PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07 「六本木未来大学 by 水野学」 第4回 「嶋浩一郎さん、人が動く編集って何ですか?」講義レポート

「インサイト」に続いて嶋さんが話してくれたのは、メディアごとの表現方法について。テレビCM、雑誌・新聞広告、トレインチャンネル、デジタルサイネージ、SNS、YouTube......。人に情報を伝達する手段は山ほどある、と嶋さん。その違いとは?

「みなさん」と「あなた」の違いに敏感になる。

「よく広告代理店の人が『ワンコンテンツ・マルチユースだからお得ですよ』って言うんです。でもそれは間違っていると思います。たとえば同じテキストを書籍にすることも雑誌にすることも、ウェブサイトに載せることもできるけれど、"乗り物"が違えば、編集のお作法が異なります。コミュニケーションに携わる人はその違いに敏感にならなきゃいけない」

【クリエイティブディレクションのルール#3】
あらゆる" 乗り物" の運転免許を持つ

たとえば、テレビのニュース番組で長く務めたアナウンサーが、フリーになって最初の仕事で、あるラジオ番組のDJをしたときのこと。

「『ラジオの前のみなさん、こんにちは』とあいさつをしたんです。普通の言葉に聞こえますよね? なのに、ラジオ好きの人からは『やっぱりテレビの人だね」とインターネットの掲示板に書かれてしまいました。ラジオでは『みなさん』よりも『あなた』という二人称単数の表現のほうが気持ちいいということなんです」

ほかにも、テレビCMならビールの泡の表現にこだわるけど、トレインチャンネルではそこにこだわっても意味がない......などなど。「こんな話をしていると明日の朝までかかっちゃう」ということで、代表例として紙とウェブの違いを説明してくれました。

「雑誌『週刊ポスト』の記事は、『NEWSポストセブン』というニュースサイトにも転載されていますが、必ずリライトしているんです。週刊誌はねちっこく書くほうが読者の共感を呼びやすいけれど、ネットニュースにそのテイストは適さない。たとえば雑誌なら『AKB48の総選挙は誰々を応援しよう』と書いていいわけですが、ネットでは『誰を応援するかはこっちに決めさせろ!』となる。ネットでは嫌われやすい主観的な要素をリライトするときに削除することで、PVがアップしたそうです」

「『鉄板コーデは甘トップス×辛ボトム、即買鉄板垢抜けベージュ』は女性ファッション誌『BAILA』の特集タイトルです。これ、このまま言葉にしてしゃべったら、普通の人には何を言ってるのか伝わりませんよね。でも、雑誌の表紙に書かれると読者は理解する。ただし、そのままネットの記事に出すと『セレブ(藁)』なんて書かれて炎上してしまうかもしれません。ネットのマーケティングは雑誌とは逆で、みんながわかる言葉を使わないといけないんです」

【クリエイティブディレクションのルール#4】
ウェブと紙での表現の違いを意識する

ネットは「ラジオ的」なコミュニケーションに変わっていく。

さらに、近年、テクノロジーの変化とインターネットの普及によって、企業と生活者のコミュニケーションには大きな変化が起こってきている、と嶋さん。企業がウェブサイトをつくり、バナーで誘導していたのが1990年代、インターネット黎明期のこと。SNSの普及後は「タイムライン」に企業が情報を出すようになり、さらにスマホが登場してからは「アプリ」という形で個人の端末に企業が情報を埋め込むようになりました。

「次は企業と生活者のコミュニケーションがメッセンジャー上で行われるようになるはず。すでにヤマト運輸はLINE上で配達通知したり受取日時が変更できるサービスを開始しているし、そのうち銀行の残高照会や航空会社のチケット予約なんかもメッセンジャー上で行われる時代になるでしょう。これからは、企業と生活者がどんどんプライベートな中でやりとりするようになる。そう『みなさん』から『あなた』へ、ラジオ的なコミュニケーションに変わっていくと思っています」