61 村松亮太郎(NAKED代表)

村松亮太郎(NAKED代表)

プロジェクションマッピングは「錯視」のようなもの。

CITY LIGHT FANTASIA by NAKED
展望台のガラス窓に3D映像をプロジェクションマッピングすることで、現実の夜景と幻想的な光景が混じり合う、通算30万人を動員した人気イベント。東京タワー(2016年4月3日まで)ほか、全国の主要タワーで開催中。

NIHONBASHI ILLUMINATIONS collaborated with FLOWERS
22016年2月11日まで、日本橋エリアで開催される、春の花をモチーフにしたイルミネーション。NAKEDは、コレド室町とコレド日本橋、三井本館の総合演出を手がける。また、2016年1月8日〜2月11日には、リアルな花とデジタルアートを融合させた「FLOWERS BY NAKED」を、日本橋三井ホールで開催。

 とはいえ、最初のとっかかりは「なんかいいな」でしかなくて、理屈はほとんどが後付けなんですけど(笑)。たとえば、東京タワーで開催中の「CITY LIGHT FANTASIA by NAKED」なら、東京タワーとか夜景って、みんな好きだよな、というところがスタート。でも「東京タワーいいですよね」って言うわりに、「最近、上った?」って聞くと「いや......」って。それもおかしなもんだな、と。日本橋の「NIHONBASHI ILLUMINATIONS collaborated with FLOWERS」も、「秘密の花園」がやりたい、都会でしか見られない新しい花のイベントをつくりたい、というところからはじまりました。

 プロジェクションマッピングとかイルミネーションって、言ってみれば「錯視」みたいなものだと思うんです。「ちょっと見方を変えると、こんなふうにも見えるよね?」と提案したり、ふだんの夜景にちょっと違うものを掛け合わせることで「わあステキ」っていうきっかけをつくったり。

 東京タワーも夜景も、東京の街も、もともと全部そこにあったものじゃないですか? それらを編集して「再価値化」する。だから、「プロジェクションマッピングがすばらしかった」と言われるより、「東京タワーが好き」とか「夜景がきれいだった」という感想をもらえたほうが、その場所の意味や魅力をちゃんと表現できたのかなと感じられて、うれしいですね。

いつも、場所の魅力とは向き合わざるをえない。

 イベントって結局、場所ありき、その「場」とのコラボレーションなんですね。東京駅や水族館、東京タワーといったリアルな場所が絶対に存在するわけで、東京駅で上映したものを、そのまま東村山市庁舎で流したところで意味が全然違ってしまう。そうすると「この場所の魅力ってなんなんだろう?」っていう問いと、向き合わざるをえないんです。

 企画や構成を考えるときは、ジュースミキサーになったような感覚といえば、わかりやすいかもしれません。東京駅という場所だったり、建物だったり、まわりの雰囲気だったり、そのときの気分だったり、季節だったり。中にいろいろな食材を入れたら、こんなの出ましたみたいな感じ。その場所が嫌いなら嫌いで、どうやったらステキになるんだろう、というのことを考えますし。

 僕、今まで好きになった女性のタイプがみんなバラバラ。重要なのは、その人の魅力がいい感じに出ているかどうか、それさえクリアしていればあとはなんでもという考え方で、それと少し似ているかもしれません(笑)。

 また、自分のつくるものを「僕の作品がね......」とは絶対言わないんです。それは人が決めることであって、もしかしたらアート作品ととる人がいるかもしれないし、イベントととる人もいるかもしれない、中には商品ととる人だっているかもしれない。消費のされ方自体を委ねているんです。

やっているのは、今まであった世界を少し拡張すること。

 もっといえば、自分たちがやっていることを、プロジェクションマッピングとかイルミネーションとも思っていません。わかりやすいので、そういうトレンドワードを使っているだけで、「CITY LIGHT FANTASIA」なら「新しい夜景体験」でしかないし、「FLOWERS」だって、あくまで根っ子は花を楽しむイベントなんです。映像とかセンサーに最先端の技術が使われているから「体験型イベント」だというのは安易な発想。それより、今まであった夜景とか花という世界を少し拡張できるかもしれない、って考えたほうが楽しいじゃないですか。

TOKYO HIKARI VISION
2012年12月「東京ミチテラス2012」で行われた、東京駅の丸の内駅舎を使ったプロジェクションマッピング。世界中を巡る「光の旅」を描いた10分間のストーリーを上映、3日間で30万人以上を動員し、大きな話題を集めた。

 実際、プロジェクションマッピングって、技術的な側面が強いので、もともとプログラマーとかメディアアートの領域。僕は映像をやってきた人間なので、そこに映画的なカタルシスを入れて、十数分のショー形式にしてしまった。東京駅のマッピングがたまたま話題になったことで、日本ではこれが王道みたいになっちゃいましたけど、本当はむしろこっちのほうが亜流なんです。

 その一方で、もっとちゃんとお金を取って、ホールで上演できるようなショーを突き詰めたいとも考えています。よく「シルク・ドゥ・ソレイユ」をたとえに出すんですが、誰もあれを観にいくときに「サーカスに行こう」とは言わないじゃないですか。ある種、別物にまで進化している。そういう新しいエンタテインメントの形をつくってみたい、という気持ちはいつも持っていますね。