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六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07「六本木未来大学」第17回「佐藤卓さん、 共創するクリエイティブディレクションって何ですか?」講義レポート【前編】

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update_2018.7.11 / photo_masashi takahashi / text_momoko kawano

数々のヒット商品を生み出してきた、デザイナーの佐藤卓さん。2018年6月21日(木)の講義では、佐藤さんが手掛けてきた商品をひとつずつ取り上げながら進んでいきます。『ロッテ キシリトールガム』『明治 おいしい牛乳』などのパッケージデザイン、NHK Eテレ『デザインあ』総合指導など、数々のグラフィックデザイン、クリエイティブディレクション、アートディレクションの背景には、誰かと共に誰かのために創るデザインのヒントが散りばめられていました。

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デザイナーの仕事は、やりたいことをやることではない。

「共創するクリエイティブディレクションを一言で言うと......"気遣い"かな」と口火を切った佐藤さん。講義は、結論を述べることから始まりました。

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まず画面に映されたのは、ニッカウヰスキー『ピュアモルト』。佐藤さんが最初にクリエイティブディレクションを手がけた商品です。「プロダクトのことを知らないで提案するのは無責任」と、ブレンダーに取材をし、お店をまわり、ウイスキーの研究を重ねて、デザインを提案しました。

「当時は、核家族が増えてきた時代でした。この時代にボトルはどうあるべきか。店頭で目立つほうが良かったこれまでの定説とは真逆で、生活に馴染む主張がないボトルがいいのではないか。また、飲み終わった後もインテリアか何かに使ってもらえたらいいのではないか......。そう考え、キャップはコルク、ラベルは水溶性にし、空になった後はただのボトルになるようなデザインを提案しました」

売るためではなく、生活の中で使うためのデザインを意識したボトルを手に、何度もニッカウヰスキーに足を運んでプレゼンをした佐藤さん。けれども、「広告業界に骨を埋めるつもりがなかった」そうで、3年で当時勤めていた電通を退職します。その辞める間際、ウイスキーの商品化が決まりました。佐藤さんはフリーランスとなり、外部デザイナーとして電通に打ち合わせに行くことに。そして商品化されたウイスキーは大ヒットし、あっという間に追加販売が決まりました。

「ニッカ・ピュアモルトの宣伝ツールは紙媒体のみで、関心のある人が隣の人に伝えてくれます。今のSNSと同じ。人はおもしろいものがあれば広めたくなります。人から人に伝わるところにはお金がかからないことを想定して、予算配分しました」

その後、あるブティックに空瓶がディスプレイとして並んでいるのを見て、「飲んだ後にインテリアになればと思っていたことが現実になっている。これもひとつのデザインだ!」と手応えを感じたそうです。

「その時代にニッカはどうするべきか、を考えたことが結果になりました。デザインの仕事は、やりたいことをやることではなく、なにをやるべきかを実行すること。自分の作品をつくりたければ、自分でお金を出してやればいいんです」

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クライアントに「共創」の意識を持ってもらう。

ニッカウヰスキーの案件以来、佐藤さんのもとには、多くのデザインの依頼がくるようになりました。

大正製薬『ゼナ』では、いろんな商品をテーブルに並べて検証した結果、まず「わからない」というコンセプトの1案を提案しました。しかしクライアントである大正製薬さんから「あと100案つくってください」との言葉が。

「100案出しましたよ。クライアントの力になりたいので、話は良く聞きます。そして何案も出します。『もっと見たい』と言われたら『ではどういうものをおつくりしましょうか?』と聞きます」

色を変えたり、ストライプの方向を変えたり、ときには「F1のようなデザインで」という要望に応えるべく、F1カーを盛り込んだデザインをつくったと話し、会場を沸かせます。結局、実際に見て納得いただくために200案以上提案したそうです。

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「2か月も音沙汰がなく諦めていたところ、突然連絡が来て、1番目の案に決まり喜びました。200案以上デザインをつくってやっと最初の案の良さがわかってもらえた。ここまでのコミュニケーションはとても大事。最終的には彼らが納得して決めたので、自分たちが一緒につくっているんだという意識になっている。『自分たちで選んだので大切にしよう』という気持ちはなかなかなくなりません。遠回りだけれど、これが、共創の大切さです」

【クリエイティブディレクションのルール#1】
話をよく聞き、提案し続ける

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