PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07「六本木未来大学」第14回「佐渡島庸平さん、ファンづくりのために必要なコミュニティって何ですか?」講義レポート【前編】

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『マンバ』に込めた思い、『宇宙兄弟』ファンコミュニティで感じた手応えなど、具体的なエピソードとともに、興味深い話が続きます。

不必要に傷つけられる作家のために、健全なコミュニティをつくりたかった。

佐渡島さんが、『マンバ』をつくる中で大切にしたのは、過去の経験から感じていたマンガ編集者時代の願い。このインターネット時代、不必要な言葉の攻撃によって作家が傷つけられることも少なくありません。しかも、それを未然に防ぐことは、なかなか難しいものです。

「雑誌の部数自体が下がり、読者からの反応を感じにくい時代。作家はエゴサ(エゴサーチ)すること自体が恐怖だし、コンテンツのレビューにも不愉快な言葉が書き込まれるし、という状況です。その上、編集者も複数の作家を担当することが増えているので、昔に比べひとりの作家に向き合える時間も減ってくる。すると、作家はどこからもリアクションがもらえない、フィードバックももらえないんですよね。手応えを感じられず苦しむ姿を見て、『マンバ』は健全な感想が書き込まれるコミュニティにしようと思ったんです」

"健全"にするために、当初は大変な作業を余儀なくされました。FacebookやTwitterと紐づけないと書き込みができないシステムにした上で、投稿される全コメントをチェック。必要以上に作家を傷つけていないかを確認したのちに、コメントをアップしていくという作業を続けました。

「チェック作業に相当な手間がかかるため、最初はなかなかコメントがアップできない。でも、それを耐えながら、ずっとやり続けた結果、自然と作品をけなすようなコメントが見当たらなくなりました。今では、"ここで単なる作家の悪口を言おう"という気持ちになる人がほぼおらず、ただただ作品愛にあふれたコンテンツになっています」

"尖った人たちを見る"という新たな形が生まれる。

現在、『マンバ』はマンガをよく読む人であっても、次に読みたいマンガが見つかる場として多くの支持を得るコミュニティサイトに。よりコアなユーザーが集まり、さらにそのコアなユーザーが新たな関係性をつくります。

「恐らく『マンバ』のランキングを見れば、どれだけマニアックな場所かがわかってもらえると思います(笑)。たくさんのマンガを読み漁っている人たちが、深く語る場になっている。記事にしても、『ドラえもん』の1巻だけについて、むちゃくちゃ長いレビューを書いてみたり、最先端ではない作家への超ロングインタビューを載せたり。ある意味、特殊な状態をつくり出しているんです。結果、極端に尖った人たちが現れて、"尖った人たちを見る"という形でコミュニティができてくるんですよね。今、『Sli.do』に"コミュニティから世の中にムーブメントを起こしていくには、どのような工夫が必要か"と挙がっていますが、その答えは"とにかくマニアックでコアな人をつくっていくこと"だと思います。"恐ろしく深い"ということが、インターネットでは価値になる。だから、僕もスタッフによく言うんです。"マニアックに語れる人がいれば、どんな場所でも口説きにいけ"って」

【クリエイティブディレクションのルール#3】
マニアックに語れる人を口説け

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コミュニティの中では、ダメな部分も失敗も愛嬌になる。

さらに、『Sli.do』には「カリスマ性や人を惹きつける力、自信のない人がコミュニティをつくることは可能か」、「コミュニティの中心になる人って、どんな人なんでしょう」といった質問が挙がります。

「今YouTuberとして活躍している人も、全員にカリスマ性があったわけじゃないと思うんですよ。むしろ、主役ではなかった人たちがたくさんいる。たとえば、『価格.com』のような場で、家電についてすごく詳しいレビューを書いている人や、『食べログ』で毎日のようにレストランに行ってレビューを書いている人って、昔なら"もっと、しっかり仕事しろよ"と言われたと思うんです(笑)。リアルなコミュニティがない場所では、明確にマネタイズできる才能が必要だった。だから、ほとんどの人の"好き"という気持ちは単なる趣味で、お金を生むものではなく、使うだけのものだったんですよね。それが、今はコミュニティの中だけなら"好きが高じると仕事になる"という現象が起こっているんです」

