80 蔦谷好位置(音楽プロデューサー/作曲家)前編

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音楽とテクノロジーの共生。

More Life
ドレイクが2017年3月にリリースした「プレイリスト」。カニエ・ウェスト、2チェインズ、トラヴィス・スコット、ブラック・コーヒーなどのアーティストが参加。自身のインターネットラジオで流す曲がすべて新作だったら、という設定で選曲されている。

 音楽の進化は、やはりテクノロジーの発展とともにあったと思います。シンセサイザーなどの新しい楽器ができたことで、新たな音楽のジャンルが生まれる。レコードやラジオ、インターネットといった新しいメディアによって音楽のあり方も変わっていく。ぼくら音楽のつくり手は、そうした技術の進化には対応していかなきゃいけないと思っています。

 プリンスは2015年のグラミー賞で「Albums still matter」と言いましたが、アルバムの概念は、CDやレコードに収められる曲のパッケージですよね。であれば、CDやレコードが姿を消しつつあるいま、実はアルバムにする意味はないんですよね。ドレイクは今年、アルバムではなく「プレイリスト」として作品を出しているんです。それはもう2歩も3歩も先を行っているような感じがします。決して海外のアーティストを安易に真似する必要はありませんが、こうしたおもしろい流れはどんどん取り入れていったほうがいい。

 たとえば音楽のつくり方にしても、以前まではコンピューターのスペックが必要だったから、どうしてもPCにSSD(フラッシュメモリ等を用いた記録装置。高速だが高価)をいくつも入れて使わなければいけなかったのですが、いまではMacBook Pro 1台でどこでも作曲できる環境が整いつつあります。すると、これまではコンピューターのある自宅やスタジオで行わなければいけなかった音楽づくりが、世界中の人と移動しながら曲をつくるようなこともできるようになってくる。将来的には音楽づくりのツールはMacBook ProからiPadになり、もしかしたら何もないところに手をかざすと画面が出てきて音楽がつくれるようになるかもしれません。そんな未来がきたら最高だと思いますね。

 もうひとつ、『攻殻機動隊』のように頭にUSBみたいなものを差すことで自分が頭のなかでイメージした音楽を再現できたり、人が音楽を聞いたときに感じる、心の奥底の感情を知ることができたりしたら面白いと思っています。人がどう思うかを意識して曲をつくるのは良くないかもしれないと思いつつも、人の感情をどう動かせるかという経験の集大成を活かして音楽をつくっているところもあります。たとえば、この和音を弾いてから次はこの音を鳴らしたらあの人を泣かせることができる、●●すればあの人を楽しい気持ちにさせることができる、といった膨大なインプットがぼくの頭のなかにあって、音楽をつくるときはいつもそれを引き出しているんです。だからもっといろんな人の感情を知ることができたら、自分のつくる曲の広がりが更に出るのかもしれない。テクノロジーによってそんな未来が実現するのなら、利用しない手はないと思うんです。答えはまだ出ていませんが、「音楽×テクノロジー」の新しい取り組みが六本木から生まれたら最高ですよね。

後編はこちら

蔦谷好位置
音楽プロデューサー、作曲家。1976年、北海道札幌市生まれ。2000年にCANNABISとしてワーナーミュージックジャパンよりデビューし、2004年よりagehaspringsに加入。YUKI、Superfly、ゆず、エレファントカシマシ、木村カエラ、Chara、JUJU、絢香、back numberなど、多くのアーティストへ楽曲提供やプロデュース、アレンジを行う。近年では『昆虫物語 みつばちハッチ〜勇気のメロディ〜』『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』『ピーチガール』などの映画音楽も多数手掛け、大ヒットを記録した映画『SING/シング』では吹き替え版の音楽プロデューサーを務めた。@KoichiTsutaya