PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#13「現代アートセミナー特別編 by Chim↑Pom」

セミナーでは、2月18日から個展「The other side」でお披露目予定の最新作の話も。その内容は、「ボーダー」をテーマに、アメリカとメキシコの国境沿いを旅し、メキシコ側にツリーハウスを建て、そこから見渡せる緩衝地帯と、2つの新作を眺めるというコンセプト(ちなみにこの作品制作も、Chim↑Pom独自のファンドレイジングと貯金で行われたそう)。そして最後は、日本の現状とアート業界のこれからについて語りました。

作品と鑑賞者とアーティストの間にある、「見たことがないものに触れたい」という感覚。

卯城 いろんなファンドレイジングによって作品をつくってきたけど、その結果としての写真やビデオを、アートピース一つひとつの売買ではなくプロジェクトとしてパッケージにしてまとめ買いする、みたいな心意気のあるコレクターが増えてくれたら、買うほうも売るほうもクリエイティブな感じがして面白いんだけどね。

エリイ 企業は1回のパーティーで大金を無駄打ちしてたりするじゃん。もっと生産的なことがあるってわかれば、そのうちやりだすんじゃない? 10年後とかにはそういう企業が増えそう。日本はひとりがやったら隣の人もやるんだよ。ただ、そのひとりが難しいよね。

卯城 実は六本木未来会議のインタビューを読んだお金持ちの人が「物件が余ってるから自由に使っていいよ」って、ウチらに表参道にスペースを無料で貸してくれたりしている。そういう例もある一方、ちょっとガッカリした話も聞いて。あるギャラリストが、高所得者の人の海が見える家に合わせて、杉本博司さんの水平線の写真を売ったんだって。でも、その人はコレクターとしては初心者だったらしく、まわりの高所得の友だちの反応が「なんでこんなのにお金出したの?」みたいな感じだったからって作品を返品したらしい。

エリイ たぶん水平線だったからだよ。だって窓から見えるじゃん。

卯城 それはわかってて、だからこその作品だったんじゃない?(笑)。

エリイ ただ売っただけなら、そりゃ返品されるよ。売るほうも知識や世界観、文脈をちゃんとわかるようにするべきだし、売買目的じゃないなら心に響かせないと。私が通っていた美大にも、アートを知っている同級生がほとんどいなくてびっくりしたもん。今はインターネットでだいたいわかるけど、日本語になってない情報も多いし。

卯城 現代アートって文脈がすごく重要だから。僕らもあらためて「ああ、そうなんだ」って思うポイントがたくさんある。アートセミナーを開催してそういう知識を得るのもひとつの手。でも、だからなんだという感じもしなくはないよね。そんなことより前に、そもそもアート作品と鑑賞者とアーティストの間には、見たことがないものを所有したり、見たことがないものだから触れてみたいという、好奇心や実験精神というか、リスキーだけどワクワクするような感覚があるはずで。評価が定まったものとだけ触れ合っていると、そんな無鉄砲な感覚が衰えていって、どんどん保守的に物事を見て判断するようになる。そんな老人みたいな個人が増えてしまったから、日本は社会としても若さを失っているんじゃないかな。若さなくして成長はあり得ないのに。

エリイ 大人が大人の役割を果たしてないんだよ。

卯城 若者が失敗するとフォローせずに非難ばかりだもんね。そんな状況だと誰も挑戦しなくなる。バックパッカーとか、日本人でやる人、めっちゃ減ったじゃん。世界のどこに行っても韓国人や中国人の若者はいるけど、日本人の若者にはほぼ出会わないもんね。

エリイ エロい歓楽街で夜遊びしている日本人のおじさんはどんな場所でも見かけるけどね。

国がアートをバックアップすることは、許容範囲の広さを示すこと。

卯城 新興国やアメリカ、ヨーロッパでアートが重宝されているのは、ある意味、実験精神とか文化に対する許容範囲の広さや、価値が付いていないものを生み出すことへのポジティブさの競争をしていると思うんだよ。日本はそういう競争に乗れなくなった気がする。マンガやアニメとかは盛んだから、まぁいいけどね。

エリイ ブラジルの奥地でもメキシコのスラムでもキティちゃん柄を履いてるしね。いいじゃん、こんなにキティちゃんがいっぱいいて、アニメも放送されててさ。

卯城 そういう面では日本は面白いものを許容してるかもしれないし、美術館に行く人の数も多いけど......。

エリイ よくある客寄せパンダ的存在の古典絵画1枚を観るために、並んだ揚げ句一瞬で通り過ぎたりするし、「芸能人見た!」みたいなのと同じだよね、日本の美術観賞って。

卯城 たしかに好きな芸能人を見たら、しばらくはラッキーみたいな気持ちが持続するかもしれないし、友人にも話すよね。たぶんモナリザが来てもそんな感じだよね。

エリイ でも、日本にはもっと、全然知られていないような外国人のアートを入れたほうがいいよ。

卯城 今、国際的に高く評価されているアーティストは、あまり日本に入ってないよね。なんでこんなに情報のギャップがあるんだろうって思うもん。アートが盛んな国だと、国も企業も個人もオルタナティブなグループも、アートをバックアップする仕組みが整っているから、仮に国がソッポ向いていても成り立つ。

