83 西野達(アーティスト)前編

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アートに興味のない通行人にきっかけをつくる。

 俺はもともとアート関係者じゃない人々を観客として想定して作家活動を始めたから、今回の21_21での展覧会は展示施設とはいえ面白かったよ。21_21は本来はデザインの施設なのでデザイン関係の観客が多いだろうし、安藤忠雄建築ということで建築関係の観客も想定される。と同時にミッドタウン内にあるということで普通の買い物客や観光客が入ってくることも多いだろう。それらを含めて「カプセルホテル」のアイデアはうまく作用したのじゃないかな。ミッドタウンへの海外からの観光客はほとんどこのベッドで昼寝してるんじゃない(笑)?

買い物客や観光客をこの建物に引きずり込みたいという思いは最初からあったよ。今回初めて作品展示のために使うことになったギャラリー3は、21_21のもう一方の建物と違って1階に展示室がある。そのプラス面を最大限に利用したいとも考えてた。「カプセルホテル21」は、あまりアートに興味を持っていない人も「何これ!?」って建物に誘い込まれるように計画されてる。外から見え隠れしているオリジナルのシャンデリアや写真作品もその一つ。何よりも、ギャラリーの大きな窓ガラス越しに、人が寝ているのが見えたら気になるでしょ(笑)? 

地下鉄のダイヤ間を突如駆け抜けるタクシー!?

 今回は建物の中でのプロジェクトだけど、もし六本木の屋外で何かビッグプロジェクトをやるなら、どんなことができるかな......。俺の場合、どこかの街や展示会から呼んでもらうと、まずその街に5日くらい滞在して歩き回る。街並みやその雰囲気、現地の食事や住民を知っていくうちに、だんだんとアイデアが出てくるんだ。

いまのところ、六本木を作品展示場所として見たことがないんだけど......。本当に思いつきで話すと、地下鉄を使ったプロジェクトはどうかな?六本木の街にも地下鉄が走っているよね。前から温めているんだけど、地下鉄の線路にタクシーを走らせるアイデア。 車のタイヤを電車の車輪につけ替えて、地下鉄のダイヤの合間にタクシーを走らせるっていう。

駅のホームで電車を待っている人は、「え? なんでタクシー!?」って絶対に驚くだろうなー(笑)。 実際に手を上げてタクシーを停められたらなお面白いけど、まあ「実現不可能性100%」だろうな。そうやって、アートに興味のない人の日常生活に入り込みたいね。

いまは亡き文化人と一緒に、ひと晩を過ごせるホテル。

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西野さんの「ホテルプロジェクト」とは象徴的なモニュメントなどを囲み、そこにホテルやリビングルームといったプライベート空間を作るインスタレーション。その代表作のひとつが写真の『シンガポール・ビエンナーレ2011』に出展した『The Merlion Hotel』。マーラインを囲い、2カ月をかけて高級ホテルを作り上げた。桁外れの発想が話題となり、さらに西野氏の名を世界にとどろかせることに。実際に1日1組が宿泊できるホテルとして営業され、2カ月間の予約がわずか1時間でソールドアウトしてしまった。

 俺が世界各地でやってきたホテルプロジェクトを六本木でやるなら、何ができるんだろう......。そもそも、日本って海外に比べてモニュメントが少ないんだよね。きっと、みんなも渋谷のハチ公と上野の西郷どんくらいしか、思いつかないんじゃないかな。

そうだ、モニュメントじゃなくても、お墓ならいいかもしれない。これも前から考えていたアイデアなんだけど、有名人の墓を取り込んでベッドルームを建てる。日本にあこがれを持っていたファン・ゴッホのAuvers sur Oise の墓からこの着想を得たんだけど、ファン・ゴッホの墓石に並べてベットを置き宿泊できるホテルを建てるプロジェクト。ファン・ゴッホと一晩共に過ごせるわけ。

もし日本でやるなら和室にして、畳から出ている縦長の墓石の前に布団を敷くイメージかな。六本木に墓地があって有名人の墓があるならやりたいね。

後編はこちら



【information】
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西野 達 ホテル裸島 リゾート・オブ・メモリー
会期:2017年10月7日~12月5日 
会場:津奈木町内(旧赤崎小学校付近・津奈木町役場付近)
問い合わせ先:つなぎ美術館 0996-61-2222
特設webサイト:http://tatzu-hadaka.asia

西野 達 in BEPPU
会期:2017年10月28日~12月24日 
会場:別府市内各所
問い合わせ先:混浴温泉世界実行委員会事務局<NPO法人 BEPPU PROJECT> 0997-22-356
「in BEPPU」webサイト:http://inbeppu.com/

西野達
1960年、名古屋市生まれ。武蔵野美術大学を修了後、1987年ドイツのミュンスター芸術アカデミーで彫刻を学び、1997年から主にヨーロッパで活動。都市を舞台とした、人々を多く巻き込む大胆で冒険的なプロジェクトで知られる。現在ではベルリンと東京を拠点に活動。 2011年の「シンガポール ビエンナーレ」でのマーライオンを取り込んでホテルを建設した「The Merlion Hotel」、2012年ニューヨークのプロジェクト「Discovering Columbus」(Public Art Fund)、2014年のロシアのエルミタージュ美術館内のインスタレーション「So I only want to love yours」(Manifesta10)など。日本では2005年「横浜トリエンナーレ」、2006年銀座エルメスでの「天上のシェリー」、2010年「あいちトリエンナーレ」など。
西野達公式HP http://www.tatzunishi.net/