65 水口哲也(メディアデザイナー)

水口哲也(メディアデザイナー)

六本木の夜景をバックに、VRで"ギターに弾かれる"体験を。

MAT LAB
「MAT2016」期間中、六本木ヒルズ 森タワー52階 東京シティビューほかで開催されるアーティストと企業による新しい都市実験の場。
http://peatix.com/event/147267

水口氏とRhizomatiks Architecture、Keio Media Desigが共同で手がけた「Rez Infinite - Synesthesia Suit」(写真)の体験展示は、2016年2月29日〜3月21日まで。日没後、六本木の夜景をバックにVR体験を提供する。

「Rez Infinite」の「共感覚的」というコンセプトを理解してもらうために、26個のバイブレーションが内蔵された「シナスタジア・スーツ」をつくり上げました。たとえば、ゲームの中で自分が奏でた音楽に合わせて、ドラムとハイハットの触感で上半身と下半身が交互に動いたり、ギターがジャーンと鳴ると、全身がギターの弦になって弾かれているような感覚になったり。音楽をテクスチャ(質感)のある振動として、体にフィードバックするわけです。バイブレーションだけだと、まわりの人にはどこがどう振動しているかわからないので、スーツの表面にはLEDをつけて光で表現しています。

 先日、サンフランシスコのとある発表会で、僕が実際にスーツを着て、ステージ上で披露したんです。それを見ていたライゾマティクスの齋藤精一さんいわく、「会場のみなさん、軽くアゴが外れてました」って。そのあと、各国のジャーナリストたちにも着てもらったんですが、みなさん体験すると「...Oh my god」って、小声でささやいていましたね(笑)。

 スーツは振動レイヤーとLEDレイヤーの2層になっていて、振動レイヤーの部分は体型に合わせてサイズ調節ができるので、MEDIA AMBITION TOKYOの「MAT LAB」では、メディアアート作品として体験展示も行います。東京、そして六本木の夜景をバックにVRのヘッドギアを装着して、音楽とともにさまざまな質感の振動を全身で感じる。六本木とテクノロジーアートって、なんだかとってもイメージが合いますよね。日本のみなさんはもちろん、外国の方にもきっと「やっぱり東京とか六本木は面白い!」と感じてもらえるのではないかと思います。

発想は、人が最高に楽しそうにしているイメージから。

ルミネス
2004年に第一作が発売され、シリーズ全体で世界で約200万本を販売したゲームソフト。画面上から落ちてくる同じ色のブロックを組み合わせて、四角形をつくって消していく「音と光の電飾パズル」。プレイにあわせて、BGM・効果音・背景などが次々変わっていく。

 ゲームにしても音楽にしても、僕は何かを考えるとき、「人がすごく楽しそうに使いこなしているとしたら、それはいったいどんなものか」という発想の仕方をすることが多いんです。たとえばゲームなら、ヘッドセットをつけてコントローラーを持った人が、ノリノリで楽しそうに、気持ちよさそうにプレイしているところを想像する。そのとき、画面にはどんなものが映っているんだろう、そんなに楽しそうに遊んでいるゲームって、どんなものなんだろう......。

 さらに、パズルゲームだったらどうなんだろう? とイメージを重ねてつくったのが、「ルミネス」です。最初のいいイメージからブレイクダウンをしていくんですけど、まずは大きなイメージから入りますね。「演奏感ってなんだ?」「音楽で気持ちがよくなるってなんだ?」というようにどんどん因数分解して、その感覚に向かう人間の体験の道筋を再設計するんです。

未来の都市を生み出すのは「目に見えないもの」。

 結局、やっているのは、体験の裏側にある人間のウォンツ(Wants=欲求)を因数分解して、そこから新しい体験を設計していくことなんです。それは目には見えない設計ですが、明らかに人の気持ちやモチベーションや動きを創り出します。これは、都市に当てはめて考えることもできるでしょう。都市って大方、タンジブル(目に見えて形があってさわれる)な発想で設計されてきました。でも、これからは、インタンジブルな(目に見えない)ものも伴わなければいけない。そうしないと、未来の都市の体験もイメージできないと思うんです。

 目に見えないものとは、たとえばインターネットだったり、デジタル的なネットワークだったり。今はスマホに集中していますが、徐々にARとか、MR(複合現実)といわれているものに形を変えていくはず。それらを含めた都市設計の発想を、そろそろイメージすべきときなんでしょうね。それって、とても東京的でもあると思います。

 何かの課題を解決する方法として、僕がよくやるのは「ウォンツ可視化ワークショップ」。たとえば、冒頭で「六本木は誰のものなのか」という話をしましたが、その「誰」の持っている潜在的な欲求を可視化して、因数分解していきます。「なぜ六本木を訪れたい?」とか「なぜ六本木に住みたい?」とか、もちろん訪日する外国人の欲求もあるだろうし、住んでいる人の欲求もあるでしょう。それらをとにかく全部出して、因数分解していくことで、その裏側にある本質的なウォンツを可視化していく。六本木未来会議でもやってみたら面白いかもしれません。