102 目[mé](現代芸術活動チーム)前編

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本当に通じ合っていなければ、目指す作品はできない。

南川普段の制作は、荒神がまずアイデアを出して、僕がそれについて何度も聞き直すんです。今回の作品だったら「景色に近づけない」という荒神の気づきを詳しく聞いていくと、「目をちぎって空中に投げて......」とかワケのわからない話が始まり、しまいにはだんだん腹が立ってくるんですけど(笑)。

荒神たまに結構キツめに質問してくるから私も若干イラッとしながら(笑)。でもダメだと思った時は、広い駐車場に無理やり連れて行って、コロコロ椅子の上に仰向けになってもらって「ほら、こうやってひっくり返って空を見てみなよ!」と言ったりして、何とか体で伝えようとしたり。周りからは変な人がいると思われるかもしれませんが(笑)。

南川そうやってアイデアをどんどん具体化してプランにしていき、制作統括の増井に伝えるわけです。すると増井が今度はかなり情熱を持ってサンプルをつくってくれて、ああでもないこうでもないとブラッシュアップしていく感じです。今回の作品は、かなりサンプルをつくっていましたね。

荒神なぜこれはイメージする海に見えないんだろうって、延々話し合ったりするんですけど、間違った判断をひとつしたら、すべてが違うものになってしまうので、どこを削ってどこを生かしたらいいのか、本当に通じ合っていないといけないんです。お互いにその確信を持てるまでは不安だったりもするんですけど、そこにヒントがあって、ある瞬間を境にうまくいっているところとそうでないところが、共通してわかるようになる。そうすると、途端にスムーズに進んでいったりしますね。

南川僕は今回の制作中、めっちゃおもしろく思えるときと、つまらなく思えるときがあって、同じものを見ていても移り変わるような、自分たちでも捉えきれないことを作品にしているんだと気がつくまでは、不安になるたびに「最初に言ってたことって、どういうことだっけ?」と荒神に確認していました。制作は10人くらいの仲間でやっていたんですけど、増井は制作チームの連携にかなり気を使っていましたね。また今回は平塚知仁という若手のアート・インストーラーに制作チーフを依頼したのですが、増井は彼の判断やセンスを最大限に活かせるような現場のチームワークを心がけていました。

ネガティブな感情はすべて吐き出すのが絶対のルール。

南川3人の間で共通認識を持つために、メンタルミーティングというのを月2回くらいでやっています。というのも、制作が佳境になってくるとメールの文面がそっけなくなったりして、受け取った側は「なんか悪いことしたかな......」などと無駄に不安になることが、6年一緒にやっていてもあるんです。そういうネガティブな感情を抱いたら、全部吐き出すっていうのを絶対のルールにしていて。いい歳こいて恥ずかしいんですけど、「あのときのメールって、どう思ってたん?」みたいなやり取りを、泣きながらやったりしているんですけど(笑)。でも最後は笑ってハイタッチできるくらいじゃないと、制作も関係性もどんどん狂っていくんです。

荒神本当にくだらないことでも、現場がつまらなくなったり進まなくなるんです。たとえば現場にゴミが溜まってきただけで、「この人って、ゴミに対して無意識なところがあるよなあ」とか、余計なことをあれこれ考えてしまったりして。だけど、かれこれ6年もモヤモヤ思っていることを伝え合ってると、大体が本人の思い込みだったり、勘違いだったということがわかってくるんです。

南川メンタルミーティングは、自分が小さい人間だってことがバレるし、何より恥ずかしいんですけど、良いものをつくるにはやっぱり不可欠ですね。単純に、思い切って打ち明けて心が通じることは、何よりも大事です(笑)。

荒神スケジュールに「メンタル」って入っていると、いまだに気が重いですけどね(笑)。

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南川憲二 / ディレクター(目[mé])
1979年大阪府生まれ。2009年、東京芸術大学大学院美術研究科修了。アート作品のアイデアを一般募集し、参加と実現に移す表現活動wah document(わうどきゅめんと)を立ち上げ、各地で活動を展開。

荒神明香 / アーティスト(目[mé])
1983年広島県生まれ。2009年、東京芸術大学大学院美術研究科修了。アメリカ、ブラジルなど、国内外で作品を発表。日常の風景から直感的に抽出した「異空間」を美術館等の展示空間内で現象として再構築するインスタレーション作品を展開。

目[mé]
アーティスト荒神明香、ディレクター南川憲二、インストーラー増井宏文を中心メンバーとする現代芸術活動チーム。2012年結成。果てしなく不確かな現実世界を、私たちの実感に引き寄せようとする作品を展開している。手法やジャンルにはこだわらず、展示空間や観客を含めた状況、導線を重視。個々の特徴を活かしたチーム・クリエイションに取り組み、発想、判断、実現における連携の精度や、精神的な創作意識の共有を高める関係を模索しながら活動している。