しかも、"コミュニティの中"では、必ずしも「優秀である」ことが重要ではないところが、魅力だと佐渡島さんは続けます。

「社会に出ると、ミスがなかなか許されませんよね。しかも、現代は自分には能力があるんだと常に証明しないといけないことも多い。それがコミュニティの中では、ある種の失敗やダメな部分も、すべて愛嬌として認めてもらえて、受け止めてもらえるんです。コミュニティ内で、メンバー同士がコミュニケーションをしっかり取っていると、優秀さを示さなくても、"自分の居場所"を確保できる。それって、すごく心地いいことなんですよね」

【クリエイティブディレクションのルール#4】
自分の居場所を確保できる場を目指す

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コミュニティ内だけでしか価値を持たないものがビジネスになる。

コミュニティを熟成させると、その中だけでしか価値をもたないものが、大きなビジネスチャンスになるのです。この"何がビジネスになるかわからない"時代になっていることも、現代のコミュニティのおもしろさ。『宇宙兄弟』のファンコミュニティでは、こんな事例があったと言います。

「作中に出てくるブライアン人形というのを、1,666個限定で本物そっくりにつくったんですよ。かなり凝ったので自然と値段も高くなる。でも、『宇宙兄弟』ファンなら絶対ほしくなるだろうと予想していたので、そこは気にせずつくりました。僕たちはファンの方たちと、TwitterとFacebook、LINE、メルマガを使ってコミュニケーションができるので、マニアックな情報もコストをかけずに伝えられる。その安心感があるから、この人形をつくることができたんですね」

結果1,666個はすぐに完売。物語の中ではブライアン人形を月面に置いてから時間を経たのち、エディ人形をとなりに置くというエピソードがあります。当然のように「なぜ、エディ人形がないんだ」という声がファンから上がりました。もちろん、その声は佐渡島さんも想定内。

「追加でエディ人形をつくることにしたのですが、一般のメールには出さず、ブライアン人形を買ってくれた1,666人だけにその情報を送りました。半数の800個を販売数として考えていたものの、メール送信から5分後にはオンラインショップのカートの中に、500人が殺到したんです。結局、不具合が起きてしまい、解消したときには売り切れ。買えなかった人から多くの声が上がり、結果、"今回は希望者全員に売ります"ということで、さらに追加生産しました。最終的にエディ人形を買った人は1,300人。手元に届くと、みんなブライアン人形と並べて写真を撮り、"待たせたな"というセリフとともにツイートしていていました。実は、このとき、月のクレーターがプリントされたレジャーシートをいっしょに販売したんです。作中と同じように、月面で2つの人形を並べられるように。僕らがやったことは、コミュニティ内で仲間同士が楽しむための道具、会話のきっかけを用意するということなんです」

【クリエイティブディレクションのルール#5】
コミュニティ内で、仲間同士が楽しめる道具を用意する

後編はこちら

【information】

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07
六本木未来大学アフタークラス
【講師】横石崇(「TOKYO WORK DESIGN WEEK」発起人/オーガナイザー。&Co.Ltd代表取締役)
【開催日】2017年9月25日(月)
【時間】19:00〜21:00(予定)
【参加費】2,000円 
【受付】お申し込みはこちらから ※外部サイトへリンクします
【場所】東京ミッドタウン・デザインハブ(ミッドタウン・タワー5F/東京都港区赤坂9-7-1)

六本木未来大学 第15回 「寺尾玄さん、新しい体験を提供するって何ですか?」
【講師】寺尾玄(デザイナー/BALMUDA代表)
【開催日】2017年10月20日(金)
【時間】19:00〜21:00
【参加費】2,000円
【受付】事前申込制 ※応募締切:10月17日(火)17:00まで
【場所】東京ミッドタウンカンファレンス(ミッドタウン・タワー4F/東京都港区赤坂9-7-1)
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