48 谷川じゅんじ(スペースコンポーザー)

谷川じゅんじ(スペースコンポーザー)

キャンプのルールはひとつ、「炎を囲んで語り合う」。

 もうひとつ今、僕が六本木でやってみたいのは、都会の真ん中にテントを張って朝まで語り合う「キャンプ」です。このキャンプのフォーマットというか、ルールはひとつだけ、「話すときは"炎"を囲む」こと。理由はわからないけど、経験上、炎を囲んで話す語り場は内容がポジティブで暖かくなるんです。真っ暗な部屋で会話をするとき、LEDスポットライトかキャンドルだったら、キャンドルのほうがムードが出るでしょう? 炎って文明の象徴だと思うし、人を惹きつけてやまない力があるんでしょうね。

ホワイトディナー(Diner en Blanc)

ホワイトディナー(Diner en Blanc)
毎年6月、パリ市内で行われているイベント。全身白い服を着て、指定された公共の場所に集まり、テーブルセッティングをしてディナーを楽しむ。参加者は年々増加し、1万人以上とも。ルーブル美術館や凱旋門など、開催場所は毎年変わり、当日までわからない。

 思想家だったり建築家だったりデザイナーだったりアーティストだったり。いろんなジャンルの人たちが"炎"を囲んで集まり語り合うことで、また新しいビレッジができあがる。アルコールももちろんアリです。話すだけ話して力尽きた人は寝ちゃってもいい。「もっと話したいけどムニャムニャ......」みたいな(笑)。今では少なくなってしまった、そんなプリミティブな体験ができるイベントです。

 朝起きると、炭火を起こして珈琲を淹れてくれるバリスタとか、スクランブルエッグをつくってくれるシェフとかもいたり。パリの「ホワイト ディナー」のキャンプ版みたいな感じで、食べ物を持ち寄ってもいいし、ふだん入れない特別な場所でバーベキューをするのもいい。さすがにMATをやっている2月だと凍え死んでしまうけど(笑)、10月のデザインウィークならギリギリいけるかもしれませんね。

会話はもっともクリエイティブな行為。

 なぜ、キャンプなんて言い出したかというと、僕にとってもっともクリエイティブな行為は、人と人とが直接会って話すことなんです。たとえば自分が友だちと話しているところに、どちらかの知り合いがやって来る。この人をつなげたら面白いと思えば、紹介しますよね。そこから会話は3人になって、全然違う話が生まれて......たいてい最後は「狭いよね~」になる。そう、ビレッジの法則です(笑)。

 最初のほうでも話したとおり、日本の本質は「和」、交わって新しいものに進化していくことです。日本人ってよく社交性がないっていわれるじゃないですか。でも、それってシャイだったり、言葉の問題があるから気後れしてるだけ。感度のいい日本人は、すでにどんどん外に出ていっています。これからは、外からどんどん人が入ってくるし、人種はもちろん意識や文化の異なる人々とも対話する時代。教育とテクノロジーの進歩で、言葉の壁もどんどんなくなるでしょう。これがホントの意味での「開国」なのかもしれません。

 実際、そういう時代の変化や進化が、ここ六本木ではもう現象化しているんですよね。だって、この街にはいろんな国の人がいるけれど、それに違和感を持っている人なんてほとんどいない。みんな今の状況を受け入れて共存していると思うんです。

日本は、尊敬される国になっていくべき。

 アート&テクノロジー分野をはじめ、進化を止めない東京という超最先端都市と、地方の普遍的な文化や生活。これからは、そのコントラストが日本を語るうえで大きな魅力になると思います。京都や奈良はもちろん、四国や瀬戸内なんかも魅力的だし、東京近郊なら横浜や鎌倉、東北や信越方面もどんどん面白くなるでしょう。高次元に編集された情報インフラと、小さな国土を網の目のように結ぶ交通インフラによって、世界最高峰の安心安全を両立させている。みんながその魅力をちょっと意識するだけで、訪れる人たちに、東京だけにとどまらず日本って面白いな、というふうに実感してもらえると思うんです。

 僕は、日本はこれから、世界からもっと尊敬される国になってほしいと考えています。物質的な側面だけでなく精神世界においてこそ、です。たとえば、世界のさまざまな問題を解決するときに、日本の示す「和」というコンセプトは、重要な役割を果たすでしょう。

 日本は世界で一番長い歴史を持つ国です。企業だけを見ても、日本には100年以上続く老舗が5万社以上もある。そんな国、世界中どこを探してもありません。目に見えるものはスクラップ・アンド・ビルドしていくけれど、一方で長く続いているものもたくさんある。日本人自身がもう一度、その事実をきちんと認識したほうがいい。今年「オギャー」と生まれた赤ちゃんは、85歳のとき22世紀を迎えます。彼らにいったいどんな未来を残せるか。それは今、大人である僕らに与えられた大きな宿題だと思います。

取材を終えて......
「(しゃべっていて)スイッチが入ると止まらなくなる(笑)」と言いながら、予定時刻を過ぎても話し続けてくれた谷川さん。紙幅の関係で、マシンガントークのすべてをお届けできないのが、とても残念です。また、来年のMEDIA AMBITION TOKYOに向け、未来会議のプロジェクトが始動する予感。そちらもお楽しみに。(edit_kentaro inoue)

谷川じゅんじ(たにがわ・じゅんじ)
スペースコンポーザー。JTQ株式会社代表。1965年生まれ。2002年、空間クリエイティブカンパニー・JTQを設立。「空間をメディアにしたメッセージの伝達」をテーマにイベント、エキシビジョン、インスタレーション、商空間開発など目的にあわせたコミュニケーションコンテクストを構築、デザインと機能の二面からクリエイティブ・ディレクションを行う。 主な仕事に、文化庁メディア芸術祭(2005-2008), JAPAN BRAND EXHIBITION (2007), パリルーブル宮装飾美術館 Kansei展 (2008), 平城遷都1300年祭記念薬師寺ひかり絵巻 (2010), KRUG Bottle Cooler (2011,2013), GOOD DESIGN EXPO (2007-2011), GOOD DESIGN EXHIBITION (2012-2013), MARC JACOBS ICONIC SHOWPIECES EXHIBITION (2013), UT POP-UP! TYO (2013), MEDIA AMBITION TOKYO (2013-2014), IMA CONCEPT STORE (2014) などがある。
D&AD賞入選、DDA 大賞受賞、優秀賞受賞、奨励賞受賞、他入賞多数。