PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#13「現代アートセミナー特別編 by Chim↑Pom」

ここからは、Chim↑Pomが手がけてきたプロジェクトとお金の話。「ここで話すことは、けっこう"お蔵出し"なんですよ」と卯城さん。写真は、会田誠さん撮影の集合写真。エリイさんの祖母が住んでいて今はメンバーが住んでいる家で撮ったそうです。グラスを片手に、2005年の結成から現在に至るまでの、さまざまな作品制作や展覧会の裏側を語ってくれました。

カンボジアで地雷とともに爆破した作品で、チャリティーオークションを開催。

卯城 かくいうChim↑Pomも完全にプロジェクトタイプなアーティストだよね。アーティストコレクティブとして複数人で活動して、みんなが面白いと思うことをみんなで実現させるから、どうしても作品はそうなりがち。

エリイ いろんな人と協力しながら作品をつくるのが好きだから。でも、6人もいると渡航費や滞在費だけでも100万円近くかかる。

卯城 まあ、お金がないからできないってことはなくて、最終的にはなんとか実現するんだけどね。今日はその事例を紹介したいんだけど、まずはデビュー1年目の「サンキューセレブプロジェクト アイム・ボカン」から。

エリイ パリス・ヒルトンとかのセレブがブームだったね、このときは。

卯城 セレブならやっぱり地雷撤去という、エリイちゃんの一周回った考えからカンボジアに行って。家で地雷被害者の子どもたちを養いながら撤去した地雷を展示している人に出会って、そこに泊まりながらプロジェクトをやったんだよね。

エリイ みんなハンモックで寝たり、テント張ったりして滞在して。

卯城 何をやったかというと、地雷を爆破処理するときに、エリイちゃんをセレブ風にかたどった石膏像とか、私物の高級アイテムとかも一緒に爆破したんです。その残骸を東京に持ち帰って、チャリティーオークションを自主開催して。

エリイ 司会をやってくれたのがいとうせいこうさん。

卯城 ただのオークションではなくて、当時のダミアン・ハーストの作品と同じ126億円とか、アートマーケットの象徴的な値段から、逆にだんだん下げていくという方法。そのお金で買える義足の本数も表示しているから、これらのアート作品ひとつの価格でどれだけ多くの義足が買えるかなどが理解できる。で、金額が下がれば義足の本数も下がる。現実的な値段になってくると「誰か手を挙げないかな」っていう雰囲気になってくるんだよね。

エリイ ギャラリーで展覧会をすると取り分が半分だから、落札価格の50パーセントがChim↑Pomの取り分で、その全額をお米に換えたりしてカンボジアに配ったね。

卯城 僕らには1銭も残らないどころか、みんな借金みたいな感じ。

エリイ 爆破した財布を美術館に展示するときに開けてみたら、ATMの利用明細書が残ってて、残高が500円以下だった(笑)。

地域を巻き込み、協力を募ってプロジェクトを実現させていく。

卯城 次は広島。2008年の作品「ピカッ」が大問題になって、謝罪会見で被爆者団体の人たちに出会ったんです。その後、実は彼らがこのプロジェクトに興味津々だということがわかって、その対話から『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』という本を出版したりもしました。その後は広島の展覧会をシリーズ展開していって、2013年にはシリーズ5番目の「広島!!!!!」展を広島の旧日本銀行広島支店という建物で開催することになったんです。

エリイ 戦前からある建物で、原爆にも耐えたんだよね。

卯城 展示規模が大きかったから、かかるお金もでかかった。そこで「原爆の残り火」で描いたバーンドローイングをたくさんつくって。

エリイ 原爆投下後に燃えていた火をある男性が絶やさず持っていて、その火でつくった作品を、お好み焼き屋さんとか植物屋さんとか、広島の人たちが協力して展示してくれたんだよね。

