PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#08 六本木ブックフェス by 幅允孝【後編】

ここからは、イベント初日に行われたプログラム「読書のフェス in Roppongi」の様子をご紹介。6名の作家や詩人、さらには来場者の方も飛び入りで、さまざまな本の一節を朗読しました。

耳を傾けるだけじゃない。参加するのも、朗読の楽しみ。

「小鳥が森を飛び出した......私は家を飛び出した......太陽は宇宙を飛び出した......」

最初に登場したのは、ロックバンド「チャットモンチー」の元ドラマーでもある、作家・作詞家の高橋久美子さん。グロッケンという鉄琴を奏でながら、自身の詩「太陽は宇宙を飛び出した」をゆったりとしたペースで読みはじめます。

しばらくすると、高橋さんから「一緒に詠んでくれる『朗読隊』を募集します!」という呼びかけが。立候補した4人が並び、それぞれが一節ずつ、そして声を合わせて「夜空はまるで海」という詩を詠んでいきます。

「墨絵みたい」「夜空はまるで海」「三角の山」「泣き虫の蝉」「月は笑うし」。
続けてみんなで「はらはらひりひり」「ぎりぎりぐらぐら」......。

ラトビアを旅してつくったという絵本『明日のうさぎ』の朗読を経て、最後は「太郎山やーい!」という詩の朗読で締めくくり。「山と太陽が呼び合うところがあるんです。私が『太郎山やーい』って言ったら、続けてみんなも言ってな?」。

「まんまる太陽、ポーンと跳ねた。太郎山やーい」(高橋さん)
「太郎山やーい」(会場)
「太陽やい!」(高橋さん)
「太陽やい!」(会場)

「じーっといるから偉いんだ。動いてくれるから偉いんだ。それそれ、力が湧いてきた。めきめき。働け、働けよ......ありがとう、ナイスこだまでした!」

作家、ライター、詩人。朗読のスタイルは三者三様。

「『太郎山やーい!』をやるかどうか迷っていたんですが、会場が自由な雰囲気だったので、これはいけるなと。いきなり楽器を弾くのは難しいけれど、朗読は誰にでもできます。実際に声に出して読むと、すごく気持ちいいっていうことを体験してほしくて」

高橋さんの言葉どおり、芝生の上にはうたた寝している人もいれば読書に没頭している人も。続いて、『九年前の祈り』(講談社)で2014年度下半期の芥川賞を受賞した小野正嗣さん、エッセイ集『女子をこじらせて』(ポット出版)で注目を浴びた雨宮まみさん、この日の司会進行も務めた詩人の菅原敏さんが次々に登壇しました。

「僕の作品は、ほとんどが九州の田舎の集落の話。六本木で読むには場違いかもしれません。先週、ベルリン国際文学祭でも『九年前の祈り』を朗読したんです。僕に続いて、現地の俳優さんがドイツ語で読んでくれたのですが、やはりプロの朗読はすばらしかった。それに引き換え、僕はこんなんですみません(笑)」

続く雨宮さんは、自著『自信のない部屋へようこそ』(ワニブックス)のほか、フランソワーズ・サガンのインタビュー集『愛と同じくらい孤独』(新潮文庫)などの一節を朗読。

「実は『女の一人暮らしは、辛い』と思い込んでいることの半分ぐらいは、『女の一人暮らし』じゃなくても起こることなんじゃないか、と私はにらんでいる。それでも、孤独に襲われることがないとは言えない。私はそういう時間のことを『魔の時間』と呼んでいる......」(『自信のない部屋へようこそ』より)

菅原さんは、自身の詩の数々を披露してくれました。たとえば次の詩は、ツイッターで発表したもの。

「詩でも書こうかと、万年筆をインク壺に差し込んで、新しいページを開いたけれど、書いているのは昔の彼女の名前たちとか、金の計算とか。青いインクも白い紙も、なんだか残念そうにしている日曜日の夕方」

合間には「オープンマイク」と題して、自由参加で朗読できる時間帯も設けられていました。8名が次々と参加し、ある人は谷川俊太郎さんの詩を朗読、ある人は自作の詩や小説を披露。さらには「私、無職で就職活動中なんですが、度胸試しに」と、自分の職務経歴書を読み上げた人も。参加した人には「読書のフェス」オリジナルTシャツが贈られました。