93 鬼頭健吾(現代アーティスト)前編

鬼頭健吾_メイン画像

六本木が見る夢を描いた『hanging colors』、『broken flowers』。

「六本木アートナイト 2018」 六本木アートナイト

2009年にスタートした一夜限りのアートの饗宴「六本木アートナイト」。今年のテーマは、「街はアートの夢を見る」。金氏徹平、鬼頭健吾、宇治野宗輝の3名がメインアーティストとして参加し、六本木エリアで横断的にインスタレーションやパフォーマンスを展開した。生活の中でアートを楽しむという新しいライフスタイルの提案と、大都市東京における街づくりの先駆的なモデル創出を目的に毎年行われてきた六本木アートナイトは、東京を代表するアートの祭典として成長を遂げている。
会期:2018年5月26日(土)~27日(日)
場所:六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース

『hanging colors』『broken flowers』 hanging colors
© 撮影 木暮真也

国立新美術館で展示された鬼頭さんの作品。カラフルな布の滝『hanging colors』は、黒川紀章氏設計による美術館のガラスのファザードをカラフルな布ですべて覆った作品。普段は見えるようで見えなかったファザードの形状が見え、日中は外光がその布を通して美術館内部にカラフルな夢を投影した。
『broken flowers』は、国立新美術館の正面玄関前に鏡を敷き詰め、花畑の映像を4台のプロジェクターを使って投影した作品。花畑の映像は、美術館の屋根の上に反射することで水玉模様のように分解され、花畑は最終的に色として認識されるだけに変換していくようにした。

 幻想や夢と言えば、『街はアートの夢を見る』が今年のテーマとなった「六本木アートナイト 2018」に、メインアーティストとして僕も参加しました。アートナイトはひと晩限りのもの。そのことを前提としつつ僕自身、夢とは何かを問いながら、最終的には『hanging colors』『broken flowers』の2作品を国立新美術館で発表しました。ガラスのファサードに引っ掛けたりはずしたり、一瞬の行為で完結するカラフルな布。そしてスイッチを切ると、跡形もなく消えてしまう映像――『hanging colors』と『broken flowers』、それぞれの作品に利用した道具そのものにも、夢の儚さを重ね合わせています。

 ちなみに『broken flowers』の最初のイメージは「幽霊」なんです。大学(京都造形芸術大学)の教え子が女の人の幽霊を見たと僕に報告してくれたことがきっかけで、そもそも幽霊とは一体なんだろう? とか、あれは人間のコピーなのか? もしも鏡に映った自分の鏡像がイメージとして具現化するなら、そのとき内臓はあるんだろうか? といろいろ考え、それを花に例えて『broken flowers』をつくったのです。

 六本木アートナイトはお祭りのようなものですね。ある種の徒労感とともに一瞬で終わってしまいましたが(笑)、それが六本木アートナイトの醍醐味だと実感しました。

アートを通じて街の見方が変わる。

 よく取材などで、「土地性や場所性はどのように作品に影響しますか?」と聞かれることがあります。そのような質問が多いのは、生まれは名古屋で、大学進学を機に京都へ出て、その後ニューヨーク、ベルリンで過ごし、東京での短期間の生活を経て、現在は群馬県高崎市に住んでいるという僕の経歴もあるのだと思うのですが、近年、国内外で地域資源を活用した芸術祭が増えていることも理由のひとつだと思います。でも実は僕自身は、土地性や場所性を意識しながら作品をつくることはあまりありません。

 例えば今回参加した六本木アートナイト。まさに六本木という土地を活かした芸術祭ですが、僕の場合、土地からインスピレーションを受けて作品をつくるというよりも、自分の作品を通して鑑賞者の六本木という街への見方、意識が変わること、そうなれる作品をつくることのほうに視点が向いています。

 もちろん土地と親和性がある作品の展開もおもしろいと思います。でもこの作品によって、街がこう見える。そんな作品がもっと増えていったら、よりおもしろい街に発展するのではないか。"僕の作品で街が変わる"。僕自身はそちらの方に興味があるんです。

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鬼頭健吾 / 現代アーティスト
1977年愛知県生まれ、群馬県高崎市在住。2003年、京都市立芸術大学大学院美術研究科油画専攻修了、京都造形芸術大学准教授。1999年、アーティストによる自主運営スペース「アートスペースdot」の設立、運営に参加するなど名古屋芸術大学在学中から作家活動を開始。「Migration 回遊」(群馬県立近代美術館、2015)、「鬼頭健吾Multiple Star」(ハラ ミュージアム アーク、2017)など個展を開催。フラフープ、糸、鏡など、日常的な既製品を用いて、インスタレーション、平面、立体、映像など多様なメディアで表現している。