61 村松亮太郎(NAKED代表)

村松亮太郎(NAKED代表)

3日間で30万人を動員した東京駅の「TOKYO HIKARI VISION」や、東京国立博物館の特別展「京都-洛中洛外図と障壁画の美」をはじめ、数々のプロジェクションマッピングショーを手がけてきたクリエイティブカンパニー「NAKED」。TV、映画、広告、MVなどジャンルを問わずに活動する、NAKED代表の村松亮太郎さんへのインタビューは、いつもとは少し違う展開でスタートしました。

update_2015.12.2 / photo_hiroshi kiyonaga / text_kentaro inoue

逆質問「六本木って、なんなんですかね?」

ふるさとシール
箭内道彦氏がクリエイターインタビューで語った「各県・各国型のバッヂを配って、六本木をみんなの"ふるさと"にする」というアイデアを実現。「六本木アートナイト2014」で、1万3000枚以上のシールを配布した。

 いきなりですけど、逆質問してもいいですか? 六本木ってなんなんですかね? 以前クリエイターインタビューで、箭内道彦さんが「六本木って怖い気がする街」といって「ふるさとシール」のアイデアを出していましたけど、それもなんとなくわかるし、最近では、デザインとかアートを積極的に発信しようとしているイメージもある。「そもそも六本木ってどこからどこまでなの?」とか「東京ミッドタウンって住所は赤坂じゃないの?」とか、今日はいっぱい聞きたいことがあるなって(笑)。

 夜のイメージ、そしてデザインやアートのイメージ、さらにヒルズ族のようなラグジュアリーなイメージも同居している。それが訪れる人にとって憧れになっているのか、それとも敷居になっているのか。とても気になっていたし、謎だったので知りたいんです。

 僕自身、六本木は業界的というか「ムラ的」な匂いがする気がして、ちょっと苦手。何をしたらいいのかわからないから、基本はあんまり来ません。じゃあ、どんな街が好きかというと、たとえば会社がある代々木上原とか、海外ならベタだけどパリとか。居心地がよくて、いい感じの空気が漂っている街、「なんとなくのムード」としか言いようがない。

ブランディングされた"その街っぽさ"に引いてしまう。

 ある程度の洗練度はほしいとは思いつつ、全然かっこよくなくてもいいなと感じる街はあります。明大前の駅前のあたりとか、昔の吉祥寺とか、つくられた感じがしなくて、何も合わせなくていいような。反対に、苦手なのは下北沢。みんながブランディングされた"下北っぽさ"に一生懸命合わせている感じがして、しんどくなってしまう。

 ちなみに、いわゆるリゾート地は大好き。リゾートって「クロスポイント」で、いるのはほとんどそこに住んでいる人じゃないでしょう。田舎のような濃いウェットな付き合いはできないけれど、たまたま出会った外国人とは気楽にしゃべれちゃう。そういう意味では六本木も、外から来ている人が多いはずなので、リゾート感はあると思うんですけど......。

 もしかしたら、六本木という街のブランディングに、ある種の押しつけがましさを感じているのかもしれません。自分が発信する側だからというのもあると思いますが、どうしてもその"裏側"にあるものを考えてしまって、「こういう仕掛けなんだ」というのが見えると引いてしまう。って、最初からこんなネガティブな話ばっかりしちゃって、大丈夫ですか?

押しつけがましい仕掛けは「体験」ではない。

 僕らがふだんつくっているのは「体験型イベント」と呼ばれるもので、体験ってまさに読んで字のごとく「体で経験する」こと。だから、押しつけがましいのは嫌なんです。「ここに体験があるよ」「ちょっと体験しにいこうよ」なんて言われたら、ちょっと微妙でしょう?

ナイトアクアリウム
2014年7〜11月、新江ノ島水族館で開催された体験型イベント。相模湾の魚が泳ぐ大水槽に深海の世界を投影したほか、人の動きに合わせてさざ波を立てるなど、インタラクティブな演出が各所に。

 前に、新江ノ島水族館で「ナイトアクアリウム」というイベントをやったことがあります。水族館に入ると、まずウェルカムマッピングということで岩が動き出す。で、廊下を曲がると、今度は水槽の中から水があふれ出して波打ち際のように見える。「わあ波だ」って思うと、自然とバシャバシャやりたくなるじゃないですか? そうして歩いていくと、今度は夜光虫がわーっと寄ってくる。

 人の動きをセンサーで拾ってリアルタイムで映像を生成しているんですけど、これ全部、お客さんが歩く動線上にあるんです。すると、自然のリアクションになるので、サプライズがあるし、面白い「体験」になる。センサーを使った体験型のマッピングにありがちなのは、「ここに立ってください」「次に手をかざしてください」「はい、魚が寄ってきますよ」というもの。そりゃそうでしょ、みたいな(笑)。頭で解釈して、行動して、何かが起きる。それを、僕はまったく「体験」とは感じないし、ましてテクノロジー×アートとかいわれると興ざめしてしまうんです。