36 佐藤オオキ(デザイナー)

佐藤オオキ(デザイナー)

雑音を嫌うのではなく、受け入れる楽しさ。

Salone in Roppongi

Salone in Roppongi
"世界に羽ばたく日本のデザイン"をコンセプトに、2013年のデザインタッチで初開催。ミラノサローネでもっとも話題となった、nendoのインスタレーション&作品のほか、サローネの歴史や日本企業による出展内容を紹介した。

 今回、Salone in Roppongi でインスタレーションをさせてもらって、あらためて居心地がいいというか、六本木という街自体に"やり慣れている感"があると感じました。きっと同じことを池袋や高田馬場でやろうとしたら、こうはいかないでしょう(笑)。六本木はミラノと似ているという話をしましたが、サローネのようなイベントは、この街にかなりマッチするんでしょうね。

 デザインタッチもミラノサローネも、美術館の真っ白なホワイトキューブの中に展示するのとは違う楽しさがあります。 Salone in Roppongi が行なわれた東京ミッドタウンのアトリウムも商業施設の中にあって、買い物をしている人もいれば、仕事に急いでいる人もいる。そういうまわりの状況を雑音として嫌うのではなく、楽しんで受け入れていく雰囲気というか。

 作品にも細かい説明のテキストはなくて、これなんだろう? なんだかわからないけど面白そうだから写真を撮っちゃった、みたいな感じでいいと思うんです。自分たち自身、この作品でこういうメッセージを伝えたいという意図よりも、その場の空気感を含めて、見た人それぞれが何かしら感じてくれるものがあることが大事なのかなって。10年前に、ミラノサローネが魅力的に映ったのも、そうやってデザインを自由に楽しめるところでしたし。

Salone in Roppongi のこれから。

 今年、展示をしたのはnendoだけでしたが、国内外を問わず、もっとたくさんのクリエイターが参加できるようになればいいですね。さまざまなジャンルでものづくりをしている人、いろんな考え方を持ったクリエイターが世界中から集まって、六本木というキャンバスを使って自由に表現する。

 ミッドタウンやヒルズ、あるいは美術館だけでなくて、六本木の街の中には、ここで展示をしたら面白いのにと感じる場所は、まだまだたくさんあります。デザインタッチ期間中はお客さんも多いし、この街には世界中からいろいろな人が集まっていて、何かを発信するには格好のステージ。継続するのはなかなか難しいでしょうが、ぜひ来年以降も続けていってほしいと思います。

 それには、お客さんを誘導する流れもつくらなければならないし、nendoがミラノサローネに育ててもらったように、若手クリエイターにチャンスを与えることも必要でしょう。彼らにステージを用意してあげるというよりも、自ら何かができるような余地をつくる。イベントをつくりあげていくプロセス自体を楽しめるようになったらすばらしいですね。

みんなが勝手に何かをはじめてしまえばいい。

 デザインタッチが10月で、ミラノサローネが4月ですから、時期的にはちょうど半年ズレていることになります。そう考えると、将来的には2つのイベントがもっと連動していくと面白い。半年後のミラノではこういうものが発表されるよというプレビュー的なことをやるのもいいし、今年のミラノではこんな展示をしましたという報告でもいい。六本木とミラノがより密接につながって、ステキなスパイラルを生み出せる仕組みがつくれたらいいですね。

 ミラノサローネって、毎年、どんどん大きくなっているんです。それは、街のこのへんが空いているといって、クリエイターたちが勝手に開発をしていくから。大御所も新人も関係なく、ゲリラ的に何かをはじめたりして、自然発生的にゾーンが広がっていく。きちんとした展示スペースやギャラリーじゃなくて、道端でいい。極端な話、デザインタッチの期間に合わせて、みんなが六本木の街なかで勝手にやっちゃえばいいのになって思うんです(笑)。

取材を終えて......
「Salone in Roppongi」オープン当日に行なわれた、今回のインタビュー。取材対応が重なっているにもかかわらず、終始落ちついた口調で、にこやかに応じてくれた佐藤さん。最後の言葉は、「(ミラノと同じように六本木でも)クリエイター自身が何か仕掛ければいい?」という、こちらの問いかけに対するもの。この日一番の笑顔とテンションで、「そうなんですよ!」と興奮ぎみに話してくれたのが印象的でした。はたして、アイデアは実現するのか、来年のデザインタッチが今から楽しみです。(edit_kentaro inoue)

佐藤オオキ(さとう・おおき)
デザイナー。デザインオフィスnendo代表。1977年カナダ生まれ。2000年早稲田大学理工学部建築学科首席卒業。2002年同大学大学院修了。同年、デザインオフィスnendo設立。Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」(2006年)、「世界が注目する日本の中小企業100社」(2007年)に選ばれる。主な受賞にWallpaper誌(英)、および、Elle Deco International Design Award デザイナーオブザイヤー」(2012年)があり、代表的な作品は、ニューヨーク近代美術館(米)、ビクトリア&アルバート博物館(英)、ポンピドゥー・センター(仏)など世界の主要な美術館に収蔵されている。著書に『ウラからのぞけばオモテが見える』(日経BP社)、『ネンドノカンド』(小学館)など。2012年から早稲田大学非常勤講師。