84 安藤忠雄(建築家)後編

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ユニークさと、自力で道を切り開くたくましさ。

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1969年の事務所開設以来、活動の拠点としている大阪のアトリエ。コンクリート打ち放しの地上5階建てで、5層吹き抜けの空間の1階に、安藤氏のデスクがある。もとは住宅として設計された建物で、通りを挟んで建つANNEX棟も自身の設計による。

 好きな街はどこかと聞かれたら、それはやっぱり大阪です。自分を育ててくれた街ですから。建築家として世界各地で仕事をしてきましたが、事務所(安藤忠雄建築研究所)は今でも大阪にしか拠点を設けていません。でも、残念ながら大阪は人気がない......。特に、この20年くらいの間で、東京と大阪の格差はより大きく開いたと感じています。

 事務所には、「入りたい」という電話が直接かかってくることもあります。最近は入りたいという人に女性が多いのも変化のひとつですが、「大阪にしか事務所はありません」となると難しい面もあります。東京の大学を出た人は、まず大阪へは勤めに来たがりませんから。大阪の経済規模は東京に比べると1/10くらいだと思いますが、それでもよくやっているほうだと思います。大阪、えらいですよ。残り者ばっかりで、よく戦っています(笑)。大阪で講演会するときは、いつもそう言うんです。

 表面的な文化度では東京に負けますが、大阪はとにかくユニーク。ユニークさというのは、なかなかの強みです。大阪出身者にも、ユニークな人が多いですね。カルチュア・コンビニエンス・クラブの増田宗昭さん、H.I.S.の澤田秀雄さん......。大阪人は私も含め、自力で道を切り開いていかなければならないと思っている。そういうたくましさみたいなものが、人にも街にもあると思います。

原寸の『光の教会』が空を飛ぶ!? 

『安藤忠雄展-挑戦-』 int_84_sub08.jpg

国立新美術館の開館10周年を記念して行われる、安藤忠雄氏の過去最大規模の展覧会。ANDO建築の原点でもある住宅作品の一挙公開をはじめ、安藤氏の歩みを追体験できる多彩な設計資料が展示される。野外展示場に現れる代表作『光の教会』の原寸大模型も必見!
会期:2017年9月27日〜12月18日
会場:国立新美術館企画展示室1E+野外展示場
http://www.tadao-ando.com/exhibition2017/

『光の教会』int_84_sub09.jpg

1989年、大阪府茨木市(撮影:松岡満男)
国立新美術館開館10周年、「安藤忠雄展-挑戦-」(2017年9月27日〜12月18日開催)で展示されているのは『光の教会』の原寸大模型。『光の教会』は1989年竣工。安藤忠雄氏の代表作のひとつで、十字架型のスリットを持つコンクリートの箱に、斜めの壁が貫入している。徹底的に削ぎ落とされた簡素な空間は、陽の回りによって刻々と変化する光の十字架によって満たされる。

 今回、国立新美術館で開催する展覧会『安藤忠雄展-挑戦-』は、「開館10周年の記念にぜひ」と青木保館長からお声がけいただいてはじまったもの。せっかくの機会ですから、ここでも思い切ったことをしたいと、原寸大の『光の教会』の模型を展示することにしました。建築というのは「体験」です。来場者にその空間を、直接感じとってもらいたい。間口約6m、奥行き約18m、高さ約8mの礼拝堂が、そっくりそのまま屋外に展示されています。模型とはいえ、「これはもう建築だ」という意見と「展示物で通る」という意見と、さまざまありました。結局、"建築物"として「増築」の確認申請をとり、展示の実現に至りました。

 将来的には、パリのポンピドゥ・センターでも同様の展覧会を開けないかと考えています。そうすれば、この原寸大の『光の教会』も行き場があるのですが......。先日、知人を介して日本航空の社長の植木義晴さんと食事をしたのですが、彼はもともとパイロットだったそうで「何でも運びます」と言う。日本航空だったら、ポンピドゥに『光の教会』を運んでくれるかもしれないなと、いま私の中で勝手に思っているところです(笑)。

 やっぱり無謀だと思えることを実現するためには、チームを組んでくれる優秀な人物の存在が不可欠です。人との出会いには常にアンテナをはっていたほうがいい。それもまた、生き抜く術のひとつでしょう。若い人にメッセージがあるとしたら「うまく生きろ」ですよ。自分で考え、自分でその術を見つけ、これからの時代をうまく生き抜いていってほしいと思います。

取材を終えて......
取材場所の『21_21 DESIGN SIGHT』にひとりで颯爽と現れ、おおらかに笑い、勢いよくしゃべり続け、そしてまた颯爽と次の仕事先へと向かって行った安藤さん。六本木には新しいものはもう何もいらない。あとは使う側の大胆なアイデア、とおっしゃっていたのが印象的で、今回の展覧会で安藤さんが実現させた『光の教会』の原寸大模型は、まさに、大胆なアイデア。かの名作の空間を六本木で体感できるなんて! 楽しみでなりません。(edit_tami okano)

前編はこちら


【information】
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安藤忠雄展-挑戦-
会期:2017年9月27日~12月18日
会場:国立新美術館企画展示室1E+野外展示場
休館日:毎週火曜日
開館時間:10:00〜18:00(金曜日・土曜日は20:00まで)
※入場は閉館の30分前まで
問い合わせ先:03-5777-8600(ハローダイヤル)
特設webサイト:http://www.tadao-ando.com/exhibition2017/

安藤忠雄
大阪生まれ。独学で建築を学び、1969年に安藤忠雄建築研究所を設立。代表作に「六甲の集合住宅」、「光の教会」、「FABRICA(ベネトンアートスクール)」、「ピューリッツァー美術館」、「地中美術館」、「表参道ヒルズ(同潤会青山アパート建替計画)」、「プンタ・デラ・ドガーナ」、「上海保利大劇場」など。79年「住吉の長屋」で日本建築学会賞、85年アルヴァ・アアルト賞、89年フランス建築アカデミーゴールドメダル、93年日本芸術院賞、95年朝日賞、95年プリツカー賞、96年高松宮殿下記念世界文化賞、02年AIAゴールドメダル、京都賞、03年文化功労者、05年UIA(国際建築家連合)ゴールドメダル、レジオンドヌール勲章(シュヴァリエ)、06年環境保全功労者、10年ジョン・F・ケネディーセンター芸術金賞、後藤新平賞、文化勲章、12年リチャード・ノイトラ賞、13年フランス芸術文化勲章(コマンドゥール)、15年イタリア共和国功労勲章グランデ・ウフィチャーレ章。11年東日本大震災復興構想会議議長代理「桃・柿育英会 東日本大震災遺児育英資金」実行委員長。イェール、コロンビア、ハーバード大学の客員教授歴任。97年より東京大学教授、03年より名誉教授。著書に『建築を語る』『連戦連敗』『建築家 安藤忠雄』『仕事をつくる』『TADAO ANDO Insight Guide 安藤忠雄とその記憶』など。