No.81 ゲルフリート・ストッカー(アルスエレクトロニカ総合芸術監督)後編

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オーストリアの地方都市リンツ。この街で1979年からスタートした『アルスエレクトロニカ・フェスティバル』は未来を体験できる芸術の祭典として、世界中のアーティストや研究者、企業から熱い視線が注がれている。同フェスティバルを主催するアルスエレクトロニカで1995年から総合芸術監督を務めるゲルフリート・ストッカー氏に、アートとテクノロジーを通じてひらかれていく六本木の未来、またこれからの時代に役立つ学びについて話を伺いました。

前編はこちら

update_2017.6.14 / photo_mariko tagashira / text_nanae mizushima

テクノロジーは日常生活に必要不可欠なもの。

このようにクリエイターの社会的役割や求められる専門性が変わってきている今、私たちひとりひとりの意識も変わっていくし、変わらなければならないと思います。

その背景には、リアルとバーチャル、アナログとデジタルが複合的に絡み合う社会になっていること、日々進化していくテクノロジーが自分たちの生活に必要不可欠になってきていることが挙げられます。テクノロジーをどう理解して、どう利用していくのか。利用していく意味、可能性も含めて、まるで粘土を練るように融合させながら考えていく意識こそが今必要なのです。

しかし現実はそううまくいきません。一般的にはテクノロジーに関する情報がかなり単純化されながらインパクトある物語だけが拡散しているからです。AI(人工知能)が地球のすべてをコントロールして、人類を乗っ取ってしまうんじゃないかと言われてしまっていることもその一例です。でも本来AIとは、人間らしさとは何かを考えることでもあるんです。そういった多様な視点を持つためには、「教育の力」が必要になってくるのではないでしょうか。

これからの時代の教育とは何か?

アルゴリズム
ある問題状況において、正解を引き出すための一定の手続きまたは思考方法のこと。その通りに実行すれば必ず特定の結論に達するというもので、数学の公式やコンピュータのプログラミングはアルゴリズムの代表といえる。 アルゴリズムと対置する概念として、必ずしも正解を保証しない方法であるヒューリスティックスが挙げられる。 出典|ナビゲートナビゲート ビジネス基本用語集について

街の公共空間をどのように使っていくのか。東京の人々はもっと自分たちで問うべきだと思います。なぜなら公共空間こそ、街の創造性と未来を育む場所になるからです。

教育の本質とは、世界を知るためのもの、また現実に直面するために必要な知識を学ぶことだと思います。その上で、これからの教育は、地理や歴史といった個別の知識よりも、それらがどう関連しあって世界は作られてきたのか、多種多様な分野を一つの物語に繋げて考えられる視点や知恵を養うことが大切です。

今必要な知識として、プログラミングやアルゴリズムが欠かせないと思います。それは、何も将来エンジニアになるために必要なのではありません。プログラミングやアルゴリズムは、この世界を繋ぎ、理解するための言語のひとつで、それらを学ぶことは、これから必須となる世界を構成するテクノロジーを理解するためのツールとなるからです。

教育の題材にするのは日常に身近なものでいいんです。例えばスマートフォン。簡単な操作の裏では実は目には見えない膨大な情報が飛び交っていることを知っていますか?またここ最近、Airbnbがインターネット上で頻繁にポップアップしていますがその理由を知っていますか?

最先端のテクノロジーは日々ファクトリーやラボから飛び出て、直接日常生活につながっているんです。それを知る手がかりがプログラミングやアルゴリズムにはあって、それを知ることによって、これから未来で起ころうとしていることに少しでも準備ができるし、柔軟に対応できるようになるのです。

実際にアルスエレクトロニカでは地元の学校や大学などにスタッフが出向いて教育プログラムを開発したり、授業を行ったりしています。ひょっとすると、この活動の中から明日のテクノロジーやクリエイターが生まれるかもしれない。その可能性を呼び起こすのもまた教育だと思います。