40 真鍋大度(メディアアーティスト)×大野茉莉(サウンドアーティスト)

真鍋大度(メディアアーティスト)×大野茉莉(サウンドアーティスト)

六本木という街をテーマに作品を考えるとしたら。

メロディステップ
銀座のソニービル1階と地下1階をつなぐ、踏むと音と光を発する階段。2006年のリニューアル時、真鍋氏も開発に携わる。最上段か最下段を30回連続で踏むとアルペジオモードになるなど、ステップの踏み方によって音や光のパターンが変わる仕掛けが施されている。

真鍋今日のテーマ「六本木とデザイン&アートの未来」ということで話をすると、フィールドワーク的なところから作品をつくる人にとっては、六本木はいい街だと思うんです。ただ、僕は土地よりも人間。人間発信、たとえばパフォーマーだったりダンサー発信で作品をつくることが多いので......。きっと、生体データを使った大野さんの作品もそうだと思いますが。

大野はい。私も街発信はあまりないですね。音を表現の軸に考えているので、街というより、その空間の特性とか気温とか、環境に興味があります。

真鍋僕がやっているライゾマティクスという会社は、街なかでインスタレーションをするときには、自分たちの証を残すような"隠しコマンド"を入れることもありますね。たとえば銀座のソニービルにある、上り下りするとドレミの音階が鳴ってランプが光る「メロディステップ」という階段のシステムを担当したときには、一番上の段を30回踏むと特別なパターンが出るようにしたり。

 ふだん街を歩いていると、道に敷いてあるタイルを見ながら「ランダムに並んでいるようで実はパターンがあって......」なんて、謎解きモードになることがあります。

データを使ったアート、高低差を生かしたアート。

真鍋最近ではデータを蓄積し解析してビジュアライズしたり、ラップを自動生成したりする作品もつくっています。たとえばこの建物はセンサーだらけですよね。監視カメラやマイクも死ぬほどあるだろうし、街なかにはあちこちに、ネズミよけの超音波も出ています。

 今はセキュリティのためとか、正解が決まった使い方だけをしているけど、そういう大量のデータを違うふうに使って何かをつくりましょう、という企画になると得意分野になってきます。データを使ったアートのジャンルをこの街を通じてやってみる、それには興味があります。

大野私は自然や人間を知覚するためのツールとして、テクノロジーを使っているので、街の音響特性に興味があります。たとえば六本木って、大江戸線は地下深くて、展望台はすごく高いですよね。そういう高低差から生まれる音響現象を活かした作品は面白そうだなと思います。

真鍋それは六本木ならでは、かもしれませんね。

大野これはアートではないんですけど、高さと音を利用した例でいえば、第二次世界大戦のときに敵の飛行機の音を感知するためにつくられた長いホーンのような装置がありました。六本木ほどの高低差を使ったアート作品っていうのはなかなかないと思うので、できたらやってみたいですね。

子どもは六本木に来ちゃダメ?

大野お客さんから「六本木で子どものための作品をつくるなら?」という質問もありましたけど。

真鍋昼間の明るいところだとプロジェクターや照明が使えないので、ロボティックなものになるのかな。子ども向けの作品はいくつかつくったことはありますが、その場合、でたらめにいじっても成立するというインターフェース設計が大事なんです。ただ、六本木ならではってなると......。

大野やっぱり六本木って、買い物をするとかアートを観るとか、何か目的があって来る街だと思うんです。受け身になるために来る場所。だから子どもは六本木には来ちゃダメです(笑)。

真鍋たとえば、親が買い物をしている間にお子さんを遊ばせておくという目的があれば、それに合わせて作品をつくったり、デザインすることもできるかもしれないですね。たとえば、スケートをやっているあそこ(ダイナースクラブ アイスリンク in 東京ミッドタウン)とか、何か条件が限定されていたほうが思い浮かびやすいですね。

大野でもやっぱり、子どもの頃は何もないところで遊びを開発する力を身につけたほうがいいんじゃないかなあと思います。六本木より、砂漠とかのほうがいいのかも。

真鍋なかなか難しい街ですね、六本木は。