35 片桐 仁(俳優/彫刻家)

片桐 仁(俳優/彫刻家)

一つひとつはすばらしいけど、チグハグ。

パブリックアート

パブリックアート
東京ミッドタウンの入り口にある穴の空いた巨石「妙夢」や、六本木ヒルズ玄関口の蜘蛛の彫刻「ママン」、けやき坂に並ぶストリートファニチャーなど、六本木の街に点在するパブリックアートは数十点にもおよぶ。写真は、ミッドタウン・ガーデンの「フラグメントNo.5」。

『東京ウォーカー』で「片桐仁と行くアート探訪」という連載をやっていることもあって、興味のあるなしにかかわらず、よく美術館に行く機会があります。国立新美術館で毎年やっている「アーティスト・ファイル」展のインスタレーションはハンパないし、六本木ヒルズの入り口にある蜘蛛の形のパブリックアート「ママン」もすごい。

 一つひとつはすばらしいんだけど、それらが街の中に点在しているというか、埋もれてしまっているというか。「魔窟感」のある六本木に、急にきれいな美術館がたくさんできたり、これみよがしに立派な庭やアートがあるのも、なんだかチグハグな感じ。

 あそこ(ミッドタウン・ガーデン)にある洞窟みたいな作品「フラグメントNo.5」だって、きっときちんとした計算のもとで、大きさを決めたと思うんです。模型をつくってああでもないこうでもないってやった結果、あそこに置かれるべくして置かれている。理路整然としているけど、つくられすぎているとも感じてしまいます。

 街のことを真っ当に考えると、どうしても「世界に誇る六本木」みたいな、美しい方向にいってしまう。でも、外国の人って意外と、日本のごちゃごちゃした街並みが面白いって言うじゃないですか。ウディ・アレンの映画「ミッドナイト・イン・パリ」では、インテリぶった人たちがスノッブな会話をしている横に、あやしげな人たちがたくさんいて、それがなんともいえない空気感を醸し出していました。でも六本木って、そういういかがわしいものを排除している気がして。

恐怖感をもって訪れる街があってもいい。

「怖いから嫌い」って言いましたけど、よくよく考えてみたら、それってけっこう大事なんじゃないかと思うんです。誰もが気軽に来られるような明るい街はよくない! だいたいそんな街、他にいくらでもありますから。もしかしたら殺されるんじゃないか、バットでメッタ打ちにされるんじゃないか。それはさすがに言いすぎですけど、ある種の恐怖感をもって訪れる街があってもいい。

 街全体が嘘っぽくてつくられた感じがする、お台場化してほしくないですよね。きっと、六本木好きな人たちも、渋谷や新宿とは違う「俺の街」みたいな感覚がいいって感じていると思うし。

 美しくて整然としたデザインとかアートが表の顔だとしたら、もっと裏の顔も出す。たとえば、ディズニーランドの裏側で何が行なわれているんだろう、って想像しただけで面白いじゃないですか。六本木には、あやしげな雑居ビルも多いし、バブルの時代の逸話が残る店とか、ハリウッドスターが通う店、文化人が集まるサロンとか、いろいろあるでしょう。そういう得体のしれなさを隠さないで、どんどん出していったらいい。まあ、僕は怖くて行けないわけですが、たぶん少し憧れてもいるんでしょうね。

六本木の街に足りないのは「違和感」。

三茶de大道芸

三茶de大道芸
三軒茶屋で毎年秋に行われる、パントマイムやジャグリング、アクロバットなどの大道芸人が集う大規模なフェスティバル。地元商店街をあげて開催され、多くの来場者で賑わう。2013年は、10/19(土)20(日)に開催。

 もし僕が、六本木に何か自由につくっていいと言われたら、絶対に無視できないくらい巨大な彫刻を置きたいですね。彫刻って、どこの街にもありますけど、たいがい無視されちゃうでしょう。あんなにインパクトのある太陽の塔ですら、地元の人はすっかり慣れてしまって、まわりで普通にお花見とかしてますから。昔、「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」でやっていた、身長5mの巨大な仏像「大仏魂」みたいに、動くのもいい。動いていたら、さすがに見ざるをえないですもん。

 毎年、三軒茶屋で「三茶de大道芸」っていうイベントがあるんですが、そこに体長3メートルくらいの外国人パフォーマーがいるんです。竹馬みたいなのに乗って、キラキラした服を着て、顔にとんがったクチバシつけて。街灯のそばで休んでいるかと思ったら、急に街の人を追いかけはじめる。めちゃくちゃ怖くて、びっくりしたおばさんがダッシュで逃げたりして。そこに答えがあるような気がしますね(笑)。六本木にそういう「違和感」を持ち込めたら面白いな、と。