76 川田十夢(AR三兄弟)前編

川田十夢(AR三兄弟)

「星にタッチパネル劇場」にも、実は裏技が。

星にタッチパネル劇場
展望台の窓16面をスクリーンにした、参加型プロジェクションマッピング。星の調光や月の満ち欠け、メッセージが流れる「星に願いを」など、夜空に浮かぶ星をスマートフォンで操ることができる。映画「君の名は。」とのコラボも。

 今やっている「星にタッチパネル劇場」にも、実は裏技があって、たとえば、スマホで絵文字の寿司(🍣)を打ち込むと「スシ食いねェ!」が流れるんです。他にも、温泉のマーク(♨)だと「♪ババンババンバンバン」、爆弾マーク(💣)で「♪ドカンと一発〜」、おばけのマーク(👻)とQで「♪あのね、Q太郎はね〜」、サングラスと風鈴(🎐)だと「少年時代」、井上陽水ですね。

 100個くらいあって、自分でも忘れちゃうくらい(笑)。あと最初の頃は、ド派手にスタッフの名前が出る「関係者喜ぶボタン」とか、コマーシャルが流れる「スポンサー喜ぶボタン」とかもありました。

 僕らがつくるものには、だいたい知っている人だけが楽しめる裏技を用意しています。そういうものがあったほうが楽しんでもらえるというのはもちろんですが、開発者的な視点でいえば、プログラムがちゃんと動いているかどうかを確認するデバッグ機能の意味もあるんです。何も言わないと見つけられる人はほぼいないので、さわりだけ教えてあげて、あとはご自由にっていうスタンス。説明してしまった時点で、裏技ではなくなってしまいますからね。

「矢印」が集まる街、六本木で起きた奇跡。

 六本木には「矢印」が集まってるというか、常にライトが当たっていて、それに当たりに来る人もいれば見に来る人もいる。そこが、他の街とは大きく違いますよね。ちなみに僕は、J-WAVEでレギュラー番組をやっていたので、毎週この街に来ていたし、スーデラ(スーパー・デラックス)でよくライブもやっていました。

 あるとき、モー娘。の「恋のダンスサイト」の「セクシービーム!」っていうセリフに合わせて、乳首からビームが出るっていうだけのARシステムをつくって夜な夜な勝手に盛り上がっていたんです。そうしたら、なぜかハロプロの人たちが急きょやって来るって話になって、「やばいやばい、こうやって業界から干されてゆくんだ。もう三兄弟は終わりだ......」と思ってたら、「めちゃくちゃ面白いじゃないですか!」って言ってくれて。それがきっかけで、スマイレージのデビューCMをつくらせてもらって、出演までしました。

 そのとき僕、この街とは相性がいいなと思ったんですよ。「星にタッチパネル劇場」も2回目ですし、「奇跡の街」っていうか、六本木に来るといいことがあるなと思います。(三兄弟の)三の倍数つながりだからかもしれません(笑)。

その時間、その場所でないとできない体験を。

 地上52階に美術館があったり、東京シティビューみたいに抜けのいい空間があったり。六本木って、ここからがアートだよとか、ここからが公共空間だよっていう境界線が曖昧なところが魅力。「星にタッチパネル劇場」にしても、冬で夜景がきれいに見える空間だからこそ、機能するファンタジーがある。六本木じゃなかったら、ああいう企画は考えてないと思います。

「星にタッチパネル劇場」は、本当の星を全部再現しているんです。地球を取り巻く宇宙を天球として全部再現して、東京の六本木ヒルズの東側の窓から空を見上げるという設計。街が明るすぎるからふだんは2等星までしか見えないけど、本当はその場所で見えているはずのものを、ちょうど部屋の照明を調整するみたいに12等星まで可視化できるようになっています。夏と冬で見える星座が違うように地球は動いていますし、誰かが別の機能を使えば時間を早送りしたり巻き戻したりもできる。つまり、その時間、その場所だけ、二度と同じ空模様は現れない仕様です。

 月や太陽といった惑星の大きさも実際の縮尺がベースで、科学的に実証されている事実を基にしています。ただ寿司を流せる楽しい仕組みだと思われてしまうこともありますが、実はわりとこだわりがあって。パリならパリの空というように、デフォルト値さえ変えれば、世界中で展示ができる。発想が天才すぎて、まだどこの国からも全然声はかかってないですけどね。理解と評価と時代が追いついたら、海外での展示も検討します(笑)。

後編はこちら

川田十夢
AR三兄弟
1976年 熊本県生まれ。公私ともに長男。通りすがりの天才。開発者。1999年 メーカー系列会社に就職、面接時に書いた「未来の履歴書」の通り、同社Web周辺の全デザインとサーバ設計、全世界で機能する部品発注システム、ミシンとネットをつなぐ特許技術発案など、ひと通り実現。2009年 AR三兄弟結成。2010年『AR三兄弟の企画書』(日経BP社)出版。2013年「情熱大陸」出演・開発。2014年 J-WAVEでレギュラー番組「THE HANGOUT」スタート。やがて同番組で新海誠監督(パイセン)と初共演。2015年 NHK「課外授業 ようこそ先輩」に出演。2016年 「帰ってきた星にタッチパネル劇場」で新海作品を初AR化。 WIRED「WAY PASSED FUTURE」、TVBros.「魚にチクビはあるのだろうか?」、季刊猿人などで、好評連載中。2月13日に、AR三兄弟結成9周年を祝うパーティーを渋谷ロフト9で開催予定。