40 真鍋大度(メディアアーティスト)×大野茉莉(サウンドアーティスト)

真鍋大度(メディアアーティスト)×大野茉莉(サウンドアーティスト)

六本木とは、なかなか仲良くなれない。

真鍋18歳くらいから21歳くらいまでDJをやっていて、その頃は、ほぼ毎晩六本木にいました。だから僕にとっての六本木は、クラブとか音楽とか夜のイメージ。この近くにあったバーで親父と飲んだり、そのへんのカラオケボックスで生活したり、けっこう残念な人でした(笑)。大野さんは?

大野私がこの街にはじめて来たのは10年くらい前、六本木ヒルズに森美術館ができたときに展覧会を見にきてからなので、六本木歴はそんなに長くないですね。

真鍋僕がよく来ていたのはヒルズができる以前なので、反対ですね。六本木ヒルズや東京ミッドタウンができる以前と以降では、街がまったく変わりました。

大野東京で生まれ育ったのに、ここに来ると上京した気分になるんです。私の知っている東京とはちょっと違う、洒落た街みたいな感覚。あまり人が住んでいる感じがしないというか。アートイベントに来ることが多いんですが、なかなか仲良くなれないんですよね、六本木と。

真鍋たしかに洗練されたし、雰囲気も変わった。それは良し悪しだと思うんですけど。

大野きれいな街なんですけどね。何度も会っているのに心を開けないというか......。もうちょっと心の内側が見せ合えたら仲良くなれる気がするんですけど、私には壁が厚いんです。その裏側に共感できるところがあるはずなんですけど。

レジデンスやラボをつくって、発信していく街に。

d-labo -Hyper Library-

d-labo -Hyper Library-
スルガ銀行ミッドタウン支店に併設されたコミュニケーションスペース「d-labo」内のライブラリーシステム。ライゾマティクスは、インターフェイスデザインとプログラミングを担当。ブックスタンドに書籍を置くと、裏表紙につけられたタグにより、タッチパネルモニタ上に関連書籍の情報などが現れる。

トーキョーワンダーサイト

トーキョーワンダーサイト
東京都が若手クリエイターの発掘と支援を目的に設立したアートセンター。公募展「トーキョーワンダーウォール」をはじめ、本郷、渋谷、青山の3拠点で、展覧会ほかスタジオでの制作、ワークショップなどを行なう。青山には、クリエーター・イン・レジデンスも完備。

真鍋「裏側を見せてほしい」って言ってましたが、アートの視点から見ると、もしかすると六本木には中身はないんじゃないかと思ったりもします。ここで生まれた作品ではなく、海外かどこかで制作した作品をメインで展示しているだろうし。

大野六本木は働いたり、アートを観にきたりする場所で、生み出す場所ではないということですか?

真鍋そう。僕はミッドタウンにあるスルガ銀行の「d-labo」でインスタレーションをしたこともあるし、六本木アートナイトでライブをしたこともあります。夜に集まって作品を観る、ふだんの六本木とは違う独特な開放感が面白かったですね。でも、六本木で何かをつくって、それをここから発信することってあまりないんじゃないかな、と。

大野六本木は美術館がすごく充実していて、アートを鑑賞するための土台はすでに揃っている。でも、世界中のアーティストが滞在制作できる「レジデンス」のような場所がないですね。メディアアート関連だと、ドイツのカールスルーエの「ZKM」や、オーストリアのリンツにある「Ars Electronica Center」などには、美術館やギャラリーに併設されて、そういう研究施設がありますけど。六本木にもあるといいですよね。

真鍋パリとかニューヨークもそうだし、日本でいえば「トーキョーワンダーサイト」とか。もっと六本木から発信できるようになると面白いなと思います。

大野いろんな人と関わって、いろんな角度から影響を受けながら作品がつくれる。実際、住んでみないとわからないところもあるだろうし。

意味のわからないものができたら、急に仲良くなれるかも。

真鍋六本木って、情報やサービスがたくさんあって便利な街。そのぶん自分で考えらえる余白が少ないですよね。大野さんの言っていたように、受け身になってしまうというか。

大野私もアートを観たいときは六本木というように、目的が決まっているときしか来ない。そういう意味では、すでに街としてのポジショニングが完成されているんだと思います。

真鍋六本木って、ハリウッド映画と同じで、ずっと受け身で観ていられる街。でもアート作品ってそうじゃなくて、なんだかよくわからないけどそれぞれが違う見方をできて、それぞれの楽しみ方を持てるものです。「いったいどうして、こんな作品をつくったんだろう?」っていう。

大野何の役にも立たないこととか、意味がわからないことがしたければ、人のいないところで勝手にやればいいって話にもなってしまうけれど......。六本木にそういうものができはじめたら、「あ、私もなの!」みたいに、急に仲良くなれるかも。

真鍋(笑)。もちろん僕もハリウッド映画は好きで観たりもするし、六本木のような情報の与えられ方を楽しみたいときもあります。どちらがいい悪いではなく、気分によって選べばいいと思いますが、六本木ならではの楽しみ方がもっと増えるといいですね。

取材を終えて......
もともと知り合いということもあって、なごやかに進んだ公開インタビュー。が、裏では予想外のトラブルも......。その詳細は、編集部ブログをご覧ください。今回のインタビューでお二人が出してくれたアイデアが実現して、大野さんをはじめ、みんなが六本木ともっと仲良くなれたらステキですね。(edit_kentaro inoue)

真鍋大度(まなべ・だいと)
1976年生まれ。東京理科大学理学部数学科卒業、国際情報科学芸術アカデミー (IAMAS) DSPコース卒業。ジャンルやフィールドを問わずプログラミングを駆使して様々なプロジェクトに参加。MIT MediaLab、Fabricaを初め世界各国でワークショップを行うなど教育普及活動にも力を入れる。Prix Ars Electronicaでは2009年度審査員を務め、2011年度インタラクティブ部門準グランプリ受賞。文化庁メディア芸術祭においては大賞1回、優秀賞2回、審査委員会推薦作品選定は7回を数える。株式会社Rhizomatiks取締役。石橋素と4nchor5la6(アンカーズ・ラボ)を共同主宰。

大野茉莉(おおの・まり)
1984年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院修士課程在籍。サウンド・インスタレーションや音響作品など、音を軸に作品を制作。自身の作品のほか、映像作品への楽曲提供やサウンドデザインも行う。東京都現代美術館、トーキョーワンダーサイト、FILE、NYCEMFなど、国内外にて作品を発表。文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員会推薦作品、Tokyo Sonic Art Awardグランプリ、アデレード国際作曲コンクール受賞など。