16 山崎 亮 (コミュニティデザイナー)

山崎亮

1年ほど住んだオーストラリアのメルボルン。

ヤラ川にかかっている橋「プリンセスブリッジ」(メルボルン)

ヤラ川にかかっている橋「プリンセスブリッジ」(メルボルン)
メルボルンの代表的な橋。1850年には市民の要望により、ガス灯が設置された。いまなお市民に愛されている建築物の一つ。

 世界で好きな街をあげるとしたら、メルボルンです。オーストラリアの首都だった街で、1年ほど住んだことがあります。オーストラリアは230年くらいしか歴史がない若い国ですが、歴史がないからこそ、昔からの街並みや建物をすごく大事にするんですよね。

 たとえば、市内を流れるヤラ川にかかっている橋が、歴史的な橋だから保存しよう、という運動があるんですね。どのくらい古いかというと100年くらいなんです。日本には100年ほど前のビルや橋はたくさんありますが、彼らは本気で残したいと思っていて、壊してしまったら、そもそもない歴史がますます無くなるという危機感がある。オーストラリア国内では一番古い街なので、俺たちが残さなければどこが残すんだ、という気概を持っている。それ、いいな、と思ったんです。

 もうひとつの良さは、中心部からトラムで20分も行ったら、田舎なんですよ。南は海で北は山々。街に暮らしながらバーベキューをしに行くのもキャンプに行くのも全然気負った感じがなく、都市と自然と、そのバランスを上手く保っている街だと思います。

人を育てる。東北で動き出そうとしていること。

 仕事を通じて今一番感心のあることは、人を育てることです。あんまり仲間がいないので(笑)。 コミュニティのエンパワメントっていろんな側面であるんですね。行政や企業の内部組織に対しても必要とされることがあります。複数の人たちが集まったときに、ワークショップやチームビルディングの技術を使ってその人たちの力を結集し、パフォーマンスをぐっと上げていくような仕事をする人が、もっと増えてほしいですね。

 いま実現に向けて動いているのは、東北の大学に、コミュニティデザイン学科をつくろう、という計画です。文科省から許可が下りれば2013年から学生の募集を始めます。

 被災地は、これからさまざまな合意形成が必要な段階に入ります。今までは瓦礫をどこに移動させるかや仮設住宅でどう快適に過ごすか、という段階でしたが、来年・2013年の1年間で、道路をどこに通すか、住宅を建てるべきか国立公園にすべきかといったことの整理が相当されると思います。そして、2014年くらいから、いよいよ、街をどうしていくか、という話し合いをしなければならないはずなんですね。仮設からも出なければならない。この時に話を取りまとめ、集落ごとの合意形成を進めていけるような人が必要になります。

東北から日本全国へ。鍛えた力は都市にも有効。

 「コミュニティデザイン学科」の学生たちは、実地で被災地に入っていくわけで、相当鍛えられると思いますね。4年間、復興の過程でさまざまな話し合いを取りまとめた技術をもった人は、日本全国、どこに行っても通用すると思います。山間地の限界集落や寂れた商店街はもちろん、都市のコミュニティづくりにおいても達人になっていくんじゃないでしょうか。東北の無口な人たちから意見をどうやって引き出すか。それができたら、東京の人なんてよく喋ってくれて楽だと思いますよ。六本木の人たちなんて、なんていい人たちなんだろうって思うはずです(笑)。

 鍛えられるという意味では、大阪の南のほうでも鍛えられますね。街づくりの話し合いの場に入っただけで怒られますからね。お前ら税金つかって何しに来たんや、みたいなおっちゃんが50人いて、それを取りまとめることができたら、どこに行っても人が優しく見えます。なので、ぜひ、東北と大阪の現場を経験してもらい、最強のコミュニティデザイナーになってもらいたい。活躍の場は、たくさんあります。

取材を終えて......
撮影場所である、六本木の裏路地に、にこやかな表情で「どーも遅れてスミマセン!」と元気よく登場してくれた山崎さん。取材中も様々な地域で活躍されているだけあって、発せられる言葉はどれも明快。大都会六本木には「地縁型とテーマ型の2つの要素を持ち合わせるコミュニティ」が必要だということを気づかせていただきました。そのコミュニティに、デザインとアートの力をどうプラスするかが今後の課題かも知れません。

山崎 亮(やまざき・りょう)
studio-L代表。京都造形芸術大学教授。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。主な著書に『コミュニティデザイン(学芸出版社)』『ソーシャルデザイン・アトラス(鹿島出版会)』『コミュニティデザインの時代(中公新書)』『まちの幸福論(NHK出版)』などがある。2012年度は「studio-L伊賀事務所」「震災はじまり手帳」「Brilliaレジデンス六甲アイランド」でグッドデザイン賞を受賞。