78 青木保(国立新美術館長)×落合陽一(メディアアーティスト)後編

青木保(国立新美術館館長)×落合陽一(メディアアーティスト)

アートの役割は「非言語の装置」であること。

MIYAKE ISSEY展
新たにデザインされた「グリッド・ボディ」を用いた展示をはじめ、三宅氏が活動を開始した1970年から約45年間の仕事を紹介した。会場構成は吉岡徳仁氏と佐藤卓氏。2016年3月~6月まで、国立新美術館で開催された。
photo:「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」メインヴィジュアル

落合僕は、アートの役割って「非言語の装置」だと考えています。たとえば、フランク・ゲーリーの建物は明らかに非言語の装置として機能していて、どこからも見えることで街をアートにしている。

 まだ六本木には、その装置がないので、どうやってランドスケープをたくさんつくっていくか、どうやって街全体をインスタレーションにするかが、これからの課題でしょう。国籍や人種を問わず、誰が見ても訴求力があるもの。国際色豊かな六本木のバックグラウンドにもハマると思うんです。

青木六本木に行けば、世界のどこでも見られないものに出会えるってアピールすることも大切ですよ。昨年「ルノワール展」を開催したときに思ったんです。たとえば、アメリカの観光客って、夏になるとバカンスでヨーロッパに行って、美術館に行ったりするでしょう? だから『ニューヨーク・タイムズ』に、「今年の夏、ムーラン・ド・ラ・ギャレットは東京で見よう!」って広告を出せばよかったって。

「MIYAKE ISSEY展」にも世界中から2万人くらいの人がやってきて、「東京が文化の中心だ」という感じがしたんですよ。今は訪日外国人が2,000万人を超えて、3,000万人、5,000万人を目指そうっていう時代ですから。

落合いいですね。

青木それから、やっぱり音楽は必要。パリに行くと、地下鉄でアマチュアの人が練習してたり、ギターケースを開けてお金をもらってたり。ああいうのをもっと自由にさせたらどうかなと思うんだけどね。

落合道は狭いですけど、意外と遊んでいる空間はあるので、できそうですよね。

美術館はアートを見るだけの場所ではない。

落合陽一「Imago et Materia」展
12個の時計とレンズが発光することで、ひとつの奇妙な時間をつくり出す「アリスの時間」(写真)ほか、「ゾートログラフ」「幽体の囁き」の3作品を展示。2017年4月11日(火)まで、六本木のART & SCIENCE GALLERY LAB AXIOMで開催中。

青木個人的に思うのは、美術館はアートを見るだけの場所ではないという意識を持たなければいけないということ。「安藤忠雄展」(2017年9月)のときには有名な建築「光の教会」を国立新美術館に再現する企画が進んでいるのですが、展示したあともそれを残してもらって、結婚式に使うとか。

 メトロポリタン美術館なんかでは実際に結婚式をやっていますから、美術館はこういうものだと既成概念で決めつけないで可能性を引き出す。将来的には、そんなこともできたらいいなと思いますけどね。

落合僕のやっている空間インスタレーションって、建築とデザインの中間。モノをつくっているわけでもないし、建物を建てているわけでもなくて、その間にある構造をつくるのが仕事です。都市の中にどういう構造やメディアを突っ込むと、人が動くのか。たとえば、巨大なモニュメントとか電光掲示板とか、そういうものの配置を考えていく「ランドスケープベースのアート化」は、もっとやっていかなくちゃいけないと考えています。

 それでいつも、六本木ヒルズの展望台から街を眺めては、「あそこの土地空いているけど、誰が持っているんだろう......」なんて、考えているんですよね。

前編はこちら

取材を終えて......
六本木通のお2人だけあって、ここには書ききれないくらい濃い話がたくさん(ブログでもお伝えします)。ちなみに現在、落合さんの個展が六本木で開催中。そちらもぜひご覧ください。(edit_kentaro inoue)

青木保
文化人類学者、大阪大学で博士号取得。大阪大学・東京大学・政策研究大学院大学教授、文化庁長官(2007.4〜2009.7)などを務めた。米ハーバード大学客員研究員、仏国立パリ社会科学高等研究院客員教授、独コンスタンツ大学客員教授なども務めた。1965年以来、タイ、スリランカなどのアジア諸国、欧米各国等の文化人類学や文化政策の調査研究に従事。1972年〜73年にはバンコクの仏教寺院で僧修行をする。日本民族学会(現文化人類学会)会長(1994〜1996)。2013年3月には全米アジア学会で基調講演を行った。サントリー学芸賞、吉野作造賞受賞、紫綬褒章受章。近著に『「文化力」の時代』(岩波書店)、『作家は移動する』(新書館)、『文化の翻訳』(新装版 東京大学出版会)など。2013年4月から現職。現在国立新美術館研究紀要にアメリカの画家、エドワード・ホッパー論を掲載中。

落合陽一
1987年東京都生まれ。筑波大学情報学群情報メディア創成学類でメディア芸術を学び、東京大学で学際情報学府にて博士号を取得(学際情報学府初の早期修了者)。2015年より筑波大学助教。映像を超えたマルチメディアの可能性に興味を持ち、映像と物質の垣根を再構築する表現を計算機物理場(計算機ホログラム)によって実現するなど、デジタルネイチャーと呼ばれるビジョンに基づき研究に従事。情報処理推進機構より天才プログラマー/スーパークリエータ認定に認定。World Technology Award 2015年、世界的なメディアアート賞であるアルス・エレクトロニカ賞受賞など、国内外で受賞歴多数。