35 片桐 仁(俳優/彫刻家)

片桐 仁(俳優/彫刻家)

単純につくりたいものをつくればいい。

片桐仁 感涙の大秘宝展~粘土と締切と14年~

片桐仁 感涙の大秘宝展~粘土と締切と14年~
14年におよぶ雑誌連載「粘土道」で制作した片桐氏の粘土作品を一堂に集めた展覧会。2013年に、渋谷パルコや札幌パルコ(写真)で開催された。自身による音声ガイドや公開作業場での実制作など新しい試みも。

 僕はもう15年近く粘土でオブジェをつくる連載をしていて、今年は全国で大きな個展もやらせてもらっているんですが、どうしても怖くて、おどろおどろしい作品をつくってしまうんです。たとえば、カエル型のiPhoneケースにしても、表面にわざわざ鱗の模様をスタンプしたり。もうちょっとファンシーにしたいと思うんですけどできない。そういうクセがあるんです。

 毎月1個ずつつくって、今ではもう130点くらい。それをまとめてみたときに、アーティストだからこうするべきだ、なんて考える必要ないんだなって思ったんです。まあ、締め切りがあるからつくってるって段階で、アーティストでもなんでもないんですけど(笑)。ラーメンズをやってなかったら、こんな連載、絶対できなかっただろうし。

 うまいと思われたいっていうのはもちろんあるし、次はこうしようとか作戦を練ってはいるんですけど、結局自分の手から作り出せるものって限られている。だから、いろいろ考えずに、単純につくりたいからつくるのでいいと思ったんです。iPhone買ったからケースつくります、みたいな。もちろん中身のiPhoneは自腹ですからね。

紙芝居や山車で教える「本当は怖い六本木」。

靖国神社 みたままつり
1947年にはじまった、靖国神社の夏の祭事。境内に3万個以上の提灯が掲げられる中、青森ねぶたや神輿などが催される。金魚すくいやたこ焼きといった定番の夜店のほか、お化け屋敷や見世物小屋など珍しい出店も多数。

 六本木嫌いの僕が、六本木の街が抱える課題を解決しろなんて言われても......。なので、粘土と同じように、思いつくままに僕のやりたいことを話しますね。まず、あの深〜い地下鉄の駅は、もっと壁を暗い色に変えて九龍城みたいにしたい。夕方からは、ミッドタウン・ガーデンあたりで、靖国神社のみたままつりに出ているような見世物小屋を開く。六本木の伝説的なエピソードを描いた紙芝居を見せて、「ここは本当は怖い街なんだよ」って教えたり。それで泣かしたいですね、子どもを(笑)。

 六本木アートナイトのときには、大お化け屋敷をやるのもいいですね。ハロウィンで仮装をするのは、日本人的にはちょっと恥ずかしいって感覚があるので、もうお盆の時期にやりましょうか。ナスに割り箸刺したりするのと一緒で、死者を弔うという設定で。

 あとは、大きい山車みたいなのをつくって、街を練り歩きたい。ディズニーシーの「レジェンド・オブ・ミシカ」っていうショー、わかりますかね。僕は通称「地獄」って呼んでるんですけど、ミッキーマウスのほかに、カエルなど生き物の形をした山車が水上に10台くらい浮かんでいるんです。火を吹いたりして、子どもが引くくらい怖い。そんなイメージです。

「大人の悪ふざけ」が許される街。

 ようは、得体のしれないものとか怖いもの、六本木にそういう「違和感」をたくさんつくりたいんです。山車では、追っかけられるものなら、大人も追っかけてやりたい。まさか自分は標的にはならないだろうと思っている大人たちの逃げっぷりは、もう大好物ですね。子どもの頃って、人を怖がらせてあっはっは、みたいなことをやるじゃないですか。たとえるなら、中学校で不良とすれ違うときに感じた怖さを、大人に味わわせてやりたい。きっと「ロックオンされた!」っていうあの感覚が、ワッとよみがえると思うんです。

 えーと......なんでこんな意地悪なことを言っているのか全然わからないんですけど、もしこの企画が実現したら、僕は少なくとも今よりずっと、六本木のことが好きになります。みんながどういう気持ちでそれを眺めるのかは、まったくわかりませんが(笑)。

 最近よく、コンビニの冷蔵庫に入っただけでお店が潰れるみたいな事件がありますよね。入っちゃいけないところに入って、イェーイ、写真パシャなんて、みんなやってたじゃないですか。修学旅行のときとか、誰だってむちゃくちゃしたでしょう。なんか六本木には、「大人の悪ふざけ」が許される雰囲気があると思うんです。いやほんと、めんどくさい街ですよねえ、六本木って(笑)。

取材を終えて......
「まとまりのない話をしちゃうんですよ、いつも。答えが出ないうちに質問を忘れて次の話にいっちゃうし」と言いながら、終始しゃべり続けてくれた片桐さん。とにかく何か面白いことをやってやろう、という芸人魂を感じました。ちなみに片桐さん、ご自身の結婚式も六本木でやったそう。本当はけっこう六本木のこと好きなんでは......という疑惑も(笑)。(edit_kentaro inoue)

片桐 仁(かたぎり・じん)
1973年生まれ。埼玉県出身。多摩美術大学在学中に小林賢太郎と共にラーメンズを結成。以後舞台を中心にテレビ、ラジオ、粘土創作など、様々な分野で活動している。代表作は、舞台「ダブリンの鐘つきカビ人間」「BOB」、映画「UDON」など。また粘土創作では、2013年4月に渋谷パルコにて個展を開催、18日間で1万3000人を動員。9月12日からは札幌パルコでも開催。現在NHK Eテレ「シャキーン」、TBSラジオ「エレ片のコント太郎」にレギュラー出演中。2013年11月8日(金)からは、舞台「ライクドロシー」に出演。全国各地にて上演。