77 清水久和(プロダクトデザイナー)前編

清水久和(プロダクトデザイナー)

プロジェクトは「オリーブのリーゼント」からはじまった。

オリーブのリーゼント
リーゼントのヘアスタイル、オリーブに似た顔型をした立体作品。くぼんだ部分に野菜や果物を置き、無人販売所として使える。現在、小豆島のオリーブ畑に恒久作品として展示中。

 東京ミッドタウン・デザインハブで行われる「地域×デザイン2017」では、「愛のバッドデザインプロジェクト in 小豆島」の記録を展示します。この活動のきっかけは、2013年の瀬戸内国際芸術祭で「オリーブのリーゼント」という作品をつくったこと。

 自分で言うのも何ですが、これって本当に、子どもからお年寄りまで誰もがニコっと笑ってくれる作品。もともとは会期中だけの展示の予定が人気が爆発して、すごく辺鄙な場所にあるのに、多いときは1日1,500人もの人が足を運んでくれました。島の人たちも喜んでくれて、町が買い上げて、常設されることになったんです。

 その流れで、リーゼントにペンキで絵を描いたり、小さなリーゼントをつくったり。子どもたちの向けのワークショップをやっていたときに、ふと「愛のバッドデザイン」を島でやりたいなって思いついて。ちなみに今回のプロジェクトは、JC(青年会議所)をはじめとする、島の若者たちがメイン。小豆島には小豆島町と土庄町という2つの町があって、その2つが初めて一緒に取り組んだプロジェクトです。

基準はなし。その人が選んだものがそのまま「愛のバッドデザイン」。

 2年半くらいにわたってワークショップをしましたが、最初は「どうやって探したらいいのか、全然わからない」と言われました。そもそも「愛のバッドデザイン」に基準はとくになくて、その人が選んだものがそのまま愛のバッドデザイン。だって記憶は、人それぞれですから。

 小学校で授業をやったときに、私が選んだバッドデザインをいくつか見せたんです。すると、子どもたちは説明なんか聞きたくない、早く探しに行きたい、となる。素直なんです。でも大人は、正解を出したがるから、「"愛の"とは、どういうことですか?」なんて言って、固まって動けない(笑)。それでも、まわりの人を見ていると、「ああ、自分の感覚でいいんだ」って気づいて、どんどん出せるようになるのが面白いところ。

つくっている作品は、アートではなくデザイン。

愛のボラード
小豆島の海に面した駐車場の一角に設置された巨大な作品。海からいったい何がやってくるのか、鑑賞者の想像力をかき立てる。「瀬戸内国際芸術祭 2016」に出展。

 考えてみると、リーゼントも「愛のバッドデザイン」なんですね。リーゼントって「取るに足りない」髪型だけど、一部の人たちにとっては、すごく思い入れがあるもの。でも最近している人は少なくて「ちょんまげ」みたいな存在になってきているから、そろそろ形にして残してあげたいなと思ってつくった作品です。あっけらかんとした、ポップさがあるのもいいし。

 2016年につくった「愛のボラード」もそう。ボラードというのは、船を停めるための係留柱で、よく映画なんかで主人公が足を置いて海を見つめている、あれ(笑)。そのボラードの大きい版で、島にいろんなものをつなぎとめるという意味を込めてつくりました。

 私はデザイナーなので、「オリーブのリーゼント」も「愛のボラード」も、アートではなくデザインだと考えているんです。アートっていうと急にわからないものになって、みんな理解しようとしなくなっちゃうから。

後編はこちら

清水久和
プロダクトデザイナー
S&O DESIGN 株式会社代表取締役/プロダクトデザイナー。 桑沢デザイン研究所・東京藝術大学非常勤講師。キヤノンのデジタルカメラ「IXY Digital」のチーフデザイナーとして同シリーズを世界シェアNo.1 に導き、10年間に渡りプロダクトブランディングを構築。ドイツiF 賞やグッドデザイン賞を多数受賞。瀬戸内国際芸術祭に出品した「オリーブのリーゼント」と「愛のボラード」が人気を集める。デザインリサーチ活動の「愛のバッドデザイン」や、新たな3Dデザイン手法「コンティニュアス・デザイン」の実践・教育など、多彩な活動が注目されている。