PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#15 「六本木、旅する美術教室」 第1回 グラフィックデザイナー長嶋りかこの美術展の見方【前編】

project_15_31_main02.jpg

『美容院』 2008 / 2017年

展示構成の順番に見える編集意図。

 本展覧会では会場の奥へと進むにつれて、自分が作品の一部となって楽しめる、"体験できる"作品が増えていきます。鏡の向こうにいくつもの試着室がつながっていたり、複数の鏡を介して映り込む自分が見えたりと、不思議な世界を体感できる『試着室』や、鏡と思っていたものの向こう側に、別の現実世界が広がっているという予想外の仕掛けの『美容院』に、長嶋さんも「なるほど、おもしろい!」と声をあげていました。

椿 港を出発してから、いくつもの作品を経て、この『美容院』あたりまでくると、みなさん結構はじけるんですよ(笑)。親子や友だち同士でふたつの世界を行き来したり、いろんな構図で写真を何枚も何枚も撮ったり。最初に体験型アートを持ってきちゃうと、アトラクションのようなテンションになってしまうので、最初は静かに始めて、だんだんと遊びのあるものへと移行して。そういう緩急をつけて、構成したんです。

長嶋 作家を"もうちょっと別の角度で紹介しよう"という、キュレーターの思いや考えによって展覧会の編集ってまったく変わるんでしょうね。実際展覧会をキュレーションした椿さんの話から、展覧会の組み立てのおもしろさを感じます。

椿 ありがとうございます。ただ、見に来てくれたお客さまには、考えすぎずそのまま素直に楽しんでもらえたらなって。きっと作品に出会ったときに、自然と体が動くと思うんですよ。

【アートの見方#1】
体験型アートは、まずは触れて楽しんで、その後作品の意味や背景を考えてみる。

『建物』 2004 / 2017年 ①《建物》.jpg

撮影:長谷川健太
写真提供:森美術館
Courtesy: Galleria Continua

 そして、展覧会のクライマックスには、参加型の大型インスタレーション『建物』が登場します。床に寝転がった状態で設置された建物の壁面で、45度の傾きで超巨大鏡面が配置されており、観客は鏡を見ながら思い思いのポーズをとって楽しむという作品です。友だちや家族と体感するだけでなく、見知らぬ人と触れ合ったり、見る側、見られる側になったり。絶妙なコミュニケーションで成立する空間というのも、本作のおもしろさです。

椿 『建物』もそうですけど、人がいなかったら割とつまらないんですよ。写真を撮るなら自分だけでなく、ほかの人にもおもしろいポーズをとってもらったほうが楽しいじゃないですか。知らない人とその場で出会って、同じ空間で同じ作品を一緒に作りあげる楽しみを味わってもらえるんじゃないかなと思います。

長嶋 なかなかないタイプの作品ですよね。

椿 遊園地に来ているような感覚で子どもは素直に楽しめますし、大人の方は作品のなかに見える現代社会についての批評的な視点について、考えることもできる。だから、今回は作品解説を作品を体験した後に見てもらえる位置になるべく置いているんです。最初に読んでしまうとおもしろくないから。

長嶋 たしかに、作品解説の位置がいつもの展覧会とは違いました。そういうところも考えられているんですね。

【アートの見方#2】
参加型のインタスタレーションは、知らない人との一期一会を楽しむ。

展示を介して、自分と向き合う時間を。

 展示を見終えた長嶋さんは、「日を改めてもう1回見に来たいです」と大満足の笑顔。

長嶋 展示室を出ても、展覧会の延長っていう感じがします。なんか、違うものの見方が身についているような。ちょっと、感覚が変わっているんですよね。 

椿 エルリッヒの作品は日常にある空間が、ちょっと変わったものとして存在しているので怖さを感じる人もいるかもしれないです。この展覧会には、ある種の居心地の悪さみたいなものがあると思います。つまり、アートによる操作というか。もともとあるルールを中から壊しながら、違うものを作り出すというような可能性があるんじゃないかなと思うんですよね。

長嶋 たしかに。今回なら目の前にある物事の見方を変えるだけでなく、社会で起こっているできごとへの見方を変えるような作品、アプローチを体感しました。自分がその視点を持ったとき、毎日起こっていることが、本当に正しいんだろうかと考えたり。これまでの概念とは違うものの見方ができますよね。

椿 なかなか自分と向き合う機会がない人もいると思うんですが、美術館に来て気になったら立ち止まって見る、考えてみるという時間を持つのも悪くないと思います。

長嶋 展覧会を見て、自分は何が気になったのかをちゃんと考えると、自分が見えてくるような。自分が引っかかったポイントって、今疑問に思っていることや関心のあることを、鏡のように反射させるんだと思います。

椿 そうですね。美術館っていうだけで敷居が高く感じる人もいると思いますけど、まったくそんなことはなくて。私は以前、パリに住んでいたことがあるのですが、八百屋さんも数学者も関係なくみんな見て、"おもしろかった""おもしろくなかった"と感じたことを言い合える環境だったんです。日本も、そうなっていくといいなと思います。だからもっともっとたくさんの方に、美術館に気軽に来ていただけたらと思います。

【アートの見方#3】
「気になったことは何か」をちゃんと思い返して、今の自分の心のあり方と照らし合わせてみる。

後編はこちら

【information】
レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル
会場:森美術館
会期:2017年11月18日(土)~2018年4月1日(日)
休館日:会期中無休
開館時間:10:00~22:00(最終入館21:30)
※火曜日のみ、17:00まで(最終入館16:30)
入場料:一般1,800円 高校生・大学生1,200円、子ども600円、シニア1,500円
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します): http://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/LeandroErlich2017/

INTERVIEW

RELATED ARTICLE