの巨人"と呼ばれる、物流メーカー「ダイフク」をクライアントにした案件。「『国際物流展』という展示会のなかで、圧倒的存在感を出したい」という要望を受け、WOWがブースの企画制作を行いました。ダイフクが国際物流展で売りにしたいと考えていたのは、空港で手荷物を預ける際に顔認証などを使って簡単に無人で手続きできる「セルフ・バッグドロップシステム」。於保さんはこのオファーに対して「展示会場に、空港をつくりましょう」と、大胆な提案をしたそうです。

「こちらの案件はコンペ方式だったので、『アイデアを買ってくれなければそれまで』という気持ちで、思い切った企画を立ててみました。雑多な展示会の中で、空港然とした建物が出現するだけでもかなり存在感が出せると思ったんですよね。ダイフクのセルフ・バッグドロップシステムがどれだけ荷物を安全に運んでいるかを伝えるために、来場者に実際に"荷物になってもらう"アトラクションを考えたんです」

意表を突いた大胆なアイデアは無事コンペを通過。「来場者に荷物になってもらう」ためにWOWが用意したのは、大迫力の画面と動きを体感できる4Dシアター。来場者は実際にセルフ・バッグドロップシステムで手荷物を預けたあとに、4Dシアターで"荷物"の気持ちを体験することができる企画でした。

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「物流展に来ている人で、エンターテイメントを求めていた人はほぼゼロに近かったと思います。しかし、体験してくださった方はみなさん楽しんでいて、集客数も過去最多で、ダイフクさんにはハッピーになってもらえたんじゃないかなと思います。『遊び心をふんだんに取り入れた企画を採用してもらえたのだから、最後までちゃんとやりきらなければ』と思っていたので、嬉しかったです。

実は、このアトラクションをつくるにあたっては、何度も方向性がぶれそうになったんです。エンタメ性の高いコンテンツをつくる場合、目的が定まっていないとただの『娯楽』になってしまいます。常に『なんのためにやっているのか』を明確にして、チーム全体を導くことが大事です。このプロジェクトでは、『クライアントを"その気"にさせたのなら、最後までやり切る』ことが重要だと痛感しました」

【クリエイティブディレクションのルール#3】
クライアントを"その気"にさせたら、最後まで責任をとる

後編はこちら

【information】

「於保浩介さんの講義を復習してみよう」
六本木未来大学アフタークラス

【講師】横石崇(「TOKYO WORK DESIGN WEEK」発起人/オーガナイザー。&Co.Ltd代表取締役)
【開催日】2018年12月10日(月)
【時間】19:00〜21:00(予定)
【参加費】2,000円 
【受付】お申し込みはこちらから ※外部サイトへリンクします
【場所】東京ミッドタウン・デザインハブ(ミッドタウン・タワー5F/東京都港区赤坂9-7-1)


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