PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07 「六本木未来大学 by 水野学」 第2回「夏野剛さん、ビジネスのデザインって何ですか?」講義レポート

「いつまでたってもデザインの話にならないね(笑)。でも、ぜんぶヒントになるでしょう?」。授業は残り30分。このあと、いよいよスケッチブックに書かれた言葉(1ページ目冒頭)の核心に迫っていきます。

置かれている環境に合わせて、ビジネスを変えていく。

「環境が激変しているんだから、ずっと同じビジネスモデルではやっていけません。2003年にイーロン・マスクが創業した自動車メーカー『テスラ』を見て、専門家でもないのによくつくれたなと考えるのは大間違い。専門家じゃないからつくれたんですね。アップルがiPodを出したとき、日本の技術者は『これはハードディスク付き音楽プレイヤーで、落としたら壊れる』なんて言っていたけれど、それは間違い。あれはiTunesというソフトを使って、ネット経由で音楽を聴くことを前提にした装置。つまり、アップルはビジネスモデルを変えたんですよ」

あらゆるデバイスがネットにつながる今、ものづくりの概念は変わりました。それは、新しいサービスや新しいお金の取り方、新しい付加価値をつけること。

「デザインって、意匠だけで勝負するわけじゃないでしょう? そこに込めたメッセージがどういう効果を及ぼすか、どう人々を巻き込むか、また二次使用をどう使いやすくできるか、それを考えないと。ちなみに、テスラの部品の80%は日本製、iPhoneも中身の多くは日本製です。自分の仕事はこれだけだと考えて同じことを繰り返す人は、パーツメーカーになってしまう。部分だけをつくって満足するのか、付加価値をつくっていきたいか、そういう話なんです」

【クリエイティブディレクションのルール#3】
デザインが社会にどんな効果を及ぼすのかを考える

資金や教育、技術など、すべてが揃った日本にはチャンスが転がっている。

「今日は"日本ダメダメ論"を言ってきましたけど(笑)、それでも日本は相当すごいですよ」。授業の最後に話してくれたのは、現在の日本の実力について。

「経営の三種の神器『人、金、技術』、全部そろっているんです。弱いのが、語学能力の低さや、予定調和好きなところ。会議で反対意見を言うと、上司が『おれの顔に泥を塗った』とか、よくあるでしょう? でも、これは甘え。摩擦があるほどイノベーションは起こりやすくなる。だから、意見が違う人といっぱい話してください。20年で生産性が上がっていないということは、これからアメリカ並みに成長できるということ。そのチャンスがごろごろ転がっているのが、今の日本なんです」

【クリエイティブディレクションのルール#4】
意見が違う人と話してイノベーションを起こす

想像力と創造力を駆使して、新しい付加価値を生み出す。

授業の最後は質疑応答。参加者のみなさんからの質問に、夏野さんが次々と答えていきました。

――20世紀と21世紀では、同じ1万円でできることは違いますよね。GDPで単純に比べられないのではないでしょうか。

「たしかにGDPだけを比べて一元的に判断できませんが、付加価値の総額であることには変わりがない。『国民総幸福量』などほかの指標もたくさんありますし、経済性だけで語れるのかという問題もあります。でも、そこを考えても効率化に結びつかないから、あえて避けているんです。ついでに言うと、ワークライフバランスが浸透して労働時間が減っている今、BtoCで起きているのは、お金ではなく時間の取り合い。テレビよりもスマホのゲームが伸びているのは、より満足感があるから。ビジネスの成否は、ユーザーの時間をいかに奪うかにかかっているんです」

――人工知能に注目しています。日本人はこの分野で活躍できるでしょうか?

「2045年には、人工知能が人を上回るといわれていますね。でも、すでにこのiPadのほうが、僕よりもメモリ能力が高い(笑)。これからは、人工知能が不得手な部分、つまり『想像』と『創造』に力を注ぐべきだと思っています。社会が人工知能にどう向かい合うか、人間とどう役割分担をするべきかを議論したほうがいいですね」

――グラフィックデザインなら手もとでできますが、ビジネスモデルのデザインと聞くと壮大すぎて......。どう考えたらいいのでしょうか?

「これはすごく簡単。徹底的に対価を支払う人の立場に立つことです。いけないのは、業界ではこれが普通だというように、お金を受け取る側の理屈に乗っちゃうこと。ユーザーサイドに立って、とことん考える。そうすることで新しいビジネスがデザインできるんです」

【クリエイティブディレクションのルール#5】
徹底して対価を払う立場でアイデアを考える

「ビジネスのデザインをひと言でいうなら、僕の答えは簡単。ものづくりやサービスに、命を吹き込むことです。製品を差別化するのが意匠的なデザインだとすれば、その製品をきちんと世の中で回すのがビジネスのデザイン。専門外だと思わず、いかに付加価値をつけるかを考えてください。そして、社会環境の圧倒的な変化を前提に、新しいものを生み出していってほしいと思います」

【information】

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07
「六本木未来大学 by 水野学」(全5回)


第3回「川村元気さん、エンタテインメントのデザインって何ですか?」
【講師】川村元気さん(映画プロデューサー・作家)
【開催日】9月28日
【時間】19:00~21:00
【参加費】2,000円
【場所】東京ミッドタウンカンファレンス(ミッドタウン・タワー4F/東京都港区赤坂9-7-1)

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