PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07「六本木未来大学」第16回「中村勇吾さん、 デジタル世代のクラフツマンシップって何ですか?」講義レポート【後編】

project_07_32_main2.jpg

画面の周りのものをデザインすることで可能性は広がる。

中村さん自身が、今後クリエイションにおいて、どんなところに可能性を感じているのかも気になるところ。画面の外にはみ出していくようなものづくりの思考、「クラフツマンシップ」は、橋梁設計会社で働いた経験のある中村さんだからこそ、と言えるもしれません。

「僕は"もの回帰"みたいな気持ちが、結構あるんですよね。先ほど枠を消したい気持ちへのアプローチとしてお話した、"画面内世界を現実世界になじませる"という考えとつながるのですが、画面とモノの関係を見直すことで、もう少し意味のあることができるのではないかという気持ちはあります。僕はプロダクトをデザインする人でも、空間や建築をつくる人間でもないんですけど、そこに可能性は感じるな、と。世の中に画面や情報が増え、あふれてきていることは事実。現実に映像を重ねて非日常化してびっくりさせるという方向だけではなく、映像デザイナーやインタラクティブデザイナーの文脈でできることとして、現実のマテリアルからどう地続き化させていくかは、考えるべき課題だと思っています」

マテリアルから考えるものづくりのアイデアは、違った分野のクリエイターの活動から影響を受けることもあるようです。

「たとえば、僕も一緒に仕事をさせていただいたことがある、グラフィックデザイナーの廣村正彰さん。サインデザインで特に著名な方ですが、デジタルのサインなんかもつくっていらっしゃるんです。同じプロジェクトに関わらせていただいたとき、廣村さんが画面周辺のモノのマテリアル感をすごく繊細に捉えられていたのが印象に残っていて。たとえばシンプルなものだとLEDの面にくもりガラスやアクリルの層なんかの物理的なフィルターをかませて、見えづらさや存在感を検討する、みたいなことをされていたのがすごく新鮮でした。建築なり、空間なりのプロダクトのいち素材として、マテリアルとして画面をどう使いこなすか。そこを考えていくと、いろんな可能性があるんじゃないかなと思っています」

【クリエイティブディレクションのルール#5】
マテリアルとして画面をどう使いこなすかを考える

_D1T8369.jpg

自分のなかにある、昔ながらのデザイナーマインド。

これからのテーマのひとつでもある、現実世界と画面内世界の地続き化という点においては、VRやARといったジャンルも避けては通れない道。中村さんのなかでは、どういった位置づけなのでしょうか。

「VRは単純にすごく好きで自分の守備範囲だとも思っていますし、いろいろなトライはしています。ただ、ミックス系、AR系になると、どうしても現実世界との兼ね合いが出てくるので、美意識を見出しづらいという気持ちがあるのもたしか。いや、ミックスド・リアリティとかのデモを見るのは、すごく好きなんですよ。でも、入り込めなさを感じてしまうことがあって。わかりやすく言うと、現実の机からちょこんと人形が出てきて、その人形はとてもよく出てきているんだけど、なんか机が汚いなっていう(笑)。たぶん、画面の中の世界を全部占めたい、完全にコントロールしたいというような思いがあるんだと思います。グラフィックデザインなら、一枚の紙面すべてを自分でコントロールしたいみたいな。そういう昔ながらのデザイナーマインドが僕のなかにはあって、それがある種の限界になっているのかもしれません」

また、ARには「枠組みや制約がないことに不安を感じる」とも言います。

「人間って制約があってこそ、考えや思いを集中させることができると思うので、ARやMR的なものって自由すぎてなかなか捉えどころがないな、みたいな気持ちもあって。世界中でいろんな人がポンポンと散発的におもしろいものをつくって、結果いろいろとおもしろかったね、で終わってしまったら、結局どうなんだろうって思う部分もあります。今までこんなに自由度があるものってなかなかなかったので、自分が取り入れることを考えにくいというのが正直なところではあります」

決められた制約があるから、そのなかで生まれるものがある。

ここで出てきた"制約"という言葉は、中村さんがディレクションにおいて大切にしていることでもあります。

「"Art is limitation, the essence of every picture is the frame."という言葉があるのですが、絵画は額縁という制約があるから、四角のキャンバスのなかでどう表現するかと考えるわけじゃないですか。そして、遠近法が生まれ、運ぶ、買う、飾るといった文化が生まれたんだと思うんです。そうやっていい枠組み、制約をいかにつくるかが最大の創造性であり、ディレクションにおいていちばん大事なことじゃないかな、と。ここ7、8年、自分でつくるだけでなく、ディレクションをする機会も増えてきたのですが、"アートディレクションって何なの?"と結局よくわからないまま、やっていた気がするんですね。最近になって、大切なのはいかにいい制約をつくるかだということが、わかってきたところなんです」

その実体験のひとつが、多摩美術大学で担当しているゼミで行った課題。

「課題の自由度をやたらと上げると、やっぱり発散して結果ボロボロになっちゃうんです。ちょっとだけ不自由だけど、この枠のなかでいろいろ考えられるなと可能性が広がる、そういう枠組みをつくることがいちばん大事なのかな、と。僕のなかでの"デジタル時代のクラフツマンシップって何ですか?"という問いに対する答えは、"時代に合った制約をつくること"になると思います」

【クリエイティブディレクションのルール#6】
不自由だけど可能性が広がる"いい制約"をつくる

前編はこちら

【information】

「中村勇吾さんの講義を復習してみよう」
六本木未来大学アフタークラス
【講師】横石崇(「TOKYO WORK DESIGN WEEK」発起人/オーガナイザー。&Co.Ltd代表取締役)
【開催日】2018年3月14日(水)
【時間】19:00〜21:00(予定)
【参加費】2,000円 
【受付】お申し込みはこちらから ※外部サイトへリンクします
【場所】東京ミッドタウン・デザインハブ(ミッドタウン・タワー5F/東京都港区赤坂9-7-1)


>六本木未来大学特設ページはこちら