101 和田永(アーティスト / ミュージシャン)前編

和田永_02

人がつながり、電気がつながり、心をつなげるパフォーマンス。

エレクトロニコス・ファンタスティコス! エレクトロニコス・ファンタスティコス!

和田さんが中心となり、古い電化製品から新たな電子楽器を創作、量産し、奏法を編み出して、徐々にオーケストラを形づくっていくプロジェクト。通称"ニコス"。現在、東京・日立・京都の3か所を拠点に活動を続けている。普段は電気メーカーに勤めるエンジニアや、ミュージシャン、デザイナー、祭り好き音楽好きが集い、日々妄想や知恵や技術を交換しながらものづくりを続けている。『KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭』、東京タワーの真下で行われたニコスの祭典『本祭Ⅰ:家電雷鳴篇』など、さまざまな場でパフォーマンスを繰り広げている。
Photo by Mao Yamamoto

TOKYO MIDTOWN × ARS ELECTRONICA「未来の学校祭」 TOKYO MIDTOWN × ARS ELECTRONICA「未来の学校祭」

「アートやデザインを通じて、学校では教えてくれない未来のことを考える新しい場」をコンセプトにした新たなイベント。「アルスエレクトロニカ」との共同プロジェクトで、今回は2018年にオーストリア・リンツで開催された「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」の参加作品を紹介するほか、東京ミッドタウンを舞台に「ギリギリ」をテーマに展示、パフォーマンス、ワークショップ、トークの4つのプログラムを用意。
【日時】2019年2月21日(木)~2月24日(日)
【時間】11:00~21:00
【場所】東京ミッドタウン各所
http://www.tokyo-midtown.com/jp/event/school_future/

 2015年からはエンジニアをはじめ、たくさんの方々といっしょに電子楽器を創作して、合奏する「エレクトロニコス・ファンタスティコス!(以下、ニコス)」というプロジェクトをスタートさせました。2月21日から始まるTOKYO MIDTOWN × ARS ELECTRONICA「未来の学校祭」に、僕も参加させてもらうのですが、今回はその「ニコス」としてパフォーマンスします。

 「未来の学校祭」では、先ほどお話した『ブラウン管ガムラン』を使って、その場にいる人々とともに"通電の儀"を執り行いたいと考えています。"通電の儀"は、ブラウン管から拾った静電気を人が手をつなぐことで伝えて音を鳴らす創作セレモニーです。僕のライブから始まって、最後は会場全体を楽器にしていきたいなと。

 しかも、パフォーマンスをする東京ミッドタウンのアトリウムは吹き抜けになっているので、下の階と上の階を音のレイヤーに見立てていくのもいいかなって考えています。言うならば人がつながり、電気がつながり、心をつなげるパフォーマンス(笑)。そんな"通電の儀"が、未来の学校のギリギリな朝礼ということで!

 同時に、それが一種の踊りにもなるといいなとも思っているんです。踊りのなかに演奏を包括することは、僕自身常に探索していること。今回は"祭"という名のイベントなので、リンクするんじゃないかと思っています。

 祭と言っておきながら......最初は「ギリギリ」という今回のテーマのほうが目に飛び込んできました。でも、ギリギリというワードも僕のやっていることにつながるんです。役目を終えた家電をどこまで転生させられるか、極限までどう可能性を広げられるかに挑戦しています。それと「ニコス」は、さまざまな人を巻き込むことで生まれる偶発性を大事にしていますね。人と人との間でギリギリが共有されたとき、爆発力みたいなものが生まれる瞬間があるんですよね。

自分の体と音がつながる。その間に道具として存在する楽器。

 僕自身のギリギリは、またちょっと違う話になるかもしれない。そもそも常に綱渡りだし(笑)、つくったり演奏するときもギリギリにアイデアが浮かんで、直前までできることを模索しているし。あと、自分の体のギリギリに挑戦している感覚もありますね。僕たちは生身の人間がライブ演奏しているので、自分の体をどこまで音楽にしていけるかっていうことがやっぱり大事。

 そもそも楽器の真価って何かと考えたとき、音楽を奏でるという意味においては、今やすべてコンピューターで演奏しても成り立つんです。それこそ曲自体をどんどん機械が考える時代になっていくだろうし、リスナーとしてはどういう形であれ、極端に言えばいい曲が聴ければいいですよね。でも、プレイヤー側が本当に音楽を楽しもうと思ったら、自分の体と音がどうつながるかっていうことが楽器に希求される。テクノロジーが進歩する一方で、人が介入しなくなったらプレイヤー的に退屈になってしまうテクノロジーが楽器だとすると(笑)、機械と生身の人間のある種のせめぎ合いがここに宿っていますね。その実験と挑戦の対象が何で家電なんだっていう話ですけどね(笑)。ただ、僕は家電が現代における民族楽器になり得るとガチで確信しています!

 そういうギリギリのせめぎ合いも含め、「未来の学校祭」では実験的なことをしたいですね。もし......うまくいかなかったら、すみません!(笑) でも、何かしらおもしろい時間と空間が立ち現れるんじゃないかと、僕自身も楽しみにしています。

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和田永 / アーティスト/ミュージシャン
1987年生まれ。アーティスト/ミュージシャン。物心ついた頃に、ブラウン管テレビが埋め込まれた巨大な蟹の足の塔がそびえ立っている場所で、音楽の祭典が待っていると確信する。しかしある時、地球にはそんな場所はないと友人に教えられ、自分でつくるしかないと今に至る。オープンリール式テープレコーダーを楽器として演奏するバンド「Open Reel Ensemble」主宰。2015年よりあらゆる人々を巻き込みながら古い電化製品を電子楽器として蘇生させ合奏する祭典を目指すプロジェクト「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」を始動させて取り組む。