91 小林武史(音楽家&音楽プロデューサー)後編

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音楽人として、越境していく。

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2009年にスタートした、六本木の街を舞台にした一夜限りのアートの饗宴。六本木の街に、アート作品のみならず、音楽、映像、パフォーマンスなどを含む多様な作品を点在させ、六本木エリア全体を多様なアートで埋め尽くし、非日常的な体験をつくり出し、また生活の中でアートを楽しむという新しいライフスタイルを提案している。2018年は、5月26日(土)から5月27日(日)にかけてオールナイトで開催。「街はアートの夢を見る」をテーマに、街のあちこちにインスタレーションやパフォーマンスが登場する。
http://www.roppongiartnight.com/

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6年ぶりに、原点回帰となる静岡県掛川市・つま恋にて開催される「ap bank fes '18」。7月14日(土)前日祭も含め、15日(日)・16日(月・祝)の3日間の開催が決定した。第1弾出演アーティストは、Bank BandとMr.Children。サステナブルな未来への想いや食・エネルギー・アートなど、さまざまな実感や気づきと出会えるフェスを目指す。

 このJRの「INSIDE OUT」プロジェクトを、六本木で行ったらどうなるでしょう。例えば「六本木アートナイト」の参加者のポートレートを撮影し、六本木の街にペイスティングするアートプロジェクトを「Reborn-Art Festival」とのコラボレーションで試みてみる。東京を代表する都市に感じたことのない生命感が生まれて、何か都市の見方が変わる体験になったり、気づきにつながったりしていく。そんな媒介になればいいと思っています。

 つながりといえば、今年7月、静岡の掛川で6年ぶりに「ap bank fes」をやります。「Reborn-Art Festival」をきっかけにずっと東北に通っていたでしょう。そこで培ったつながりをどう生かしていけるのか。それをずっと考え続けていたなかで、原点回帰として「ap bank fes」をやろうと決めました。地理的に静岡は日本のちょうどまん中でもあるから、ここから新しいつながりを生み出せたらという願いも込めて。

 音楽でも芸術祭でも、安直に感動を求めて何かをつくることは非常に難しいです。言い換えるとそれは人間の自意識の扱い方でもあって、理想とするのは、自意識からどれだけ解き放たれて、"自然"という名の"必然"に向かっていけるかです。それは美しい建築が自然を模倣するかのごとく。何か楽しいときは、無意識に鼻歌を歌ったりするでしょう。あの感覚です。

 誰かと何かが、誰かと誰かが、きちんと出会えるように。そしてそこで何かを生み出せるように。僕自身はこれからも触媒となっていきたいです。もちろんそれは「音楽人」として。作曲家のことをコンポーザー(composer)と言いますが、そもそもコンポーズとは、集められた素材を構成することですから。並べ替えたり、置き換えたり、つなげたり。ずっと音楽でやってきたことを、他のフィールドでもやっていく。そうやって越境していくことで見えるものがあるし、まさにそれが多様性でもあって、これからの時代、必要なことだと信じています。

(撮影場所:ビルボードライブ東京)





取材を終えて......
「アートの語源はラテン語のArs。"人が生きる術"を指します」と、小林さんはおっしゃっていましたが、まさにアートとは美術館のガラス越しに観るものだけではなく、本質的にはひとりひとりの内側に備わっているもの。その内側に揺さぶりをかけるきっかけを、小林さんはさまざまな活動を通して生み出しているのだと、取材をしながら実感しました。 (text_nanae mizushima)

小林武史 / 音楽家&音楽プロデューサー
山形県新庄市生まれ。5歳でピアノを始め、20歳頃からスタジオミュージシャンとして活動を始める。1980年代から日本を代表する数多くのアーティストのプロデュースを手掛け、1990年代以降になると、映画と音楽の独創的コラボレーションで知られる『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』など、ジャンルを越えた活動を展開。2003年には「ap bank」を立ち上げる。自然エネルギーや食の循環、東日本大震災の復興支援など、様々な活動を行うなかで、2017年には復興支援の取り組みとして、宮城県石巻・牡鹿半島を中心とした「Reborn-Art Festival 2017」を開催。述べ51日間行い、大盛況のうちに終了した。2018年4月4日に、東京メトロのCM楽曲を中心に収録したワークスアルバム『Takeshi Kobayashi meets Very Special Music Bloods』をリリースしたばかり。