98 安藤北斗(we+ デザイナー)× 林登志也(we+ デザイナー)前編

安藤北斗(we+ デザイナー)× 林登志也(we+ デザイナー)_02

図面には描くことのできない領域に想像をめぐらす。

『Drift』 Drift

磁石の動きによって、砂鉄が時計の針と化す。砂という形の定まらないものが、規則的に時を刻むように変化し、「目置き」してしまう作品。2016年のミラノデザインウィーク期間中に発表。

安藤ほかの方々のつくり方はよくわからないのですが、図面を描いて、パースを描いて、プランをフィックスさせていくと、大体イメージ通りになると思うんです。だけど僕たちの場合、自然や現象などを相手にしているので、良くも悪くも図面で示すことのできない領域がすごく広いんです。

なので目の前にある実物と対峙して、いかにそれをディベロップさせていくかを考えなくちゃならないし、図面に描けない領域をどれくらい想像できるかは、やっぱり経験というかやってみるしかない。限りなく余白があるともいえますが、非効率かつ非合理的で、なかなかタフな作業であることは間違いありません。

制作過程は、かなりアナログですからね。実験をすると、インターンの学生に「子どもの頃に戻った気がします」って言われるくらい(笑)。

安藤完成した作品は、一見テクノロジカルかもしれないけれども、自分たちで手を動かして実験したことを、最終的にエンジニアリングに置き換えていく作業なので、そのテクノロジー自体も基本的には身体性の範囲を超えないんです。どちらかというと、マテリアルドリブンでものをつくっていたりするので。

素材と現象の関係性や、その変化に対する興味が出発点になることはよくあります。見えないものを可視化したいというよりは、素材の持っている動き方を魅力的な形ですくい取りたいんです。たとえば砂鉄を使った『Drift』という作品があるのですが、砂鉄がただゾワゾワと動いているだけだとそんなにおもしろくないけど、そこに時計という規則的な動きを与えてあげることで意味のある表現になる、みたいな。

身の回りにある素材をよく使うのですが、当たり前すぎて特に気にせず素通りしているものとか、実はおもしろい動きをするものにフォーカスして、作品にインストールしていくことが多いですね。

ミラノデザインウィークの期間中に連続出展することの意義。

『Peep』 peep

2018年のミラノデザインウィーク期間中に行われた「TOKYO MATERIAL BYPASS」で発表。メッシュ越しに見える異世界を体感するインスタレーション。医療用フィルターやシルクスクリーン印刷用の版などに使われる機能性メッシュ通して光や風景を見ることで、分光やモアレをつくり出す。
Photo: Masayuki Hayashi

安藤海外で展示すると、「日本的な作品だね」とよく言われます。ひとつの現象を最大限活用して、それ以外の要素を極力カットしているから、ある種、純粋に見えるんでしょうね。だけど僕たちとしては、現象がどうおもしろく見えるかっていうところにフォーカスしているので、日本っぽさは実はまったく意識していないんです。

最初に言われたときは、もっとTOKYOとかJAPANを意識したほうが海外の人にウケるのかな、みたいなよくない考えが芽生えましたけど(笑)。そんなことをしなくても、東京在住で活動しているがゆえに、無意識ににじみ出るものはあるでしょうし、作品に対する取り組み方で勝手にそっちの方向に行くのかな、と最近は思うようになりました。

ミラノデザインウィークの期間中、2014年から5年連続で展示していて、今年も『Peep』という作品を発表しました。海外のデザイン界隈でちょっとずつ認知度が上がってきている印象があります。日本と海外のシーンはやっぱり全然違うし、僕らとしても毎年参加することで定点観測ができて、今年はこれがきてるみたいなことを肌で感じられるのはいいことだと思いますね。

安藤僕も定点観測の意味合いは非常に大きいと思っていて、自分たちの作品がどういう理解をされているのか、客観視できるんですよね。もちろん日本で展示をしても何かしらのフィードバックはあるので、客観視できるんでしょうけど、海外だとフィードバックがわかりやすいこともあって、比較的高い解像度で定点観測ができる気がします。

いい悪いがはっきりしているし、出展者のバックグラウンドがどうであれ、いいものはいいときちんと判断してくれる。今自分たちが考えていることだったり、ステートメントを体現した作品が、見る人にどういうふうに届くのか、きちんと見定められるのがとても意味のあることなんです。

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安藤北斗 / デザイナー(we+)
1982年山形県生まれ。セントラルセントマーティンズ卒業。2013年にコンテンポラリーデザインスタジオwe+を共同設立。武蔵野美術大学非常勤講師。

林登志也 / デザイナー(we+)
1980年富山県生まれ。一橋大学卒業。2013年にコンテンポラリーデザインスタジオwe+を共同設立。

we+
林登志也と安藤北斗により、2013年に設立されたコンテンポラリーデザインスタジオ。プロダクト、インスタレーション、グラフィックなど、多岐にわたる領域のディレクションとデザインを行い、テクノロジーや特殊素材を活用した実験的なアプローチを追求している。国内外での作品発表のほか、Gallery S. Bensimon(パリ)やRossanna Orlandi(ミラノ)などのデザインギャラリーに所属。http://weplus.jp/