86 伊藤直樹(PARTY クリエイティブディレクター)後編

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東京の魅力は"カオスさ"、その中心にクリエイティブな六本木があるべき。

シネ・ヴィヴァン六本木

東京都港区六本木の商業ビル、六本木WAVEの地下にあった映画館。1983年、同ビル開業と同時にオープン。日本のミニシアターの草分け的存在で、ゴダール、ロメールなどヨーロッパを中心とするアートシネマ作品を数多く上映。1999年閉館。80年代~90年代、最先端の文化を好む若い客層を惹きつけた。

移動をデザインすることで街を楽しむのもそうですが、街にも移動を豊かにする仕掛けを付与すれば、もっと都市が魅力的になると思います。そのひとつの手段が、クリエイティブ特区宣言をすること。六本木にはその可能性があります。

過去にも、六本木をクリエイティブ特区にしようという動きは何度かありました。ただ、特区にするには行政との連携が必要不可欠。行政は景気の向上など、何らかのエビデンスがあれば動いてくれますが、これまではクリエイティブが経済に直結することを、誰も証明できなかった。そのため厳しい規制をくぐり抜けることができず、クリエイティブなアイデアがなかなか実現しなかった。

それでもよくよく考えてみれば、東京の魅力は「カオティックなところ」だと思うんです。戦後、焼け野原だった場所にビルが乱立している光景がその証拠。地域によって景色がガラリと変わる、この混沌としたところが東京らしさです。青山ブックセンターやシネ・ヴィヴァン六本木を中心としたカルチャーの拠点だった六本木も、クラブが乱立して、夜はネオン街へと様相を変えていますよね。

六本木に限ってドローンを飛ばせるようにしてもいいし、広告の規制を一時的に緩和してもいい。そうやってアートやデザイン専用の景観ルールをつくれば、東京ミッドタウンでも「BIG SHADOW PROJECT」のようなプロジェクトができます。

これからの東京は「なんでもいいぞ」ってくらいのスタンスで、新宿ゴールデン街が肥大化したような状態になれば、もっとも輝きを放つのではないでしょうか。その中心にあるのは、東京で最もクリエイティブな都市、六本木だと思います。

取材を終えて......
葉っぱを、茎を。強く、優しく「ふれる」。そのやり方ひとつで野菜が違う表情を見せてくれるーー「キャッチボール」を例に、その本質を説いてくれた伊藤さんのインタラクティブ観がそのまま詰め込まれたかのような展示「でじべじ」。「(GPSの発達により)都市に点在する木のようなものまでデータ化されるのではないか」といった未来予測がインタビューでは飛び出しました。都市とメディアの融合、六本木発の「でじべじ」がその種に他ならないのかもしれません。(text_ryoh hasegawa)

>前編はこちら



伊藤直樹 / PARTY クリエイティブディレクター
71年静岡県生まれ。早稲田大学卒業。テクノロジーとストーリーテリングの融合を追求するクリエイター集団「PARTY」の CEO。これまでに Nike 、Google、Sony、無印良品など企業のクリエイティブディレクションを手がける。「経験の記憶」をよりどころにした「身体性」や「体験」を伴うコミュニケーションのデザインは大きな話題を呼び、国際的にも高い評価を得ている。2016年、Fast Company誌が選ぶ世界の「The Most Creative People in Business 1000」に選ばれる。最近の作品に、成田空港第3ターミナルの空間デザインやサンスターのハミガキIoT「G•U•M PLAY」など。経済産業省「クールジャパン官民有識者会議」メンバー(2011、2012)。NYの国際広告・デザイン賞ONE SHOWの国際ボードーメンバー。京都造形芸術大学情報デザイン学科教授。事業構想大学院大学客員教授。