エリイ いろんな国に、建物を建てるときに建築費の数パーセントでアートを買わなきゃいけないっていう法律があるじゃん。

卯城 バイブスが合えばもちろんいいけど、一般論としては、今は国や企業のお金でプロジェクトをやるには規制が多すぎるよね。個人的なコレクターやアートファンの人たちと一緒にやるのが、今は理想的なのかも。

エリイ 私は誰にも買ってほしくない。人がつくった作品を所有しようとかいう気持ちが嫌だね。

卯城 エリイちゃんは作品が売れると、ちょっとへこむよね(笑)。売れなかったら売れなかったで、やれやれって感じだし(笑)。なんなの、その感覚は。

エリイ この人に買われるならいいって思うこともあるけど、なんか汚された感じがする。

卯城 なるほどね。たしかに、アイデア出しから作品化までの濾過を経てアウトプットされた作品には、愛なのか毒なのかわからないけど、ウチらのなんか純度の高い物がどうしてもこもっちゃう。だからやっぱりただの消費やインテリアとしてじゃなく、クリエイティビティの高い売買が成立すれば、楽しめる気もするな。おれもたまに5万円とかの若手の作品を買うと、自分にすごくいいフィーリングが生まれるし。

エリイ そんなに高くなくても、すごくうれしいよね。すごく好きだから買うわけで、それが手もとにあると、うれしい気持ちがずっと続く。

卯城 若手の作品を買うことは、実験精神に近いものがあるしね。しかも作家は喜んでくれるし。

エリイ 自信にもなるよね。私も最初に売れたときのことを思い出すとうれしいもん。

卯城 あれ、さっきは買ってほしくないって(笑)。それに結局、なぜか高所得者に関係ないような安い話に行き着いてしまう......。

コレクターとアーティストのマッチング方法を、みんなで考えていく。

卯城 結局、日本でプロジェクトタイプのアートを買ってもらうにはどうしたらいいんだろうね?

エリイ いつも言ってるじゃん、プロジェクトをやることを誰も知らないのに、お金が集まるわけないって。こっちは発信してるつもりでも届いてないの。

卯城 難しいんだよね。ツイッターとかでつぶやいても......。

エリイ あとから「展覧会をやっていたなら教えてほしかった」って言われるんだよ。展覧会ですら告知が難しくて、歌舞伎町の「また明日も観てくれるかな?」だと、最後に人が集まったのは口コミだから。

卯城 プロジェクトの最後に人が集まるのはわかる。けど、始めるにあたってはどう伝えればいいんだろう。

エリイ Chim↑Pomを始めたときもそう。「Chim↑Pomのエリイです」って電話をかけるんだけど、昨日名前を決めたばっかりだから、誰も知らないの。

卯城 それ、たぶん電話するのが早すぎるな(笑)。

エリイ とにかく、物事の始まりは誰も知らない。

卯城 それがいいということもあるよね。毎回プロジェクトをはじめるときに、何ができるかを考えるんだけど。

エリイ まずはアーティスト側がちゃんと発信できていないっていう問題があるね。

卯城 アーティストはいつも面白いことをやりたくてウズウズしているし、だけどそのリアライズは現実味がないって思い込んで諦めている。少しお金を持っている人にとって、それはたいした額ではないはずなんだけど。これからはコレクターとアーティストが"共犯関係"を結ぶことが、日本のアートが発展していくために必要じゃないかな。2者のマッチングが常識になれば、ヤッバいアートの動きがガンガン現れるはず。それが実現できたら、日本のアートはめちゃくちゃ面白くなりますよ。

【information】

レポート内でも紹介したChim↑Pomの新作、2016年から2017年にかけてメキシコ・ティファナと アメリカ・サンディエゴの国境沿いで制作した「ボーダー」をテーマにしたアートプロジェクトが、2月18日(土)無人島プロダクションで展示されます。興味のある方はぜひチェックしてみては。

Chim↑Pom展「The other side」
会場:無人島プロダクション
会期:2月18日(土)~4月9日(日)
時間:12:00~20:00(土日は11:00〜19:00)
休館:毎週月曜、3月17日(金)~3月27日(月)
入場料:無料
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
http://www.mujin-to.com/press/chimpom_2017_theotherside.htm

INTERVIEW

RELATED ARTICLE