PROJECT REPORT インタビューで得たクリエイターのアイデアを、リアルな場で実現する「アイデア実現プロジェクト」

六本木未来会議アイデア実現プロジェクト#07「六本木未来大学」第16回「中村勇吾さん、 デジタル世代のクラフツマンシップって何ですか?」講義レポート【前編】

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スキュアモーフィックデザインからフラットデザインへ

ここからは少し視点を変えて、パソコン、スマートフォンの話へ。UIにおける質感表現を通して、デジタル時代が向かおうとしている、今が透けて見えてきます。

「たとえば、MacintoshのOSは画面全体に"デスクトップ"と呼ばれる世界があって、ゴミ箱だとか、フォルダーだとかに見立てたアイコン状のオブジェクトがありますよね。ひと昔前のiBookアプリだと、これでもか、というくらい木目や陰影をつけたブックシェルフに本が並んでいたり。こういったリアリスティックな表現を多用したデザインスタイルは、その筋では"スキュアモーフィックデザイン"とか呼ばれますが、なぜ、Appleはそこをあんなにがんばってやっていたのか。それは単純に、ユーザーにOS画面の中の現実感をより生き生きと感じてほしいと思っていたんじゃないかと思うんです。そうすることで、"デスクトップ"というメタファーをより直感的に理解し、操作の手がかりを掴みやすくさせる。つまり、コンピューターの内部、という馴染みのないものの外観を、無理やり馴染みのあるものになぞらえて理解を促進する、ということなんですね」

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ただ、スマートフォンが主流になって以降、UIのデザインスタイルの流れは変化。インターフェイスの各要素を現実の事物に似せて装飾する「スキュアモーフィックデザイン」から、単純に平坦な面として表現する「フラットデザイン」へと、グラフィックスタイルは移行していったと言います。

「ここで大切なのは、単なるグラフィックスタイルだけの話ではなく、そもそもの"画面"の捉え方自体が変わったのではないか、ということなんです。スキュアモーフィックデザインの頃は"画面というのは現実とは隔離された別世界ですよ"という見立てだったと思うんですけど、フラットデザインは"画面は実際に僕がいるこの世界と地続きの世界、あるいは画面がのっかっているプロダクトと連続したサーフェス(面)ですよ"という見立てになっている。ガラスや鉄のサーフェスと違って、"スクリーン"という新しい素材、アップデータブルな表皮です、という捉え方ですね。全体の面の一部、プロダクトのなかで連続した一部分 ──つまり、現実世界と画面内世界の連続性が意識され始めたことが、フラットデザインというグラフィックスタイルと関係しているのではないかと思います」

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世界に広がっているのは"枠を消したい"気持ち。

その流れを中村さんは、「現実世界と画面内世界を区切る、枠を消していきたい気持ち」と表現します。

「今、その"枠を消したい"みたいな気持ちが、いろんな分野でシンクロしていますよね。プロダクトデザインとしては、iPhone Xなんかがそうです。スマートフォンはもう"画面という物質"にしたいので、できるだけ画面周囲のベゼルはないほうがいい、あるとしてもプロダクト形態と連続性があるように同じ幅で統一したいというような考え方になっていると思います」

パソコン、スマートフォンだけでなく、プロジェクションマッピングやミックスド・リアリティが支持されるようになったのも、"枠を消したい気持ち"のひとつだと言います。

「プロジェクションマッピングの典型的なパターンとして、実際の建築物や空間のなかに現実ではあり得ない映像的な現象が重ねられる、というものがありますが、これも実世界と画面内世界をシームレスに接続したい気持ちの表れですよね。僕らが触っている机の手触り、ガラスの手触りとかっていう現実空間の質と、映像の中の仮想的な質がどんどんつながっていくというようなことが、いろんな分野で試されている。じゃあ、そのなかでどんな画面のデザインがあり得るか、というのが今のオンスクリーンメディアのお題です」

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現実世界と画面内世界のこれからの関係性。

現時点で、そのお題へのアプローチはふたつあると言います。ひとつは「現実世界のなかに、画面内世界を導入して、それを異化していく」こと。

「それこそ、プロジェクションマッピングなんかはわかりやすい例ですけど、現実空間に仮想のすごくフレキシブルな質みたいなものを重ね合わせて、見たことのない現象をつくっていくというアプローチ。ただ、その瞬間は"すげえ"とびっくりして、見ているほうも楽しいんですけど、"もうそろそろびっくりし疲れたよ"っていうのはあるかなと思っています」

そして、もうひとつのアプローチは「画面内空間を、現実の世界になじませていこう」という逆方向の発想。

「ひとつ目のアプローチとは違って、地味すぎてあまり目立たないのですが、現実と画面を地続き化させようという考え方。これまで"画面"は現実と遊離した特別な枠に収まっていたんですが、もっと画面と現実をシームレスにデザインしていこうということです。先にお話したフラットデザインもそうですし、最近だとスマートスピーカーもそう。たとえばAppleのHomePodなども、基本的にはプロダクトとして、いい感じのモノ感のあるデザインをしているんだけれども、ワンアクセント、デジタル的、画面的な要素が入っていますよね。アップデータブルな素材として、ディスプレイのようなものが使われていたりするじゃないですか。画面的な表皮が、プロダクトとすごくシームレスにデザインされている。そういうアプローチは、これからどんどん洗練されていくんだろうなと思います」

【クリエイティブディレクションのルール#3】
現実世界と画面内世界を隔てる枠を消す

後編はこちら

【information】

「中村勇吾さんの講義を復習してみよう」
六本木未来大学アフタークラス
【講師】横石崇(「TOKYO WORK DESIGN WEEK」発起人/オーガナイザー。&Co.Ltd代表取締役)
【開催日】2018年3月14日(水)
【時間】19:00〜21:00(予定)
【参加費】2,000円 
【受付】お申し込みはこちらから ※外部サイトへリンクします
【場所】東京ミッドタウン・デザインハブ(ミッドタウン・タワー5F/東京都港区赤坂9-7-1)


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