89 丸山敬太(ファッションデザイナー)後編

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若い世代が元気な上海から学べること。

上海ディズニーランド

2016年6月16日に上海市浦東新区に開園。アジアでは3番目となるディズニーランドで、約400haの敷地面積は米国外では最大の規模。高さ約60mのメインキャッスル「Enchanted Storybook Castle(魔法にかかったおとぎの城)」は、すべてのディズニープリンセスの象徴となっている。

Alipay / WeChat Pay

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アリババグループが提供する、中国国内での普及率が高いオンライン決済サービス「支付宝(アリペイ)」。日本では2017年1月にローソンでサービスを開始している。「微信支付(ウィーチャットペイメント)」は、中国版LINEといわれるWeChat内で提供されているオンライン決済サービス。中国国内で40%ほどの市場シェアを占める。

 最近上海に行って、よくも悪くも衝撃を受けたんです。こういう言い方をすると誤解を生むかもしれないけれども、弱者を切り捨てていく感じがすごいというか。日本はどうしても、そんなことをしたらお年寄りはわからなくなってしまうみたいな考えが先に働くけれども、上海の場合は直轄市であることも関係しているのか、国をあげて最先端を行こうとしている印象を受けました。たとえば上海ディズニーランドに行ったんですけど、アプリをダウンロードできないと、ファストパスの予約すらできないし、街で買い物をするときも、AlipayやWeChat Payがないと何もできない。現金だったら買ってもらわなくてもいいですよ、くらいの勢いなんです。なんでもかんでもQRコードが必要で、電気がなくなったらどうするんだろうって思ってしまうし、その仕組みから振り落とされてしまう人たちも当然出てくるんだけど、がんばってついてこられる人だけが便利に暮らせるような社会になっているんです。

 歪みが生じて、そのうちどこかでポキッと折れてしまうこともあり得るだろうし、こういうやり方に共感できるかって言われると考えてしまうところはあるけれど、時と場合によっては効果的なやり方なのかもしれない、とは思いました。なぜかというと、若い子たちにチャンスが与えられて、夢を見ることができる社会なんです。20代の起業家は日本にももちろんたくさんいますけど、上海は日本以上に若い子が元気で、自分たちでバリバリやっていける環境がある。しかもIT的な進化は若い世代のほうが早いから、彼らのほうが圧倒的にグローバルに仕事を展開できるんですよね。

世代間の融合が街を活性化させる。

 僕なんかは、ディズニーランドでもおぼつかないくらいだから、そんなやり方は無理だと思ってしまうけど、若い子を取り込んじゃえばいいんですよね。彼らに媚びるのではなく、自分たちもおもしろがれるものを教えてもらえばいい。僕らは反対にアナログのいい時代を知っているから、若い子にアナログのすばらしさを見せてあげると尊敬してくれるんですよ。「すっげー、こんなことも手でできるんだ!」みたいにね(笑)。こんなふうに世代間の融合がこの先うまくできるようになるといいですよね。デジタルであることが新しい時代はすでに終わって、デジタルは単なるツールやスキルでしかなくなってしまった今、結局問われてくるのはセンスだったり感性だったりするんですよね。これからは人間力の戦いになることは、間違いないですよ。

 人間力を磨くには、自分の頭で考えることに尽きると思っています。今は考えようとしない人が、本当に増えてしまっているじゃないですか。たとえば単純なことなんだけど、テレビのクイズ番組を漫然と見て答えを聞くのと、自分も一緒に考えてから答えを知るのとでは、記憶への刻まれ方が違うと思うんです。間違えて恥ずかしい思いをしたことは知識になるけれど、受け身で見ているだけだと全部流れていってしまうから。

 同じようにオタクの人たちがすばらしいのは、好きだという思いから生まれる探究心。だからほかとは代えがたい、唯一無二のすばらしいものを生んだりするわけじゃないですか。これからはオタクの時代だと思いますよ。いろんなことを多角的にマネージメントできる人と、探究心に優れているオタクの人が一緒に何かをやっていくと、この国も街も活性化していく気がします。

 安定の時代はもう終わったのだから、受験や就職の仕組みも変わらないと。だって、普段着ないような変なスーツ着て、変なパンプスはいて、変なカバン持って、就職活動をすることのまやかしは、誰もがわかっているわけじゃないですか。それなのに、企業側は個性的な人間がほしいとか言っちゃうわけで......。その歪みを早くどうにかして、若い子たちが呪縛から逃れられるようにしてあげないと。

(撮影場所:アマンド六本木店)

取材を終えて......
街は人生の教室。六本木に憧れて、背伸びをして通った日々の話を聞き、そんな言葉が思い浮かびました。多感な時期の経験は、その後の人生に多大な影響を与えているはずです。「ミーハーであることは、自分の性みたいなもの」という丸山さん。ファッションデザイナーという職業でなくても、ミーハーな心を持ち続け、世の中の流れに敏感であることの大切さを感じるとともに、六本木という街が常にそれに応えていくためには、ということを考えさせられるインタビューでした。 (text_ikuko hyodo)

丸山敬太 / ファッションデザイナー
東京生まれ、文化服装学園卒。1994年にコレクションデビュー。世界の舞台でコレクションを発表。 『晴れの日に着る服・心を満たす服』をコンセプトに展開するブランド、KEITAMARUYAMA デザイナー。 その他、ミュージシャン、俳優、舞台の衣装制作を始め、 ライセンスや各方面のブランドコラボレーション、 イベントのディレクションなど、幅広い分野で活動。近年では日本航空(機内・地上・さくらラウンジ)の制服を手がける。2014年にはブランド 20 周年を迎え、『丸山景観』を出版。2016年9月、青山本店をコンセプトストア『丸山邸』としてリニューアルオープン。 丸山の選択眼により新旧問わずセレクトされた商品群が並び 衣食住に纏わる時々のテーマにより随時イベントを催している。
公式HP http://www.keitamaruyama.com/