61 村松亮太郎(NAKED代表)

村松亮太郎(NAKED代表)

テレビ朝日を「滝」に、ミッドタウンには「花園」を。

テレビ朝日本社
2003年、アークヒルズから六本木ヒルズ内に移転。毛利庭園に面し、自然と一体化したガラス張りの社屋は、プリツカー賞も受賞している世界的な建築家・槇文彦氏による設計。

BREATH HOTEL
湘南・鵠沼海岸にある、オーシャンビューが自慢のリゾートホテル。たった一部屋だけある窓のない部屋の演出を、NAKEDが担当。「SECRET PARADISE」をテーマにした約2分半のプロジェクションマッピングが楽しめる。

 前から六本木でやりたいと思っていたのは、ガラス張りのテレビ朝日本社をナイアガラの滝にすること。夏の夜、上からバーッと滝が落ちてきて、滝壺から水しぶきが上がって涼が取れる。あの形が、僕にはどうしてもナイアガラの滝に見えて(笑)。

 東京ミッドタウンも、館内に竹が生えていたり芝生があったりするから、花のイベントはいいかもしれません。「東京のど真ん中にある秘密の花園」って、ちょっとそそるでしょう? ただ「イベントやってます」じゃなくて、館内のお店も参加して、東京で一番の花を楽しめるエリアになったら面白い。1月から3月まで秘密の花園をやって、4月からリアルな花の季節に移っていく、そんなストーリーも美しいですね。

 ショー的なものじゃなくて、六本木交差点とか、ヒルズとミッドタウンをつなぐ間とか、街の中はもちろん、もっとパーソナルな空間に広げていく方向も当然あるでしょう。湘南にある「BREATH HOTEL」の窓のない部屋の中にプロジェクションマッピングで演出をしたことがありますが、たとえば、どこかのトイレの中とか茶室とかもいい。

「切り口」ではなく「空気や気分」をとらえるほうが重要。

 ちょっと前は、イベントを企画するとき「切り口、切り口」って言ってましたけど、その発想はもう古くて、今は時代の「空気や気分」をとらえる能力のほうが重要。プロジェクションマッピングなら、「幻想的」とか「光」といったベタで情緒的なワードを、いかにすごいレベルに昇華させるか、といった勝負になってきている気がします。

 ただ、それだけだとあまりにも抽象的でわかりにくいから、情緒的概念に機能的概念を組み合わせる。たとえば「幻想的な360度マッピング」というように(笑)。わかりやすいビジュアルと、幻想的という言葉から思い浮かぶ雰囲気、さらに「360度マッピング、すげー!」がセットになって、「なんだかわからないけど面白そう」となる。細かい切り口とかひねりはなし。スタンプでも伝わる時代ですから、もしかしたら言葉だっていらないのかもしれません。

 難しいことを難しくいうのって、すごく簡単なんですよ。反対に、深いけれど、わかりやすいものをつくれる人ってすごいなと思っていて。「空気」とか「気分」みたいなものを、いかに凝縮して表現できるか。そのためには観察、よく見ることが大切でしょう。何かを仕掛けてやろうとか、自分のことばかり考えるんじゃなくて、目の前にあるものをもっとシンプルに見る。六本木の街だってそう、わからないからこそ知りたい、観察したいと思うわけで。

本当の意味での「らしさ」を出さないと、街に説得力は生まれない。

 最近、地方の街をアートで活性化しようという取り組みは多いですが、全部がアートの街になったら、個性がなくなってしまうって思いません? イルミネーションだって、もし街の人たちみんなが家に電飾をする習慣ができたら、商業施設が大々的にやる意味がなくなるでしょう。そうなったら、もはやお正月に門松を飾るのと一緒、それはそれで面白いかもしれませんけど。

 最初の話に戻りますが、もし仮に「怖い街」というのが六本木の本当の姿だとしたら、それを無視してまったく新しい街をつくるのではなくて、そのイメージをアクセプトしたうえで、デザインやアートを取り込んでいったほうがいいのかもしれません。ブルックリンがもともとの下町感をベースにイケてる街に生まれ変わったように、本当の意味での「らしさ」を出していかないと説得力は生まれないし、そういう「本物」こそが見直される時代になってきていると感じます。

 よく知らないので「六本木はこうあるべきだ!」なんてえらそうなことは言えないし、かといって決めつけるのも嫌だから、ちゃんと知りたい。もう少し六本木と向き合って、「ああ、なるほどね」みたいに感じられたら......。その頃には、僕もすっかりこの街が大好きになっている、それも十分ありえますね(笑)。

取材を終えて......
「六本木って、人気のエリアなんですか?」「アートナイトって盛り上がる?」「六本木のカオスと新宿のカオス、何が違うと思います?」......。インタビュー中、途切れることなく続いた、村松さんの逆質問。ボーダレスに活動し、カオスが好きだという村松さん、なんとなく六本木との共通点もあるのでは、と思ったのでした。(edit_kentaro inoue)

村松亮太郎(むらまつ・りょうたろう)
NAKED Inc.代表。大阪府堺市出身。TV/広告/MV/空間演出などジャンルを問わず活動。長編/短編作品と合わせて国際映画祭で48ノミネート&受賞。主な作品に、東京駅「TOKYO HIKARI VISION」演出。東京国立博物館特別展「京都-洛中洛外図と障壁画の美」「KARAKURI」演出。山下達郎30周年企画「クリスマス・イブ」MV&SF&マッピング。星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳「Gift -floating flow-」総合演出。「TOKYOガンダムプロジェクト2014ガンダムプロジェクションマッピング "Industrial Revolution"-to the future-」映像演出。auスマートパス presents進撃の巨人プロジェクションマッピング「ATTACK ON THE REAL」演出。NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」タイトルバック。企画/演出を手がけた「新江ノ島水族館ナイトアクアリウム」など。作品集&アーティスト本に『村松亮太郎のプロジェクションマッピング SCENES by NAKED』(KADOKAWA)がある。