95 藤本実(ライティング・コリオグラファー)前編

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『SAMURIZE from EXILE TRIBE』の光る衣装の生みの親であり、ウェアラブル・コンピューティングとダンスパフォーマンスを融合させた作品で注目される、藤本実さん。「世界の中で自分しか生み出せないものをつくりたい」と、さらりと言ってのける34歳のスーパークリエイターは、身体表現に光の要素を加えた「ライティング・コリオグラファー」という新たな表現の世界を切り拓いてきた。原点にあるものは何か、身体と光による表現の未来とは? そして、人々からLED博士と称される藤本さんが考える六本木を舞台にしたエンターテイメントのアイデアとは?

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update_2018.8.8 / photo_yoshikuni nakagawa / text_tami okano

ダンスへの憧れと衝撃、ダンサーとしての経験が原点。

 僕はいま34歳ですが、20年ほど前になるのかな、自分が思春期を迎えた頃に、ちょっとだけダンスが流行り始めたんです。関西でダンススタジオがひとつできたかどうかくらいだったのですがダンスを始めました。高校生になってから、生まれて初めてダンスバトルのイベントに行ったんですが、それがめちゃめちゃかっこよくて。衝撃的でした。

 会場に入った瞬間、爆音がドーンときて、真っ暗な空間のまん中でダンサーが向かい合い、戦いが繰り広げられているーーその光景はいまだに忘れられないし、野球観戦だったり音楽ライブだったり、それまでのどんな体験よりも強いインパクトがありました。そこから一気に、ストリートダンスの世界にのめり込んでいきました。テレビも一切見なくなったし、ダンスに集中したくて、大学に入ってからの4年間、ネットも解約していたくらいです。

 初めて見たダンスバトルの衝撃と、自らもダンスに夢中になった日々。それがあるから、今がある。テクノロジーを使ったパフォーマンスのシステムって開発者目線でつくられていることが多いんです。技術がどうすごいかを見せるためのデモンストレーションになってしまっている。「これ、動きを認識できるんです。すごいでしょ」みたいな。それは違うんじゃないか、という思いをずっと持っていて。僕は、パフォーマンスする側が「こうありたい」とか「こんなことをしたい」と思っているものを具現化する、演者目線からシステムをつくりたい。最初からその思いが強かったです。

自分がつくる意味、自分しか世界に生み出せないものは何か。

「アルスエレクトロニカ」 アルスエレクトロニカ

2010年のアルスエレクトロニカで、藤本さんは、現在のライティング・コリオグラファーの原型となる、音楽に合わせた光の制御パターンの編集を簡単に行えるアプリケーションを用いたダンスパフォーマンスを披露した。

 8年前に初めて「アルスエレクトロニカ」で作品を発表したときは、ひとりのパフォーマーにLEDを200個付けるのが限界でした。それが今では1着に9,000個付いています。デバイスの大きさも性能もどんどん進化して、リアルタイムで無線制御できる数が50倍近くに増えました。

 それは明らかに技術の進歩ではあるけれど、LEDの"数"は、本質的なところではなくて対パフォーマーへの光の演出の幅が広がったということが重要なんです。ただし、どんなにすばらしい技術でも、ダンスが格好良く見えないのなら、やらないって決めています。それが僕の信条であり、美学。目新しかろうが、画期的だろうが、人の動きに制約を与えるのであれば、使わない。

 僕は、天才技術者なんかじゃない分、「自分がつくる意味」というのをずっと考えながらやっているんですね。これは世界で自分にしか生み出せないだろうな、というものをつくっていきたい。ただ単に「光る服」をまとうのではなく、光らせることでパフォーマンスの可能性を広げる。光と音と動きをすべてシンクロさせた「ライティング・コリオグラファー」という新しいダンスジャンルが当たり前の存在になることです。この「ライティング・コリオグラファー」という言葉自体も、自分でつくった造語で、その発想自体が新しかったと思うし、そのために必要なハードウェアもソフトウェアもすべて開発してきた。プログラムも書き、演出もする。それは、僕にしかできなかったことだ、という自負があります。