卯城 「広島展の準備展」として名乗り出てくれた市内9ヶ所のギャラリーやお店で一斉に展示販売して、そのお金で展覧会をやろうという趣旨。

エリイ すごくいい展示だった。1週間ちょっとという、すごく短かい期間だったけど。

卯城 エントランスには協力してくれた人の名前を手書きで書いて、みんなが買ってくれた作品をもう一度集めたり。

エリイ 世界中から広島に送られてきて保管に困っていた大量の折り鶴で、広島の女の子たちと一緒にでかいピラミッドをつくったり。

卯城 広島での活動でいったら、「ピカッ」以前からずっと協力してくれたビッグコレクターがいたことも大きかった。彼はライアン・ガンダーのコレクションとかいっぱい持ってて、ものすごく感動したね。

エリイ あの人、もはや現代美術じゃなくてワインや骨董みたいなのを集めることに夢中だったし、日銀の展覧会の時は協力してくれなかったよ。

卯城 昔は協力してくれたんだよ(笑)。あと、そのひとつ前の「広島!!!!」展は、広島市内ではなくて原爆の図丸木美術館での展示だったんだけど、あの時もやっぱり予算がなくて。そこでChim↑Pomの水野俊紀が原発の作業員として福島第一原発に働きに行って、そのお金を製作費に充てた。「サポーテッドby東京電力」ってことですね(笑)。

エリイ ちなみに水野くんは、広島の展覧会で折り鶴を運んでくれた運送屋の娘さんと結婚しました(笑)。

クラウドファウンディングに頼らない、独自の資金調達方法を模索。

卯城 これは「Don't Follow the Wind」という、東京電力福島第一原発の事故によってできた、福島県内の帰還困難区域内に国際展をつくるプロジェクト。立ち入り制限が解除されたら観に行くことができるんだけど、割とハードコアなアートワールドにおいては世界的な話題にはなった。さっき言ったアイ・ウェイウェイとか、トレヴァー・パグレンとか、いろんなアーティストがこの展覧会のために新作をつくって、それを日本で組織された実行委員会が区域内にインストールしました。

エリイ 海外の友だちに声をかけてキュレーターとして作家や作品を選んでもらったりしたんだけど、キュレーターは何度も外国から来て滞在しなきゃいけない。

卯城 国際展だしお金がすごくかかる。とはいえ、クラウドファンディングはどうなんだろうとも思って。

エリイ ネットで何人集まったらいくらみたいなの、ダサいよね。

卯城 ネタバレになるし、社会性を謳ったポジティブな内容じゃないとお金が集まらないしね。

エリイ ポジティブというか、うさんくさい感じがするし、いい人ぶってる。それで、いつも作品を買ってくれる人やアート好きと言っている人とかに声をかけたんだけど、充分には協力してくれない。結局何もしないのに思わせぶりな態度をして、気を引かせるだけの人は許さない。

卯城 展示会場がまだ決まっていない段階では、地元の人が必要としていないような空き物件を美術館として会場にしてオーナーを集められないかとか、パッケージもいっぱいつくったんですよ。とはいえ地元の方々に出会う中で、その人たちの思い入れが詰まった物件でやることの意味の方が比較にならないほど大きいとも気づいて、さてどうやってお金をつくろうかと。

エリイ ほかにも30万円で版画を買いませんかとか、ささやかなのもやったのにね。

卯城 いつも支えてくれている人たちは協力してくれたけど、少数だし必要な資金には遠く及ばなかった。

エリイ 最終的に、当時アートに興味を持ちはじめていた私の金持ちの友だちに電話してChim↑Pomの作品を買ってもらって、その全額を私たちがドネーション(寄付)する形に。

卯城 そう。結局、初期費用が1,500万円くらいかかったんだけど、そのほとんどはウチらが作品を売るってことでまかなった。歌舞伎町でやった展覧会「また明日も観てくれるかな?」も、結局Chim↑Pomが全額自腹を切ってるしね。

エリイ 「また明日も観てくれるかな?」では、私が7年ぐらい貯めた"Chim↑Pom貯金"を使ったんです。よく知らないおじさんとかに「作品、買いませんか」って言いに行くの、すごい嫌だなと思って。

卯城 このときは入場料をもらったから、最終的にはOKだったけどね。

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