21 日比野克彦 (アーティスト)

日比野克彦 (アーティスト)

ひとつの領域として確立していくために。

 最近みんなと話しているのが、この「アートプロジェクト」をブームに終わらせてはいけない、ということ。アートのひとつの領域としてきちんと確立させていくには、評価が必要だということです。だからいま僕は、社会学の研究をしている人たちと一緒にアートプロジェクトの評価プロジェクトをやっています。

 アートプロジェクトをやることによって、自治体が抱える医療費の負担が軽くなった、という例があります。地域の人たち同士がコミュニケーションをとるようになったことで、精神的な病で病院に行く件数や孤独死が減るなど、そういうデータもマメにとっていきたい。因果関係がどれだけ正しいかまでは出せなくても、10年間アートプロジェクトをやってきた地域の変化を社会学者の方々も指摘するようになってきています。そうなると、アートも世の中にちゃんと機能していることが分かるし、次に繋がっていく。

人と出会うために自分の気持ちを表現する手段。

「種は船」航海プロジェクト

「種は船」航海プロジェクト
2003年にスタートしたプロジェクト。朝顔プロジェクトと同じく様々な場所で行われている。地域の人々や自治体が手を取り合って船を造り、アートを通じての地域活性や文化・芸術の振興を目的としている。

日比野さんとサッカー

日比野さんとサッカー
大のサッカーファンという日比野さん。サッカーとアートを共に身体芸術と捉え、様々な企画を行っている。2010年日本サッカー協会理事に就任。

 僕はアートを仕事にしているのですが、サッカーも好きなんです。アーティストとして絵も描きますが、絵を描く目的は何だろうかと考えると、幾つかあるひとつの答えとして絵を描くことが、「人と出会うために自分の気持ちを表現する手段」ではないだろうか? 手段なのだったらもっと適したものがあれば絵にはこだわらない、ということで、だんだん朝顔の種で人とコミュニケーションとったり、みんなで船をつくって航海したりするようになりました。

 その先の僕の作戦としては、サッカーがあるんです。絵画、朝顔、船、そしてサッカー。イメージを運動に置き換えるということで言えば、絵描きもサッカー選手も同じなんです。筆に自分のイメージをのせ、その軌跡が絵画になるように、ボールに自分のイメージをのせ、その弾道でゴールをする。ヨーロッパだとサッカーは文化という意識がありますし、街のアイデンティティとしてサッカーがあったり、まさに「人と出会うために自分の気持ちを表現する手段」でもある。

サッカーとアートが同じになる、もうひとつの未来計画。

 そんなふうに、サッカーとアートは自分の中では繋がっているのですが、世の中的にはそうでもないので、なんとか無理なく繋げて、30年後くらいには「サッカーとアートって同じでしょ」ってみんなが普通に言うくらいにしたい。僕はいま、日本サッカー協会の理事と東京藝術大学の教授をやっているんですけれど、将来的にはサッカー協会と芸大を一緒にしたいくらいなんです。そう言うと、頭のおかしい博士が実験でとんでもないものつくる、みたいな目で見られるので、あんまり言わないようにしているんですけど......

 今回の「六本木アートナイト」でもサッカー大会を開催する予定です。サッカーで必要なのは「ボール」と「ゴール」と「ユニフォーム」。その3つを参加者でつくって、その後、つくったものを使ってサッカーをする「六本木HIBINO CUP」! 計画は着々と、進んでいます。

取材を終えて......
まだ雪の残る1月某日の夜、東京ミッドタウンの屋上で行われた撮影。当日は空気がとても澄んでいて、アートナイトの舞台となる六本木の街を一望できました。そんな夜空の中、撮影時に「ガオーッ」と大きな声で叫んでいた日比野さんが忘れられません。(edit_rhino)

日比野克彦(ひびの・かつひこ)
1958年岐阜市生まれ。東京藝術大学大学院修了。大学在学中にダンボール作品で注目を浴び、国内外で個展・グループ展を多数開催する。近年は各地で一般参加者とその地域の特性を生かしたワークショップを多く行っている。作品集・著書に『HIBINO』『HIBINO2』『海の向こうに何がある』『100の指令』『日常非常日(ピジョッピジョッピ)』(朝日出版社)、『えのほん』(三起商行/ミキハウス)、『KATSUHIKO HIBINO』(小学館)、『8万文字の絵 -表現することについて-』(PHP新書)、『HIBINO LINE』(玄光社)、 『ひ ESSEY OF KATSUHIKO HIBINO』(淡交社)など。 近著として『Yesterday Today Tomorrow』(リトルモア)、 『HIBINO EXPO 2005 日比野克彦の一人万博 記録集 』(水戸芸術館現代美術センター)、『FUNE』(西日本新聞社)、 『HIBINO DNA AND・・・「日比野克彦応答せよ!!」』(岐阜県美術館)、 『日比野克彦展「日々の旅に出る。」(鹿児島県霧島アートの森)、『あしたの君へ』(新潟日報)、『日比野克彦アートプロジェクト「ホーム→アンド←アウェー」方式 記録集』、『日比野克彦アートプロジェクト「ホーム→アンド←アウェー」方式meets NODA[But-a-I]記録集』(金沢21世紀美術館)などがある。