66 小西利行(コピーライター)

小西利行(コピーライター)

サントリー「伊右衛門」やトヨタ「LEXUS」などの広告を手がけ、六本木未来会議のアイデア実現プロジェクト#7「六本木未来大学」の第1回の授業も担当してくれたコピーライターの小西利行さん。2016年1月には、企画や発想のメソッドをまとめた『すごいメモ。』を上梓した小西さんに、六本木の未来を変えるアイデアをうかがいました。ちなみに、インタビュー&撮影が行われたのは、小西さんの会社POOLが運営する、西麻布の「スナックだるま」です。

update_2016.4.6 / photo_tsukao / text_kentaro inoue

先端の企業や文化と、昭和のおじさん文化が融合中。

 僕にとって一番最初の六本木のイメージは「タクシーが全然止まらない街」。ちょうどバブルが終わったばかりの頃に会社に入ったので、先輩に連れられて飲みにきて帰ろうと思ってタクシーを停めると、ウィーンって窓が開いて運転手さんに言われるんです。「どこまで?」「横浜までです」、「いくら?」「4万円でどうですか?」、「じゃあ他の車あたって」。

シシリア 六本木店
六本木交差点、アマンドの地下1Fにある昭和29年創業の老舗イタリアンレストラン。赤いギンガムチェックのテーブルクロスが印象的な店内では、名物のピッツアパイピザやパスタなどがリーズナブルな値段で楽しめる。

 タクシー券ぐらい持っていない限り乗れない、タクシーが最高に強かった時代。最近でも、クリスマスなんかはつかまりづらいけれど、あれが毎日起こっていました。当時、先輩が好きだった「シシリア」というイタリアンレストランに週1くらいで通っていて、深夜12時とか1時を回ると、もう帰れない。で、キャバクラに連れて行かれて朝3時......だから、六本木イコール非常に怖い街だったんです(笑)。

 昔は、海外っぽいというかダークなイメージ。それが六本木ヒルズができて、東京ミッドタウンができて、最近は海外からの観光客もすごく多いですけど、すごくクリーンになりましたよね。でも、いまだに年上のおじさんと飲むと、やっぱりキャバクラ行こう、ってことになる。まだ行くんだ? と思うんですけど(笑)、ヒルズとかミッドタウンにある先端の企業や文化と、ディープな昭和のおじさん文化が融合中、という状態は嫌いではないですね。

"引っかかる"可能性がある、相変わらず怖い街。

スナックだるま
六本木通り沿い、三保谷硝子ビル1Fにある小西氏が運営するスナック。だるまのイラストが描かれた提灯が目印。ズラリと並ぶ「だるま」の愛称で親しまれるウイスキー「サントリーオールド」をメインに、各種お酒&おつまみも。
https://www.facebook.com/snack.daruma/

 最近は「スナックだるま」ができたので、一番よくいる街になりました。でも、次の日朝早いのに、ここに来ちゃうと"引っかかる"可能性があるんですよ。博報堂で同期だった嶋(浩一郎)くんがいると「まさかおまえ、帰るんじゃないだろうな?」ってことになるし、コピーライターの大御所の方とか、Googleの人をはじめ、近所に事務所を構えてるクリエイティブな人たちが来てくれるので。知り合いが多くて面白いですけど、帰らせてくれない怖いおじさんがいっぱいいる。相変わらず恐ろしい街ですよ、六本木は(笑)。

 この「スナックだるま」は、最初はスナックじゃなくて、オムレツと焼きタラコの店にしたかったんです。20年くらい前、有楽町の交通会館に大好きな定食屋があって、オムレツ定食に焼きタラコをつけると1,200円くらいするんだけど、むちゃくちゃ人が並んでいる。それを復活させたいと言ったら、飲食のプロに「まったく儲からない」と一蹴されて。

 場所が六本木界隈だったので、「小西さんが行きたいと思う飲み屋とかバーがいいんじゃないですか?」ということで、ネオスナックというか、スナックなんだけどおいしいものを出して普通に人が入ってこられるような場所はどうかな、と思ったんです。ちなみに、メニューにオムレツと焼きタラコはありませんが、最近料理が得意な人も入ったので、いつか出せる日がくるかもしれません。

歌詞を読む「歌わないスナック」とは?

 雑誌にも「歌わないスナック」と書かれているように、この店、カラオケはあるけどマイクはないんです。店をはじめるとき、事務所のスタッフに「スナックだったらカラオケでしょう?」と聞かれたんですが、人が大きな声で歌ってるのってイライラするじゃないですか。嫌だと言うと「だったらマイクは置くのやめましょう」と。それは画期的、と思って。

 結果的にカラオケを置いたのは大正解で、知っている曲が流れると、昔の歌声喫茶みたいに小さい声で口ずさむ人もいるし、「歌詞を読む」というのがここの文化になっている。コピーライターという職業だからかもしれませんが、歌詞を読んで「そういう意味だったのか!」って気づくのも楽しいし、「深いですね」とか「iTunesで探して買ってみました」というお客さんもたくさんいますね。

 昔から昭和歌謡が好きで、日本のポップスとか演歌の楽しみ方を提案できたらいいなあと思っていたんです。先日、下北沢の書店「B&B」で、嶋くんとやった中島みゆきの歌詞について語るイベントがすごく好評だったので、今度はここで第二弾のセッションも企画しています。