PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#15 「六本木、旅する美術教室」 第2回 コピーライター梅田悟司のメディアアートの見方【前編】

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触れて楽しむことで、コンセプトをより深く理解する。

Perfumery Organ / TASKO inc. 775111815KN060_Media_Ambiti.jpg

Photo by Koki Nagahama /
2018 Getty Images for Media Ambition Tokyo

 さらに会場を進んでいくと、白いオルガンと向かい合う形で、ガラスケースに入った植物や瓶が壁面にずらりと並んでいます。この大がかりな装置は、TASKO inc.による『Perfumery Organ』。

浜田 子どもの頃、牛乳瓶に水を入れて、笛みたいに音を鳴らしたことはありませんか? それぞれの瓶には香水が入っているのですが、この作品は鍵盤を弾くと、その鍵盤に対応した瓶にコンプレッサーで空気が送られて音が鳴る仕組みになっています。

 19世紀イギリスの化学者であり、調香師でもあったセプティマス・ピエスが提唱した香りの音階、いわゆる「香階」に着目して、香りを音になぞらえた作品。小学生の女の子がちょっと恥ずかしがりながら演奏すると、ほのかにいい香りが漂ってきました。

梅田 先ほどの落合さんの作品もそうでしたが、アウトプットがアナログなほうが体験したり、手で触れることのできるおもしろみがあるのかもしれないですね。こういう作品は、お子さんも楽しめていいですね。

吸える地球 / AR三兄弟 IMG_6638.jpg

 AR三兄弟の『吸える地球』は、バスケットボール大くらいの地球の模型に、ストローを刺す穴が空いている遊び心のある作品。

浜田 「地球を"救う"のは難しいけど、"吸う"ことならできるんじゃないか」というプレゼンをいただきまして、即採用されました(笑)。ぜひストローを使って、吸ったり吐いたりしてみてください。

 参加者が試してみると、表面が雲に覆われみるみるうちに白くなったり、かと思えば赤茶色に変わったり。一体これは、何を表現しているのでしょう。

浜田 実はこの中に気圧センサーが入っていて、気圧の変化で台風が発生したり、氷河期になったり、二酸化炭素濃度が増えて温暖化が起きたりするんです。笑えるけれども、教育的なテーマもきちんとある作品ですね。

感じ方の違いを楽しむところまでが、メディアアート。

Reflective echo / WOW 775111815KN079_Media_Ambiti.jpg

Photo by Koki Nagahama /
2018 Getty Images for Media Ambition Tokyo

 最後に鑑賞するのは、WOWの『Reflective echo』。ミラーコーティングされた三角錐の底面に映し出される映像が、万華鏡のように反射して、これぞインスタ映えする作品です。イタリアのフィレンツェで開催されたファッションイベントで、ベースとなる作品を発表したときは、中に入って写真撮影をするファッショニスタで長蛇の列ができたそう。

杉山 WOWさんはきれいな映像をつくることで有名なアーティストですが、その映像を体感する装置そのものもつくってしまったところが、新しいと思います。

梅田 この作品は、時間帯によって印象がかなり変わりそうですね。

浜田 そうなんです。これまでのメディアアートは、暗闇のなかで展開する作品がわりと多かったのですが、ホワイトボックスではなく展望台での開催ということもあり、景色と共存し、昼間も楽しめる作品を増やしていきたいと考えています。

 メディアアートの幅広さと奥深さを感じながら、気軽に楽しめることもわかった今回の教室。

杉山 メディアアートはいろんな見方があっていいのですが、僕自身はちょっと先の未来を表すものなのかなと思っています。高度なテクノロジーによって世の中が大きく変わろうとしているなかで、メディアアートが未来を楽しいものと捉えるきっかけになればいいですね。

 アート好きのご夫婦で、小学1年生と就学前のお子さんと一緒に参加した方からは、こんな感想も。「子どもも楽しめるような展覧会を、普段から選んでいます。メディアアートはいろんな体験ができるので、上の子は特に美術館は楽しいところというイメージを持てたみたいで、私たちとしても嬉しいですね」

 授業の締めくくりとして、梅田さんが改めてメディアアートの楽しみ方を提言してくれました。

梅田 同じ作品を見ても、感じ方は人それぞれだと思います。自分が感じたことと、隣の人が感じたことはきっと違っていて、価値観や固定観念みたいなものが反映されているのではないでしょうか。だけどその違いにこそおもしろさがあるはずなので、今日初めて会った人がほとんどだとは思うのですが、お互いに話をしてみてはどうでしょう。感じ方の違いを楽しむところまでが、メディアアートなのではないかなと僕は思います。

【メディアアートの見方#3】
ほかの人と話し合って、感じ方の違いを楽しむ。

後編はこちら

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