50 齋藤精一(クリエイティブディレクター)

齋藤精一(クリエイティブディレクター)

官と民が一緒につくるのがアートナイトのいいところ。

MEDIA AMBITION TOKYO

MEDIA AMBITION TOKYO
3回目となる「MAT2015」は、2015年2月11日(水)~15日(日)に開催予定。期間中には、アイデア実現プロジェクト#06として、都内最大級の野外アイスリンク「ダイナースクラブ アイスリンク in 東京ミッドタウン」を舞台に、「Skate Drawing」Rhizomatics / Presented by 六本木未来会議も行われる。
http://6mirai.tokyo-midtown.com/event/project/06/

 アートナイトの少し前の2月に六本木を中心に開催され、僕らも毎年参加している「MEDIA AMBITION TOKYO」は、プライベートカンパニーだけでつくるイベントです。これは、同じ時期にやっている「文化庁メディア芸術祭」の"裏版"としても企画されたもので、作品展示はもちろん、パーティやライブなどお酒を飲みながらの交流もできるし、昔でいうパトロネーゼのような人にも出会える。このイベントは、今の時点では「官」を入れることはできるだけ避けたいと個人的には考えています。

 一方で、街全体を使ったり、施設を横断したりする六本木アートナイトは、絶対に官が入っていないと成立しないイベント。官と民が一緒になってつくるのがアートナイトのいいところだし、それがうまくいっているからこそ、認知度もこれほど上がっているんでしょう。

 ただ僕も含めてなんですけど、これまではみんな、断片的にしかイベントを観ないんですよ。東京ミッドタウンで誰々のライブがあって、そのあとどこどこでイベントがある。時間が空いてるから1回飲みに行くか、みたいな。そうやって一度アートナイトの輪から離れて、また入ってくるんじゃなくて、どこに行っても楽しいし、どこに行ってもつながれそうな雰囲気をつくっていきたいんですね。

今のうちに、東京という街を"ハック"できる状態に。

 イベントをやるうえではもちろん、道交法的に無理ですとか、景観条例的に無理ですとか、24時間は開けられませんとか、そういう規制もたくさんあります。たとえば、いまだによくわからないのが、これだけプロジェクションマッピングが一般的になっているのに、道路を挟んだ状態で映像を照射できないこと。たとえ映像を車や人の目線より高くしていても、もしよそ見して事故が起きたらどうする、なんて話が出る。じゃあ、広告だって全部ダメじゃないのと思うんですけど......。

 法律ですから、いくら紙の資料をつくってプレゼンしても絶対に説得できません。理解してもらうには、少しでも多くの実証実験をすること。六本木アートナイトが、ここまでは大丈夫、ここまでやったら危険、あるいはこういう解決方法がある、というのを考えるきっかけになればいい。僕らも官と一緒に勉強会をしていて、彼らもものすごく頑張って動いてくれている。この間、ハロウィンのときには六本木の街なかでパレードもありましたし、少しずつ変わってきているのを実感しています。

マッカーサー道路
環状第2号線の一部、新橋~虎ノ門を結ぶ約1.4kmの区間の通称で、計画から68年が経過した2014年3月29日に開通。虎ノ門ヒルズの真下にある自動車専用の「築地虎ノ門トンネル」と、地上部分の「新虎通り」からなる。

 街をこう使いたいとか、こう使えるんじゃないかとか、みんなが東京という街を"ハック"できる状態を今のうちにつくっておかないと、2020年には間に合いません。2017~2018年になって、「マッカーサー道路でパレードをやりたいから、中央分離帯を取っ払おう。照明で演出したいけど植木はどうしよう......」なんて言ってても遅いわけです。

驚きをつくって、それが街に染み出していくのがいい。

 オリンピックが決まって、みんなが本格的に動きはじめて一発目の今回のアートナイトは、いいケーススタディ。だから、商店街や六本木ヒルズ、東京ミッドタウンとも、もっともっと密に話をしたいし、規制があったらなんとか説得したいんです。そのためならどこへでも行くし、熱い気持ちを数時間にわたって聞かせる準備もできてます(笑)。僕、今年で燃え尽きようと思ってますから。

 僕たちのやっている商売って、やっぱり人を驚かせることが大事だと思うんです。「こんな技術があるんだ」「こんな使い方があるんだ」と、びっくりしてもらえることをやらないと。「へぇー」で終わってしまったら、お金や労力のムダになってしまうでしょう。だから、東京タワーと増上寺を使ってみようとか、お台場の科学未来館で企業のイベントやってみようとか、新虎通りのトンネルが開通する前に何かできないかなとか、驚きをつくって、それが最終的に街に染み出していけばいいなあと。そんなことをいつも考えていますね。

取材を終えて......
齋藤さん、実はまもなく葉山に引っ越し予定。理由を聞くと「人間オンがあったらオフも必要なんじゃないかと、その実験です。カオスの中にいるとカオスを感じられなくなるので、外から見て、だけどその中に毎日入っていく状態がいいような気もする。そんなお年頃なんですかね(笑)」とのこと。東京を外から眺めることで、今度は何が生まれるのか。またお話を聞いてみたいものです。(edit_kentaro inoue)

齋藤精一(さいとう・せいいち)
1975年神奈川生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からNYで活動を開始。その後ArnellGroupにてクリエティブとして活動し、2003年の越後妻有トリエンナーレでアーティストに選出されたのをきっかけに帰国。その後フリーランスのクリエイティブとして活躍後、2006年にライゾマティクスを設立。建築で培ったロジカルな思考を基に、アート・コマーシャルの領域で立体・インタラクティブの作品を多数作り続けている。2009年-2014年国内外の広告賞にて多数受賞。現在、株式会社ライゾマティクス代表取締役、東京理科大学理工学部建築学科非常勤講師。2013年D&AD Digital Design部門審査員、2014年カンヌ国際広告賞Branded Content and Entertainment部門審査員。2015年ミラノエキスポ日本館シアターコンテンツディレクター、六本木アートナイト2015にてメディアアートディレクター。