六本木未来会議5周年特別インタビュー『昼も、夜も、六本木で会いましょう。』

project_5syunen_main4.jpg

「通り過ぎる街」だけど「好きな街」になってもらうには。

topic5.jpg

六本木商店街振興会
デザイン・アートの街として愛される六本木の街づくりを振興。「六本木商店街活性化プログラム」では、街路灯に掲げるデザイナーズフラッグ・コンテストを実施したり、アートディレクター葛西薫氏に六本木の新ロゴマークを依頼。オフィシャルサイト「ラクティブ六本木」にて情報発信も行っている。 http://www.ractive-roppongi.com/

柴田 私は六本木で働いているから、ここは「自分の街」だという意識があって、ときどき路地にゴミが捨てられていたり、街が汚れていたりすると、とても悲しい気持ちになります。六本木商店街振興会の人たちともお会いする機会が多くなっているんですけど、振興会の人たちと会っていると、彼らにとって六本木は先祖代々の地元、街に対するプライドも感じるし、いわゆる街おこしみたいなことにも、とても熱心に取り組んでいるんですよね。  

佐藤 地元愛ですね。

柴田 その地元愛に私も目覚めつつあるわけですが(笑)、でも、地元愛や六本木に住んでいる人だけで、これからの街づくりや街おこしができるかというと、六本木の場合難しい。六本木は、仕事をしに来たり遊びに来たり、ここを「通り過ぎる人」が多い街なんです。だから、その通り過ぎる人たちに「住んでいる街ではない街を、どうやって好きになってもらうか」を考えることが、六本木における街づくりや街おこしの鍵なんだと思います。そのためには、できるだけこの街でいい体験をしてもらって、「自分の街」ではないけれど「自分の好きな街」というふうになってくれれば、ゴミだって捨てなくなるはずです。

佐藤 そうですね。きっと一番いいのは、六本木での「いい体験」が、イベントのような一過性のものではなく、街に根付いたものであることですよね。六本木に行くと「常に」アートと出会える、とか、新しい考え方のデザインが「毎回」発見できるとか。イベントも場合によっては必要だけれど、一過性だと、その期間だけ来て、通り過ぎた後はもう来ない、ということにもなってしまう。

柴田 21_21はまさに、そういう街に根付いた環境づくりみたいなことをずっとやってきたのだと思うのですが、六本木がこれからもデザインとアートの街としてたくさんの人に好きになってもらうためには、どうしたらいいんでしょうね。

佐藤 僕はやっぱり、路地かなぁと思います。さっき裏道は六本木のポテンシャルのひとつだと言いましたが、そういう裏道や路地にもアートやデザインが染み出していくといいですよね。ちょっとマニアックなスポットが六本木の路地にできたりしても面白い。六本木の大きな施設の中だけじゃなくて、路地でも面白いものに出会えるというのは、まさに街での「体験」として魅力的ではないでしょうか。

老若男女どんな人も受け入れてくれる街、六本木。

柴田 この六本木未来会議の過去のインタビューで、佐藤さんも、一番好きな街は「東京」と答えていたんですけど、覚えていらっしゃいますか? 

佐藤 もちろんです。僕は東京生まれの東京育ち、先祖代々東京人ですから、東京を大切にしたいという気持ちも変わらないし、東京の本当の良さというのを知っているつもりです。控えめにするとか、いい意味でクールというか、そういう「東京っぽさ」を「すかしてる」と言って嫌う人も、もちろんいるわけですが、僕にとっては故郷ですからね、これ以上の街はありません。

柴田 私も東京がいいですね。

佐藤 東京とひと口に言ってもすごく広くて、エリアごとに雰囲気が全く違うというのも、東京の素晴らしさです。それって、他の世界的な都市と比べても特殊なんじゃないかと思います。

柴田 よく、海外の友人に「東京ではどこに行ったらいい?」と聞かれると、答えにすごく困ります。何をしたいかの目的によっても違いますしね。だから、○○するなら、どこどこだよ、みたいな薦め方になるんですけど、それでいうと、六本木の薦め方もまた、私の中ではモヤモヤしていてうまく言えないんですよね。私にとって六本木はニュートラルになる場所なので、普通がいいなら六本木、っていうのも......。

佐藤 昔なら、夜ディスコに行くならって感じだったんだと思いますけど(笑)。

柴田 同じ夜でも、個人的に六本木は「夜お茶」がいい。表参道あたりだと、夜8時以降はもう街が閑散としているし、居酒屋ばかりで酔っぱらいの多い街も困っちゃうんだけど、今の六本木は、普通にしらふで夜もお茶してくつろげますよね。

佐藤 「目的がないなら、まず六本木へ」じゃないですか? 目的がなくても、フラッと来たら何かがある。今の六本木は、老若男女、どんな人が来ても何かやりようがあるし、受け入れる入り口が必ずある。

柴田 それ、いいですね。私のモヤモヤを言語化してもらえて、すっきりしました(笑)。目的がなくても来られる街。これからますます、そういう街になってほしいですね。

取材を終えて
六本木という街の変化を、自分の目で見てきたおふたりの言葉は説得力があり、同時に、共に育った盟友を語るような、六本木への深い深い愛もあふれていました。何も用事がない日に、六本木にふらりと来る。そんな新しい六本木との付き合い方も教えてくれた取材でした。(edit_tami okano)

佐藤卓(さとう・たく)
1979年東京藝術大学デザイン科卒業、 1981年同大学院修了、株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。「ニッカ・ピュアモルト」の商品開発から始まり、「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」などの商品デザイン、 「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、 「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」「全国高校野球選手権大会」等の シンボルマークを手掛ける。 また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター、「デザインあ」総合指導、21_21 DESIGN SIGHTディレクターおよび館長を務めるなど多岐に渡って活動。 著書に「デザインの解剖」シリーズ、「クジラは潮を吹いていた。」、「塑する思考」など。

柴田文江(しばた・ふみえ)
武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、東芝デザインセンターを経て、Design Studio S 設立。エレクトロニクス商品から日用雑貨、医療機器、ホテルのトータルディレクションまで、インダストリアルデザインを軸に幅広い領域で活動をしている。代表的な作品に、無印良品「体にフィットするソファ」/オムロン「けんおんくん」/カプセルホテル「9h ( ナインアワーズ)」などがある。 毎日デザイン賞/グッドデザイン金賞/ドイツiF デザインアワード金賞など多数受賞。