21 日比野克彦 (アーティスト)

日比野克彦 (アーティスト)

顔を出し、挨拶に行くということ。

 六本木の地域の人たちとの関わりをつくっていくために大事にしていることは、挨拶をしに行くこと。それしかないっちゃないですよね(笑)。とにかく顔を出す。単純な話しだけど、どこに行ってもそれは同じです。だから、「六本木アートナイト」に参加するアーティストは、できるだけ、地域の人たちと話ができる人に声をかけています。作品がいいだけじゃなくて、ちゃんとコミュニケーションがとれないとダメ。

 六本木で今も輪転機を回して新聞を印刷している「水産経済新聞」さんも今回のアートナイトに協力的で、ぜひ場所を使ってください、と言ってくれています。であれば、まず挨拶と自己紹介に行けるアーティストじゃないと。そこで仲良くなれば、相手にとって「六本木アートナイト」が身近な存在になるだろうし、相手のほうから来年に向けてのアイディアも出てくるかもしれない。

 ほかに、クリーニング屋さんの若社長も乗り気で、会場のひとつとして使わせてもらう予定だし、神社などにも協力をしてもらおうと思っています。そうやって地域で商売をやっている人や昔からこの街にいる人にひとりずつ、アートナイトのサポーターになってもらうことが大事だと思っています。

モノではなくコトをつくるアートプロジェクト。

明後日朝顔プロジェクト

明後日朝顔プロジェクト
朝顔の育成を通して人と人、人と地域、地域と地域のコミュニケーションを深める目的のプロジェクト。北は秋田から、南は沖縄まで25の地域が参加している。

 アートって、モノなんだ、というのが一般的な認識ですよね。誰々が作ったおいくら万円のモノ、みたいな。でも、「六本木アートナイト」も含めアートプロジェクトはモノじゃなくてコトだから、コトって、なかなかアートとは認識されないんです。なんでワークショップがアートなの? 朝顔を育てることのどこがアートなの? それって園芸でしょ? みたいな。説明すればするほど、怪しい人間だと思われてしまう(笑)。

 でも、アートプロジェクトには、アートの可能性を広げていく大きな役割があり、そのうち一大産業になると思っているんです。産業と言うと、たとえば車産業はタイヤ、エンジン、ボディなど車1台作るのに何10社、何100社という会社が関わり、そこに何百万人という雇用がある。アートプロジェクトも、それをつくることにたくさんの人々が関わり、その関係性によって物の交換が生まれ、雇用にも繋がっていくものになる。

35年後くらいの未来。

 それに、産業によって生まれるお金の交換が「豊かさ」であるという言い方があるけれど、アートは、お金じゃなくても豊かになれるところに価値があって、やってよかった、やってもらって嬉しかった、新しく出会いがあって刺激的だったとか、人と人とが繋がれる「関係性の豊かさ」がある。それは、これからもっと必要とされていくものではないでしょうか。

 お金を稼ぐことと、気持ちが豊かになること。両方ほしいじゃないですか。これからは、両方あってあたりまえ。「仕事はIT関係やってます、その他に地域のプロジェクトやってます」っていう人が普通になる。そういう社会に、35年後くらいにはなると思っているんですよね。それが僕のやりたいことだし、僕のアーティストとしての仕事だと思っています。