96 福原志保(バイオアーティスト)後編

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街なかの巨大オブジェの楽しみ方とは。

養老天命反転地 養老天命反転地

岐阜県養老町の養老公園内にあるテーマパーク。アーティストの荒川修作とそのパートナーで詩人のマドリン・ギンズによる構想を実現した、身体で体験できるアート作品。「極限で似るものの家」と「楕円形のフィールド」というふたつのメインパビリオンで構成され、起伏に富んだフィールドで身体を使いながらアートを楽しむことができる。
© 1997 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.

 六本木って、巨大なオブジェがポツンポツンとあったりするじゃないですか。オランダの空港とかでもよく見かけるので、エアポートアートって呼んでいるんですけど、突然「ぬん!」とデカイのが出現する滑稽さがあって、作家名を探してもよくわからない。いろんな意味で謎が多いんですけど、日本のは柵で囲ったりして、入れないようにしちゃっているものが多いですよね。ケガをしないようにとか、そういう理由なんでしょうけど、それこそ自己責任でいいのにって思うんです。夏に巨大なオブジェに触って、やけどしそうなくらいの熱さを感じることなんて、まさにサイエンスじゃないですか。

 岐阜に養老天命反転地っていうテーマパークがあるんですけど、作品を見るだけでなく、触れてみたりよじ登ったりして体感して楽しむから、ケガをすることだって普通に起こり得るんです。だけどみんなそれを承知で、自己責任で楽しんでいますよね。子どもが公園で遊ぶときだって、危険と隣り合わせのところで体感して、いろんなことを学んでいくわけじゃないですか。クリーンすぎる環境で子どもを育てたら免疫がつかないから、大人になって大ケガしちゃいますよね。

花粉症から見えてくる、土を増やすことの大切さ。

 バイオアートという視点で街を見ると、「都市とバイオ」というプロジェクトは結構あるんです。たとえば以前、永田町のビルの屋上で養蜂をしていましたけど、蜂はある程度の分布があるから、蜂に付着した花粉のバクテリアを採取して、街のバクテリアマップをつくるようなこともできるんですよね。バイオクラブには、自分たちでいろんなところからバクテリアを採取して、マップにしている人もいました。

 都会にもバイオアートの素材はたくさんあるのですが、東京はもうちょっと木が増えたほうがいいですよね。東京ってほかの世界的な都市と比べると、公園がものすごく少ないんです。だから空を見たいと思ったら、ビルの上に行くのが一番手っ取り早かったりする。ミッドタウン・ガーデンみたいにビルに囲まれているけど、空がスコンと抜けている場所は貴重ですよね。アートは集中して見ると疲れるから、こういうオアシスみたいな空間があるのはありがたいです。

 花粉アレルギーも、結局は同じ種類の木を植え過ぎたことの弊害ですよね。花粉を減らしたいから木を減らしたり、木のあるところに近づかないというのは、根本的な解決になりません。もっといろんな木を混ぜて植えるとか、飛散した花粉が吸着しないアスファルトではなく土を増やしたり、公園を増やすような発想の転換が必要なんじゃないかと思います。100年後、200年後に、人間が木に順応できなくなってしまってからでは遅すぎます。街をつくるという意味でもエコシステムをきちんと見直して、デザインしていきたいですよね。

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取材を終えて......
最近はパリと東京を行ったり来たりしているという福原さん。インタビューは、その過密なスケジュールの合間を縫って行われました。生命のあり方について考えるきっかけを与えてくれる作品の数々は、いつも素朴な疑問から生まれるそうで、「アイデアはプレッシャーがあったら出てこない」とのこと。それらをアートとして形にしていくまでの長い道のりで大事なのは、諦めないこと。さばさばとした語り口から、意志の強さが感じられました。(text_ikuko hyodo)

福原志保 / バイオアーティスト
アーティスト、研究者、開発者。2001年ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ卒業、2003年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート修了。2004年ゲオアグ・トレメルとアーティスティック・リサーチ・フレームワーク「bcl」を結成。以後、特にバイオテクノロジーの発展が与える社会へのインパクトや、水環境問題について焦点を当てている。また、それらにクリティカルに介し、閉ざされたテクノロジーを人々に開いていくことをミッションとしている。