53 ファンタジスタ歌磨呂(アーティスト)

ファンタジスタ歌磨呂(アーティスト)

"かっこよくて女の子にモテるヲタ"六本木の街からはじめよう。

 六本木には外国人がたくさんいますけど、日本人のほうが外国人に引っ張られていると感じることがあります。たとえばこの街で遊んでいる子たちって、外国人ってかっこいい、みたいに思っていますよね。それを逆の方向に持っていく。たとえば、アキバにオタクの外国人が遊びにきて「クール!」とか言ってるように。

 今、ヲタの世界は、サブからメインへと変わりつつあると思うので、その発信地になるスペースを六本木につくれたら面白いですね。アキバとか中野ブロードウェイとかじゃ、これまでのイメージのままなので。日本のポップカルチャーを軸にしたスペースをつくって、"かっこよくて女の子にモテるヲタ"という、新しい概念を六本木の街からはじめてみる。もちろん、上手にていねいにディレクションしながら、徐々に変えていかないといけないので、難しいとは思うんですが......。

 実際、最近の若い子ってハイブリッド世代というか、「アニメはオシャレ」みたいなことを言って洋服をつくったりしていて、すごくかっこいいんですよ。広告なんかでも、ヲタがイケてるみたいなことが言われるようになりました。ただ、最近よくあるのは「初音ミクやっておけばいいんでしょ」みたいに、サブカルチャーを表面的に使うこと。そういう人たちも多いんです。せっかくいいものつくっているのに、文脈も理解せずに利用されているのを見ると、そんなもんじゃねえぞ、って思うこともありますし、大切な文化を傷つけて消費することも多くなっている気がします。

アキバは聖地、六本木は世界とつながる「どこでもドア」のような街。

 世界で活躍する日本のアーティストって、やっぱり日本的な要素をいい感じにフィーチャリングしているもの。六本木なら、そういうアートとカルチャーと全部をミックスした場所がつくれそうですよね。僕はそこにトータル・ワークアウトみたいなジムもつくって、運動もできちゃう、みたいな(笑)。アキバは聖地にしといてもらって、外国人の多い六本木は世界とつながる「どこでもドア」のような街にしましょう。

 実際、ヲタの人たちも、そろそろ考え直さないといけない時期にきていると思います。すでにヲタのカルチャーは、「自分たちがよければいい」なんて言っていられないくらい大きくなってしまっているから。もちろんヲタの人たちにも、使命感というか"想い"はあるでしょう。たとえば、いいアニメがあればDVDを買おう、好きなアイドルがいたらいっぱいCDを買おうというように。これは、なんとか活動を継続させてあげようという愛みたいなもので、アートでいうところのパトロンに近いかもしれません。

 ただそれは、あくまで自分のため、個人的な想いにすぎません。愛だけでやっていたものを、もうちょっと外に広げていく。ヲタ自身もだんだんわかってきていると思うし、おそらくここ数年から10年くらいのうちに、外の世界とつながらざるを得なくなってくる。そういう意味でも、やっぱりどこかに空間をつくるのがいいのかなあ......。

みんながイエーイと盛り上がる、それがカルチャー。

 六本木はデザインとアートの街をうたっていますが、そうすることで、幅を狭めてしまっているようにも感じます。それより「ものづくり」というテーマはどうですか? そこにデザインがあるかもしれないし、アートや音楽があるかもしれない。すべてに共通しているのは、何かをつくるクリエイションのための場所。それを迎え入れられる場所がここです、となれば、みんなイエーイといって集まってくるでしょう。

六本木のハロウィンパレード

六本木のハロウィンパレード
写真は、2014年10月25日、六本木ヒルズで行われたパレードの様子。このほか、商店街主催の「ROPPONGI HALLOWEEN 2014」では、六本木中学校からけやき坂、六本木交差点をへて政策研究大学院大学まで、1.7kmを歩くパレードも開催され、多くの人でにぎわった。

 六本木アートナイトもそうですけど、お祭りって、みんながイエーイってなれる最強のイベント。たとえば、ハロウィンの日の六本木とか渋谷って、世界で一番盛り上がってると思うんです。ワールドカップのときには僕、必ず渋谷駅前のスクランブル交差点に行くんですけど、サッカーなんかどうでもいいでしょって人が半分くらいいるんですよ。で、とりあえず全員ハイタッチ! 中身よりも、みんなで同じ場所に行ったり、何かやることのほうが重要というか。人の力の真髄はそこにあるんですよ。束の力です。外から見える内容は、本当のところはそこまで重要ではない気がするんです。

 いくらいろんな力を使って人を集めたとしたとしても、そのパワーには勝てないし、そもそもやっている人たち自体が盛り上がっていないとダメ。隅田川の花火大会なんかもいい例ですよね。老若男女全員が、花火が上がった瞬間、「すげえー」ってみんな同じことを考えちゃうなんて、ステキじゃないですか。大きな力が生まれるのって、意識が一点に向かう瞬間。それって、たぶんカルチャーとか、文化っていうものだと思うんです。

取材を終えて......
今回のメイン写真の撮影は、東京ミッドタウン・ガレリア館内のガーデンテラスで、できたばかりの、六本木アートナイト2015のポスターとともに。うしろに竹の生えたこのスペース、アートナイトの日には「六本木未来かるた大会」が開催されます。そちらもぜひどうぞ。(edit_kentaro inoue)

information
「六本木アートナイト2015」

会場:六本木ヒルズ、森美術館、東京ミッドタウン、サントリー美術館、 21_21 DESIGN SIGHT、国立新美術館、六本木商店街、その他六本木地区の協力施設や公共スペース
会期:2015年4月25日(土)10:00~4月26日(日)18:00
入場料:無料 (ただし、一部のプログラムおよび美術館企画展は有料)
http://www.roppongiartnight.com/2015/

ファンタジスタ歌磨呂(ふぁんたじすた・うたまろ)
アーティスト、イラストレーター、テキスタイルデザイナー、グラフィックデザイナー、アニメーションディレクターとして多岐に渡り活動中。コトブキサン代表。ポップで彩度高めの世界観が特徴。ファインアート、映画、映像作品など活動範囲を増殖中。