PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#14 「六本木未来恋愛映画祭 by 菱川勢一」PROJEGT REPORT

今回の企画への思いを語る一方で、「映画の在り方をもう少し純粋なものにしたい」と話す菱川さん。話題は、映画におけるクリエイティブについて。「映画はデザインとアートのスイートスポット」だと語る菱川さん、その意味とは?

膨大なクリエイターが集結してつくり出す映画の世界。

「実は映画って、当たり前のように、とんでもない数のクリエイターのコラボが起きているんです。脚本、撮影、編集はもちろん、ロゴやタイトルバック、ポスターもある。監督がいて、助監督がいて、衣装さんがいて、メークさんがいて。映画が総合芸術と言われることがあるのは、クリエイティビティあふれる専門家たちが集結してひとつのことをやっているからじゃないかな。いつもは広告をデザインしている人が映画のタイトルをデザインするなんてことは、普通にある話で。クリエイティブに携わる人は誰でも映画づくりの一端を担える、すごい世界なんだって思いますね」

菱川さんが、特に光を当てたいと思っているのが、映画の美術や衣装に関わっている人たち。

「たとえば柘植伊佐夫さんという『人物デザイナー』という肩書きで持たれているスタイリストの方がいます。彼は、登場人物のビジュアル表現のために、衣装はもちろん、服や靴まで自分でつくってしまうんです。その独特の世界観だけで物語だし、また、ある小道具のスペシャリストの方はジャスパー・モリソンから愛媛の砥部焼まで、ものすごくデザインやアートや工芸に詳しかったり。こういう、コンテンツ制作の中核にいる人たちには、なかなかスポットライトが当たらないんです。でも、そここそが、デザインとアートのスイートスポット。ぜひそういう部分にも注目して映画を観てほしいですね」

映画を、もっと純粋に楽しむために。

たくさんのクリエイターが携わることで成り立っている映画の世界。興行収入などビジネスの側面ばかりが注目されがちですが、菱川さんは、映画のあり方をもっと純粋なものにしていきたい、と言います。

「僕は短編映画が好きなんです。無名の短編映画も注目して観ていますが、機材もよくなってきていて、最近の作品は格段にクオリティが高い。そして、短編映画は多くの場合、つくる動機が極めて純粋なんですよね。何の宣伝戦略やマーケティングもなく、みんなでつくりたいものつくっている。『興行収入を何億円以上あげないと赤字です』みたいなことを言い出す人もいないし、本当に純粋創作だなぁと思います。面白そうだからやるっていう、映画の良さを一番味わえると思うんですよね」

菱川さんはロケなどで外国を訪れると、必ずその街の映画館をチェックするそうです。映画のあり方の例として、先日訪れたニュージーランドの田舎町の様子を話してくれました。

「スーパーマーケットがひとつしかないような街なのに、映画館はちゃんとあるんです。午前中は5ドルくらいで短編を上映して、午後は長編を上映して。もちろんインターネットはあって、街の人たちは、家でネットフリックスやYouTubeも見ているはず。でも、映画を観るという行為が、完全に日常に根ざしているんです。それに対して、日本ではいかに大作を揃えて動員数を上げるかという、マーケティング主導のあり方が主流ですよね。日本でも、カフェに立ち寄るくらいの感覚で、気軽に映画を楽しめる環境になるのが理想だなって思います」

「『六本木未来恋愛映画祭』が面白いのは、マーケティングや戦略とはあまり関係がないところで、純粋に誰かが推薦した映画をみんなで観ようということをオフィシャルにやっているところだと思うんです。恋愛映画を観て、みんなできゅんきゅんしましょうという素朴な部分がいいなぁって。たとえば、ホラー映画だけど、実は恋人を救い出すという物語を上映してもいいかもしれない。視点や価値観を変えるという意味で、恋愛映画って、やっぱりすごくいいと思います」

INTERVIEW