30 永山祐子 (建築家)

永山祐子 (建築家)

国内外で活躍する女性建築家として注目されている永山祐子さん。「ルイ・ヴィトン京都大丸店」をはじめ華やかな商業建築のイメージがある一方、最近ではリノベーション・プロジェクトにも数多く参加し、アートイベントの立ち上げにも力を注いでいる。六本木で一番好きな場所は、建築とデザインが専門の「TOTOギャラリー・間」で、憧れの建築家たちの展覧会を見に、学生時代から通っていたんだとか。そんな永山さんが、六本木をデザインとアートの街にするとしたら、何をする?

update_2013.6.5 / photo_taro hirano / text_tami okano / edit_rhino

街そのものを表現の場として活用する。

 六本木にはアートの拠点となる美術館やデザインに特化した施設もありますし、デザインやアートに興味ある人たちが集まるようになっていると思うのですが、もっと街そのものが表現の場として使われていたり、アーティストたちのアクションが直接見えるようになっていると、面白いのではないでしょうか。

 たとえば、大きなビルの壁面をキャンバスとして開放したり、ガレージみたいな場所をアーティストに提供したり。創作の現場が街にあるというか、街がアートと一緒に「動いている」と感じられることが大事だと思うんです。

 それって、新しく施設を作らなくてもできることで、「今ある場所を、もっと面白く活用する」ということでもあるんですよね。何も手が加えられていない建物の裏面ってよくありますけど、それも街の風景の一部。小さな点でもいいから、それぞれが提供できる場所を増やし、ネットワーク化していけば、街の風景は変わっていくと思います。

リノベーションをきっかけに生まれた試み、「At Art Uwajima」。

AT ART UWAJIMA2013
愛媛県宇和島をアートの力で活性化させることを目的に、永山祐子さん、アーティストの藤元明さんの呼びかけで発足したプロジェクト。第一弾として今年の7月24日より1ヶ月に渡り、木屋旅館と市内のアーケードを使って作品展示が行われる。参加クリエイターは、現代美術家の束芋さん、まんが家のほしよりこさん、SIDECOREの参加アーティストら7名。
http://www.uwajima-soen.com/

 今ある場所をもっと面白く活用する、という意味では、今年の7月24日から1ヶ月、瀬戸内海に面した愛媛県宇和島市で「AT ART UWAJIMA2013」というアートイベントを行います。きっかけは、昨年、宇和島にある「木屋旅館」のリノベーションを手掛けたこと。100年近い歴史があった旅館を、1日1客のコンセプチャルな宿泊施設へと生まれ変わらせるプロジェクトだったのですが、当初からここを、宿泊施設としてだけではなく、アートをはじめ、地域に関わりのある様々なイベントや文化行事の場としても使ってほしいと思っていたんです。

 ちょうど今、瀬戸内海の豊島では、民家を改修した横尾忠則さんの美術館「豊島横尾館」を手掛けていて、そこで地域全体を見据えたアートを起点とした地域再生の活動を目の当たりにして、アートって地域を変えていくきっかけになるんだ、と実感したんですね。そこで改めて、宇和島でできることは何かを考え、「木屋旅館」だけに留まらない、宇和島市全体を場にしたアートイベントの計画がスタートしました。

アートによって引き出される新しい魅力。

木屋旅館
愛媛県宇和島市にある、アートエンターテイメントを体感できる宿泊施設。廃業した古旅館をアートの文脈でリノベーションし、心地の良い「ほったらかし感」を楽しめる旅館へと蘇らせた。永山祐子さんは旅館の建築デザインを手がけたことを機に、宇和島の地域活性化プロジェクトを発起。地域の人々とクリエイターをつなぐ様々な試みを企画している。
URL:http://kiyaryokan.com/

 宇和島って、アーケードが立派なんですよ。5〜6mもある大きな獅子舞のような牛鬼が練り歩く「牛鬼まつり」が有名で、その牛鬼が通れる巨大アーケードも今回の展示の場所になります。閉店してしまう文房具店をギャラリーに、隣の空き地をインスタレーションの会場に、と計画は進んでいます。

 私自身、面白かったのが、「AT ART UWAJIMA2013」の実現に向け力を注いでいるうちに、これまでは見過ごしていたかもしれない「いろんな場所」が、「可能性を持った場」に見えてくるようになったことです。アートによって、その場の新しい魅力が引き出されていく。先ほど言った「六本木の大きなビルの壁面」もまさにそうで、ずっと放ったらかしになっている空き地でもいいし、ちょっとした隙間みたいなスペースでもいい。アーティストとしては展示場所が変わればモチベーションも変わりますし、いつもと違う日常を舞台にすることで、新しい発想も生まれてくるのだと思います。